医学一般解答

問題71 次の記述のうち、正しいものに○、誤っているものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A コレステロールは胆嚢で作られる
B 肺は自ら収縮と拡張を繰り返している
C 糖尿病患者の95%以上はT型糖尿病である。
D 眼底出血は視力低下の原因になり得る。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ×
3 ○ × ○ ○
4 × ○ ○ ×
5 × × × ×

<解答:5>
A 誤り
 コレステロールは肝臓で作られる。
B 誤り
 呼吸は、胸郭と横隔膜の動きにより、気圧の変化で胸郭の拡張と収縮が行なわれ、肺が拡張、収縮するため、肺が自ら収縮と拡張を繰り返しているわけではない。
C 誤り
 糖尿患者の9割はインシュリン非依存型のU型糖尿病である。過食や肥満、運動不足、ストレス等の生活習慣が誘因となって発症するといわれている。
D 正しい
 眼底出血には糖尿病性白内障によるもの、加齢性黄斑変性症によるもの、高血圧・動脈硬化が原因のもの、網膜静脈分枝閉塞症などによるものがある。ほかには、くも膜下出血や白血病、再生不良貧血などの全身的な病気によっても発生することも。また、心筋梗塞の予防のために服用している抗血液凝固剤によっても起こることがある。さらには、ボールが当たったり、強打するなど、外傷によっても眼底出血は引き起こされる。


問題72 次の病態・疾患のうち、嚥下障害を起こすことがないものを一つ選びなさい。

1 球麻痺
2 多発性脳梗塞
3 対麻痺
4 咽頭癌
5 筋萎縮性側索硬化症

<解答:3>
1 正しい
 延髄から出る運動性脳神経(舌咽・迷走・副・舌下神経)の核下性の障害、つまり脳神経核・末梢神経、それに支配される神経筋接合部、筋肉の障害で生じるものを球麻痺という。顔面筋や三叉神経運動枝により支配される咀嚼筋なども一緒に障害されることが多い。上記の脳神経は全て構音、嚥下に関係するものなので、球麻痺の主たる症状として構音障害、嚥下障害がある。
2 正しい
 多発性脳梗塞を発症した場合、後遺症として歩行障害、言語障害、嚥下障害が残こることがある。
3 誤り
 対麻痺とは、左右下肢に対称的に起こる麻痺のため、嚥下への影響はない。
4 正しい
咽頭癌や食道癌を発症すると、食物が通過しにくくなり、嚥下障害を起こすこともある。
5 正しい
 脊髄、脳幹や大脳皮質の運動ニューロンのみが選択的に障害される病気を運動ニューロン病と総称している。この中で最も多いのが筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。有病率は10万人に5人程度で、難病に指定されている。女性よりやや男性に多く、中年以降に発症する。遺伝を示すことはほとんどなく、未だ正確な原因はわかっていない。筋力低下や筋萎縮は下肢にも広がり、脳神経領域も障害され、言語障害や嚥下困難も出現する。


問題73 中毒に関する次の組み合わせのうち、適切でないものを一つ選びなさい

1 一酸化炭素中毒―大脳病変―記憶障害
2 有機水銀中毒―水俣病―舞踏病様運動
3 有機リン中毒―サリン―縮瞳
4 覚せい剤中毒―副交感神経刺激―血圧低下
5 有機溶剤中毒―ベンゼン―造血器障害

<解答:4>
1 正しい
 記述の通りである。
2 正しい
 記述の通りである。
3 正しい
 記述の通りである。
4 誤り
 覚せい剤の急性中毒は、高揚した気分で始まり、続いて、多幸間、過活動性、過剰な社交性、落ち着きのない言動、過覚醒と不眠、多弁、不安、緊張、警戒心、誇大性、対人関係へのこだわり、常同的で反復的な行動、情緒不安定、判断力低下、怒り、暴力行為などが見られる。慢性中毒の場合には、これらの症状に加えて、空虚感、悲哀感、社会的ひきこもりを伴う感情鈍麻が存在することがある。
 身体的には、頻脈(または徐脈)、瞳孔散大、血圧上昇(または下降)、発汗(または悪寒)、嘔気・嘔吐、食欲低下と体重減少、精神運動興奮(または制止)、筋力低下、呼吸抑制、胸痛、不整脈、錯乱、けいれん発作、ジスキネジー、ジストニー、昏睡などが見られる。慢性の覚せい剤中毒者の中には、極度のやせや多くの虫歯、歯の欠損が見られることもある。歯の問題は、覚せい剤による唾液の分泌障害と口腔内不衛生のためと考えられます。大量投与の場合には、循環不全や脳出血によって死亡することがあります。これを急性中毒死という。
5 正しい
 記述の通り



問題74 次のうち、脳卒中の発症・再発予防にあたって留意するべきものとして、適切でないものを一つ選びなさい。

1 喫煙
2 高血圧
3 糖尿病
4 肺気腫
5 心房細動

<解答:4>
 脳卒中を予防するためには、食生活などを改善して動脈硬化の進行を最小限にくい止める事が大切である。特に、喫煙、高血圧、高脂血症(コレステロールが高い、中性脂肪が高い)、糖尿病などが脳卒中に深くかかわっていると考えられている。それ以外にも、狭心症・心筋こうそく、不整脈(心房細動)、心臓弁疾患(心臓弁膜症)、一過性脳虚血発作の既往、年齢も発症・再発リスクとして考えられている。


問題75 結核のために右肺の上葉を切除し、術中に輸血を受けた75歳の男性が特別養護老人ホームに入所を希望している。次のうち、施設側が感染予防の立場から確認することが望ましいものとして、適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。

A A型肝炎ウイルス抗体
B C型肝炎ウイルス抗体
C BCG
D 胸部レントゲン

1 A B
2 A C
3 B C
4 B D
5 C D

<解答:4>
A 誤り
 A型肝炎ウイルスの経口感染による急性の肝臓の炎症をいう。潜伏期間は2〜6週間、平均30日でありHAV量が多くなると短くなる。まれに劇症化を示す場合もあるが、慢性化することはない。ほとんどが1〜2カ月で治癒する。よって、適切とはいえない。
B 正しい
 C型肝炎ウイルスは、血液を介するもので、感染経路は輸血や血液製剤が主であったが、供給血液からHCV抗体をスクリーニングできるようになってからほとんどなくなった。現在の主な感染経路としては医療従事者の針刺し事故・入れ墨・覚醒剤静脈注射の回し打ちなどがあり、潜伏期間は、30〜150日、平均50日で、劇症化を示すこともある。また、B型と異なり、健常成人における初感染でも高率に慢性化を示す。一旦慢性化すると自然治癒は困難であり、慢性肝炎→肝硬変→肝細胞ガンへと進展する。今回のケースでは、輸血を行なったことを考慮し、感染の確認をすることは望ましいといえる。
C 誤り
 BCGは結核の予防のために、結核菌で自然感染する前にワクチンを接種するものである。よって、結核の感染を確認することは出来ないので適切ではない。
D 正しい
 肺結核は、肺の組織の炎症から始まり、やがて組織が壊死して腐ったような状態になる。レントゲンに写る影の大半がこの状態の病巣である。さらに、病状が進行すると、壊死した組織が外に出て、そこが空洞になり、結核菌の絶好の増殖層となる。よって胸部レントゲンにより、術後の病状の様子を観察する必要がある。


問題76 次のうち、認知症を引き起こすことがないものを一つ選びなさい。

1 梅毒スピロヘータ
2 疥癬虫
3 プリオン蛋白
4 単純ヘルペスウイルス
5 ヒト免疫不全ウイルス

<解答:2?>

1 正しい
 病名は、進行麻痺。長い年月、体内に潜伏していた梅毒スピロヘータが脳を侵して発症する慢性脳炎。認知症状と手足の痙攣、体の麻痺がおこる。
2 誤り
 ヒゼンダニ(疥癬虫)によって起こる病気。衣類や寝具を介してヒトからヒトに伝染する。したがって、しばしば家庭内、施設などで集団発生し、皮膚につくと角質層に卵を産んで増殖していく。1カ月の潜伏期間を経て、全身にかゆい皮疹がでてくる。認知症との因果関係は無い。
3 正しい
 病名は、クロイツフェルト・ヤコブ病。蛋白質(プリオン)が異常な蛋白質に変化して発症する。本疾患は認知症が主症状であり、急速に進行する特徴がある。
4 正しい?
 もともと感染している単純ヘルペスウイルス(HSV)が、免疫力の低下により活発化して起こる。口の中や唇に痛みを伴ったみずぶくれができるのがHSV-1型。陰部すなわち、性器や肛門周囲にできるのはHSV-2型と呼ばれ、性病でもある。エイズではHSVは脳炎や食道炎の原因となる。単純ヘルペスウイルスが素因して認知症を引き起こすとは、考えにくく後述のヒト免疫不全ウイルスによるHIV感染の併発としてHSVが活発化するため、試験センターの解答には疑問を感じる。
5 正しい
 HIVの感染により、中枢神経に症状の現れる器質性精神障害の一つである。エイズ患者の50〜60%に発症し、認知症をきたす。


問題77 次の組み合わせのうち、適切なものに○、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 在宅酸素療法―肺気腫
B 外傷性脳損傷―高次脳機能障害
C トリアージュ―災害時の医療優先度
D EBM―個人的経験に基づく医療

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ×
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ×
5 × × ○ ○

<解答:1>
A 正しい
 組み合わせの通り。
B 正しい
 組み合わせの通り。
C 正しい
組み合わせの通り
D 誤り
 Evidence Based Medicine(EBM)とは、個々の患者のケアについての意志決定の場で現在ある最良の根拠《evidence》を良心的に、明らかに理解したうえで慎重に用いることである。EBMの実践とは系統的な研究や臨床疫学研究などより適切に利用できる外部の臨床的根拠とひとりひとりの臨床的専門技量を統合することを意味するのである。


問題78 統合失調症に関する次の記述のうち、適切なものに○、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 抗精神病薬の低用量維持は副作用による生活障害を引き起こすことが多い。
B 病識の欠如などから抗精神病薬の服薬を中止してしまうことが少なくない。
C 包括的地域生活支援プログラムでは、重症の精神障害者に対して、地域社会で支える衣料や種々の生 活上のニーズに関する多彩な支援を24時間・365日、生活の場に出向いて継続的に実施する。
D デイケアによっても陰性病状の改善は望めない。

1 ○ ○ × ×
2 ○ × ○ ×
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ×
5 × × ○ ○

<解答:4>
A 誤り
 坑精神病薬は、精神症状が安定してきたら、医師の指示によりゆっくりと減量し、再発防止のために、低用量の維持量まで減量しても当面は薬はやめずに服薬を続ける必要がある。この場合、副作用は比較的抑えることが出来るため、生活障害にまで発展することは少ない。
B 正しい
 統合失調症の患者の多くは病識が乏しいため、本人が服薬を中止することも多い。そのため、服薬管理が難しい場合も多い。
C 正しい
 包括的地域生活支援プログラムACT(Assertive Community Treatment)とは、かなり重い症状や障害を抱えている患者を対象にした積極的な訪問型地域生活支援事業で、概略は次の通りである。
 @これまでの精神保健・医療・福祉サービスの下では地域生活を続けることが困難な、重い精神の障害を抱えた人を対象としている 
 A精神科医を含む、看護師、ソーシャルワーカー、職業カウンセラー等様々な職種の専門家から構成されるチーム(多職種チーム)によってサービスが提供される 
 Bスタッフは10人程度で、集中的サービスが提供できるようにするため、100人程度に利用者数の上限を設定している 
 C担当スタッフがいない時でも質の高いサービスを提供できるように、チームのスタッフ全員で一人の利用者のケアを共有し、支援していく 
 D必要な保健・医療・福祉のサービスのほとんどを、チームが責任をもって直接提供することで、サービスの統合性をはかっている 
 E自宅や職場等、利用者が実際に暮らしている場所で、より効果のあがる相談・支援が行われるように、積極的に訪問が行われる 
 F原則としてサービスの提供に期限を定めず継続的な関わりをしていく 
 G1日24時間、週7日体制で、利用者の困りごと等の相談にのる
D 誤り
 精神科デイケアでは、精神科を受診している外来の患者(すぐに社会復帰するには自身が無い、退院はしたもののどうしていいか分らず困っている、もっと体力を付けたい、病気の再発を防ぎたい・・・などで助けを必要としている方々)を対象に、行われる治療の場である。したがって、陰性症状の改善にも効果的である。


問題79 パーキンソン病に関する次の記述のうち、適切なものの組み合わせを一つ選びなさい。

A 他動的に患者の関節を進展・屈曲して筋肉を伸張するときに、抵抗がみられる。
B 安静時の振戦がみられる
C 落ち着きがなく、他動である
D 失調歩行が特徴的である

1 A B
2 A C
3 B C
4 B D
5 C D

<解答:1?>
A 正しい
 関節を他動的に動かすと、通常はやわらかく何の抵抗も感じないが、パーキンソン病では歯車のようなガクガクとした筋硬直が認められる。手関節に現れやすく、検査する手の反対側の手を動かしてもらうとよりはっきりとする。ふるえのないパーキンソン病はあるが、筋硬直のないパーキンソン病はない。
B 正しい 
 片方の手のふるえから始まることが多い。ひどくなると足もふるえ、次第に反対側の手足にも広がる。手では親指と人差し指で丸薬を丸めるような運動となり、足ではかかとで床を踏みならすような動きとなる。1秒間に4〜7サイクルぐらいの速さで、安静時に目立つ。動作時にはふるえが軽くなることも大きな特徴である。本態性振戦もふるえを特徴とするが、より速いふるえで動作時や一定の姿勢でひどくなる点で、パーキンソン病のふるえと区別される。また本態性振戦ではアルコールを飲むとふるえが止まることも特徴的である。
C 誤り
 動作が鈍くなり、表情が乏しくなる無動症状態があらわれる。瞬きも少なくなり、あたかも仮面をかぶったような顔貌となる。
D 誤り?
 歩行時の手のふりが小さくなり、歩き始めの第一歩がなかなか前に出なくなり(すくみ足)、歩き始めると今度は小刻みに速くなってしまう(加速歩行)ような現象も出現する。その他小声で早口になったり、書く字がだんだん小さくなったりすることもある。また、歩く姿勢が前かがみになり、バランスをくずしやすくなる。体が傾けば元に戻すような力が働くが、これが障害されるため、一定以上に姿勢が傾くとそのまま棒のように倒れてしまう現象が生じる。パーキンソン病の患者がよく転倒するのはこのためである。
 このような症状・現象が失調歩行でないとは言い切ることが出来るのかどうかは曖昧であるため、試験センターの解答には疑問が残る。


問題80 神経性無食欲症に関する次の記述のうち、適切なものに○、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 発症率に性差はほとんどない。
B BMIが18.0以上である
C 活発な活動が見られる
D 神経性大食症に移行することはない。

1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ○
5 × × ○ ×

<解答:5>
A 誤り
 神経性無食欲症は、思春期の女性に多く見られる。
B 誤り
 当人による意図的若しくは無意識的によって起こる過度の体重減少が特徴的であるため、極度のBMIの低下もありうる。
C 正しい
 典型的な神経性無食欲症の患者は、体重を落とすために始めたダイエットで達成感が得られ、体重を落とすことを止められなくなってしまう。低体重であっても自分の体重を多すぎると感じ、さらに体重を減らすことを望む。鏡を見ても「まだまだ痩せられる」と感じるのみであり、体重が低すぎるとは考えない。
D 誤り
 時には、神経性大食症(過食症)や、その他非定型性の摂食障害へと、病像が変化する場合がある。




あなたは 人目の訪問者です。