裏「アップルシード」
SF設定+神話的ネーミングという日本アニメの伝統的スタイルであるのは、原作そのものが決して新しい作品ではないせいもあるだろう。
タイトルからして知恵の実たる「リンゴの種」であり、「原罪」という言葉も何度となく登場する。
ジャパニメーションの悪い癖は、このように単語からしてイタズラに難解にしようとすることだ。
特に原作付の場合、「目」で見て理解できる単語と「耳」で聞いて理解できる単語に違いがあることも無視されている場合が多い。
今作もその影響下から逃れることはできず、この手のSFものに不慣れな観客は置き去りにされてしまう。
ひょっとすると、フルCGの戦闘シーンは、そんな「ストーリー置いてきぼり組」へのサービスだったのかもしれない。
問題のCGだが、戦闘シーンと背景は「さすが」の一言だ。
なるほど世界配信も頷ける素晴らしい出来だ。
しかし、キャラに関しては残念ながら「ダメ出し」をさせてもらう。
モーション・キャプチャーの全身図はいたずらにフラフラ揺れ、画面に落ち着きがない。
アップのシーンでも顔の表面をパーツが乗っかって動いているだけという風情だ。
総じて誰も汗をかかないし、水に濡れることを嫌がって片目を閉じるなどの生体反応すら感じさせない。
やっぱり「ゲームのムービーシーン」としては最上級だが、人物描写としては人形レベルにしか見えないのだ。
「画」をCGで描くということは、リアルな描写ができる反面、観た者が脳内で画像を補完する隙間を奪ってしまう欠点があるということを理解すべきである。
シナリオの完成度が高いだけに勿体無く感じる。
「ファナイル・ファンタジー」の反省、未だに活かされず。
