CPUの消費電力−2003年2月−

2003年2月16日公開

ご無沙汰しています

 ちょっとした思いつきで作った消費電力のグラフですが、いろいろな方が参考にして頂いているようです(メール下さった皆さん、どうもありがとうございます)。次からは独立した定番コンテンツにしようかとも考えています。
 さて、少し間が空いてしまいましたが、最新版を掲載します。

縦軸がデータシート記載のMaximam PowerもしくはThermal Design Power、横軸が実クロック周波数です。前回掲載のグラフと色分けが異なっていることに注意してください。

どこまでいくのか、インテル&AMD

 プロセスが0.13μに移行し若干消費電力が下がったPentium4ですが、高クロック化にターボがかかったために軽く70Wを突破し、3.06GHzではついにAthlonをも越えて81.8Wになってしまいました。HTテクノロジを導入したためとはいえ、とんでもない消費電力です。

 対するAthlonですが、消費電力については2600+で68.3W、2800+で68.3W(Barton)から74.3W(Thoroughbred)、3000+(Barton)で74.3Wと、ほぼ横這い状態となっています。これは、最近Athlonのモデルナンバー性能の向上が、FSBクロックやL2キャッシュの改良により行われ、実クロックはほとんど変わっていないのを反映した結果といえます。Athlonコアのクロック周波数はもう限界なのでしょうか。Hammer/Opteronが待たれます。

 何ににしても、PentiumIIやK6プロセッサが活躍した時代と比べて隔世の感があります。90nmプロセスに移行すれば、消費電力はまた下がるのでしょうが、高性能化競争の前には焼け石に水という気もします。

待ちに待った新C3プロセッサ

 Ezraコアの933MHz版が出て以来、とんと音沙汰なかったVIA C3プロセッサですが、年末になってようやくEzra-Tコアの1GHz版が出回るようになり、さらにNehemiahコアのC3も正式発表されました。

 そのNehemiahコアのC3ですが、データシートは入手できなかったものの、VIAのサイトにThermal Design Powerの比較を行っているページが見つかり、その値を拾って記載しました。Ezraコアよりは消費電力が上がっており、1.4GHzでは24Wとそれなりの消費電力となっています。とは言っても、インテル・AMDのCPUに比べればはるかに少ない値であり、今後も重要なPC向け省電力プロセッサであることには変わりはありません。

 消費電力が高くなる代わりに、Nehemiahコアでは浮動小数点演算ユニットのクロックが、これまでの実クロックの1/2倍から等倍になり、C3系の最大の弱点である浮動小数点演算性能がかなり改善される見込みです。これまでC3といえば、同クロックのCeleronの1/2〜1/3程度のベンチマーク値しか出せず、評価は低かったのですが、こんどのNehemiahコアで多少は汚名返上できそうです。

 この先、Pentium4用のSocket478対応のC3が出るそうです。最近はエントリーPCでさえほぼSocket478に移行してしまったので、Socket478対応のC3の存在は、ユーザーに省電力PCという選択肢を与えるいう意味で、重要だと思います。

 ところでNehemiahというコードネームですが、雑誌にはニアマイアと発音すると書かれていました。C3(CyrixIII)のコードネームはこれまでJoshua(ヨシュア)、Sumuel(サミュエル)、Ezra(エズラ)と旧約聖書の人物から採られてきたわけで、その流れからするとNehemiahは聖書で言うところのネヘミアとなります。Nehemiahを英語で読むとニアマイアになるのでしょうが、ちょっと違和感です。

(深読みされると困るので、蛇足ながら申し添えておきます。私は特定の宗教に所属しているわけではありません。聖書は読んでいますがあくまでも学問的な興味です。上の文は単なる感想です。)

PowerPCの新星、PowerPC970

 クロック競争でインテル系に大きく水をあけられ、いまいちぱっとしないPowerPCですが、IBMから新CPU、PowerPC970が発表になりにわかに活気づいてきました。

 このPowerPC970は、IBMのワークステーション用CPU、POWER4をベースに開発された64bitCPUで、POWER4ゆずりの高い演算性能と、インテル系に対抗できる高クロックを持つ、PowerPC系期待の星です。

 発表になったばかりなのでデータシートなどはまだ入手できませんが、IBMのサイトに消費電力の記載があったので、その値を拾ってグラフに追加しました。ただし、この値はTypical Powerであることに注意してください。Maximam Powerはもっと高い値になるはずです。

 Typical Powerであるにも関わらず、1.8GHzでの消費電力はPentium4のThermal Design Powerとほぼ同じであり、かなりの多電力消費CPUであることを伺わせます。性能を求めると電力消費もしょうがないといった所です。もはや、PowerPCだからといって省電力とは言えなくなったようです。