PC−H98s model8

2000年3月2日執筆

 「486をつんだ98が50万円代で買える」ということで、所属している研究室に急遽導入されたのが、PC−H98s model8でした。

 型番が示すとおり通常の9801シリーズではなく、Hyper98と呼ばれるH98シリーズです。とはいっても、ハイレゾが売りでもあった他のH98シリーズと違ってノーマルモードのみの機種であり、印象としてはH98シリーズと9801シリーズとの中間といった感じでした。

 当時の9801シリーズの主力はDAでしたが、386/20MHzとWindows3.0ですら非力に感じられるスペック。一方、H98シリーズが次世代98として売り出し中で、CPUも486/25MHz〜386/25MHzとスペック上ではそれなりの性能を有していました。NECとしてはWindowsはH98シリーズで、ということだったらしいのですが、これらWindows時代を担うはずのH98シリーズ、安くても定価80万を超える高額製品で、個人ユーザーにはとても手が出せず、主力となるにはほど遠い状態でした。

 そんな1991年5月。H98シリーズ普及の戦略的マシンとして、486SXの採用やハイレゾモードを削るなどのコストダウンを図り、これまでより大幅に安価なH98として発表されたのが、H98s model8です。安価とは言っても、定価54万8千円とDAよりも高額なのですが、それまで200万円近くした486搭載のH98が、50万円代で買えるようになったということで、かなり話題になったのを覚えています。

 さて、研究室で導入したH98s model8。届くや否やセットアップを行い、当時の重量級ソフトをとっかえひっかえ動かして、皆で486パワーに酔いしれました。ただH98シリーズのアイデンティティともいえるNESAバスに関しては、対応ボードが少ない上に高価だったため全く使わず、9801シリーズと同様にCバス拡張ボードばかりを装着していました。そんな経験から今考えれば、H98sはNESAバスなど搭載せずに、より安価な468マシンとしてRAもしくはDAの後継機種にすべきだったのでは、と思えてなりません。

 その後1992年になって、486搭載のノーマル98としてFAが発表になりましたが、これが486/16MHzという脱力するようなスペックで、1993年に98Fellow、Mateシリーズが出るまで、H98sは98ノーマル機種中で最高の性能を保持し続けることとなりました。もちろん98ハイレゾマシンにはもっと性能の高いものが何機種かありました。しかしそれらの価格は相変わらず100万円以上で、個人で購入するマシンではありませんでした。そう考えるとH98sは、中途半端とか互換性が悪いとか言われつつも、結果的には長く使える良いマシンだったといえます。

 ですが、NECが高価でレベルも決して高いとは言えない機種を小出しにして足踏みをしている間に、海の向こうの米国では、Windowsの普及にともなう486マシンの高性能・低価格化がどんどん進行しており、それがDOS/Vの波となってNEC−98帝国を襲うことになるのです。