CPUの消費電力

2001年11月30日公開 2002年7月6日加筆改訂

CPUの消費電力

 PC−286UXの改造に際して、各社CPUのデータシートを集めてその消費電力を調べていました。
 286UXの記事でも少し紹介しましたが、せっかくなので集めたデータを全てまとめてみました。下のグラフがその結果です。

CPU消費電力

 縦軸がデータシート記載のMaximam PowerもしくはThermal Design Power、横軸が実クロック周波数です。PentiumIIIやFC-PGA版Celeronは、同じくロックでもコアの種類や電圧で消費電力の違う製品が存在しますが、このグラフではデータシートに記載されている、最も低い電力値を採用しました。

消費電力でも競争中、Pentium4とAthlonXP

 よく言われるようにPentium4の消費電力は多いですが、同じクロックで比較するとAthlonはそれ以上です。冷却に失敗すると"焼き鳥"になるのもうなずけます。最新のAthlonXPでは若干緩和されているようですが、まだPentium4にはかないません。

 ここで気がついたのですが、AthlonXPの1.6GHzは製品名1900+であり、Pentium4の1.9GHzに相当の性能ということだそうなので、Pentium4/1.9MHzの消費電力と比較すると、AthonXPが68W、Pentium4が69.2Wとほぼ同じになります。AthlonXPの新パフォーマンス表記は速度・価格面だけでなく、消費電力でも同等と言うことなのか・・・それともただの偶然でしょうか。

(追記 2002年1月12日)
 その後、0.13μプロセスのPentium4が出回るようになりました。グラフでも分かるように、消費電力が大きく低減しています。プロセス技術の進歩が消費電力の低減、ひいてはクロック周波数の向上に大きく貢献しているのがよく分かります。

(追記 2002年7月5日)
 Arhlonの"焼き鳥"について指摘を受けました。消費電力の多さと言うよりも、放熱不良の場合に動作停止、もしくはクロックダウンする機能がないことが原因ということです。確かにPentiumIIIやPentium4、Celeronで焼き鳥になったという話は聞きません。詳しくはTom's Hardware Guide「最新プロセッサの発熱問題」をご覧下さい。

C3を見直そう

 このグラフで特筆すべきはVIA−C3(CyrixIII)プロセッサです。巷ではパフォーマンスの低さ故、全く無視されるか、取り上げられても否定的な評価になってしまいがちですが、消費電力という観点で見ると、他のあらゆるCPUを退けて最も優秀であると言えます。特にSamuel2コアのC3は10W以下のものもあり、これは大昔のClassic Pentiumの低クロック品(75-100MHz)に相当する値です。よく低消費電力と言うことで昔の低クロックCeleronや、Socket7のK6-2+を使う話が多いようですが、このグラフから見ると現行製品であるC3プロセッサを買った方が、よほど低消費電力を実現できることが分かります。

 C3の欠点と言えば、ご存じの通りその性能の悪さで、クロック当たりの性能はCeleonやDuronの1/2〜1/3程度です。これを持ってC3はダメCPUとの烙印を押されることが多いのですが、それは小さなダイサイズで低価格・低消費電力を目指すという設計方針で作られている以上、しかたのないことです。言い換えると、C3は速度とは別の価値観に基づいて設計されたCPUであり、それを速度という価値観のみで評価を下すのは、少し酷な気がします。

 MediaGXの頃ならいざ知らず、最近ではCPU性能が過剰気味であり、クロックが500MHzもあればほとんどのソフトが十分に使えることを考えれば、もはや速度のみがCPUの価値を決める唯一の基準では無いと思います。C3を論ずるときは、速度や価格だけでなく、消費電力という点での評価も加えて欲しいものです。(旧Cyrix/Winchipファンとしては特に・・・)

(追記 2002年1月12日)
 C3の新コア、Ezraが広く流通するようになりました。消費電力はSumuel2よりもさらに少なく8.5-9.2W。Intel系で言えばPentium75-90MHzの値です。風通しの良いケースならファンは不要でしょう。2002年中には、C3もギガプロセッサーの仲間入りすると思われますが、消費電力は10W前後と予想され、自作ユーザーが入手できる、世界一の省エネルギーなギガプロセッサとなるでしょう。