ギガヘルツPowerPC

2002年1月30日追記
2002年1月20日公開

モトローラとIBMのギガプロセッサ
 その後、IBMとモトローラの英語サイトを巡回し、ギガヘルツPowerPCの情報を集めていました。探せば見つかるもので、IBMのPowerPC750FX、モトローラのMPC8540が、ギガヘルツを達成するPowerPCとなるようです。
 IBMのPowerPC750FXは、その名の通り現行のPowerPC−G3がベースのCPUで、SOI等の進んだプロセス技術でクロックを1GHz以上に引き上げられただけでなく、バスクロックを200MHzまで対応できるようにすることで、バスのバンド幅という面でも改善が図られています。
 モトローラのMPC8540は、e500”BookE”という新コアを積んだ、これまでのPowerPCとはかなり毛色が違うCPU。L2キャッシュは256KB。DDR333対応のメモリーコントローラも内蔵しています。

G5?
 モトローラのMPC8540は何なのでしょうか? モトローラのCPUロードマップ(PPCRMAP.pdf)を見ると、G4がMPC74xx、続くG5がMPC85xxと記載されているます。ロードマップ上からMPC8540は、G5プロセッサと言うことになります。ところがMPC8540の資料の中では「G5」という名称には全く触れられておらず、果たしてG5プロセッサと言ってしまって良いのかどうか、どうもよくわかりません。
 さらに言えばこのMPC8540、I/O機能が異様に豊富です。ギガビットイーサーネットコントローラまで積んでいます。組込用CPUのような作りです。と、思っていたら、MACPOWER誌2002年1月号で、モトローラの部長さんが、MPC8540は組み込み用であると明言していました。
 ただ、クロックが1GHzもあることや、DDR333対応のメモリーコントローラなど、次世代パソコンをターゲットにしたようなスペックも持っています。コスト要求が厳しい組み込み機器用に、そのようなハイスペックが必要だとは思えないのですが・・・。 いずれにしてもまだデータシートすらなく、市場にも出回っていないようなので、今後使い道に応じた仕様変更が行われる可能性は大です。

AltiVecは諸刃の剣?
 もう一つ指摘したいのが、MPC8540はAltiVecが外されていることです。組込用なので外したというのもあるのでしょうが、私としてはAltiVecを外さないとギガヘルツを実現できなかったのでは・・・すなわちAltiVecがPowerPCの動作周波数向上の障害になっているのではないかと勘ぐっています。
 日経BP社の「最新マイクロプロセッサテクノロジ」という本によると、CPUの動作周波数向上の障害としては、消費電力の他に、配線の複雑さという要因があるそうです。すなわち、CPU内の回路の配線が複雑になると、配線の長さが不揃いになり、高い周波数でタイミングが取れなくなってしまうということです。これが原因で動作周波数が頭打ちになったCPUとして、モトローラの68040、SUNのSuperSPARCがあります。
 AltiVecも浮動小数点演算を128bit幅で行わなければいけないので、内部回路は相当複雑なはずです。IBMはAltiVecに乗り気でなかったそうですが、それはAltiVecの高周波数化に向かない仕様に、危惧を抱いたからではないでしょうか? かつて、同じくクロック競争に付いていけずにインテル・AMD敗れ去ったCyrix6x86系プロセッサを製造していたIBMなので、なおさらそう感じられます。

Macはどうなる?
 PowerPCと言えばマッキントッシュ。クロック競争でx86勢に大きく水をあけられている現状(VIA−C3プロセッサですらもう933MHz)では、ギガPowerPCの一刻も早い出現が待たれるところです。
 IBMのPowerPC750FXはサンプル出荷が2002年1月と、間もなく正式出荷されそうな勢いですが、モトローラといえば、MPC8540ですら未だサイト上に概要紹介やプレゼン用のデータしかなく、出荷はまだまだ先と言った感じです。なお、前述のMACPOWER誌によれば、MPC7460というギガヘルツG4が2002年に出ると報道されていましたが、モトローラのサイトには影も形もありません。もし出るのなら、事前に何らかのアナウンスがあっても良いはずなのですが・・・。ホントに出るのでしょうか?
 現状ハイエンドのMacはG4と相場が決まっているようですが、G3プロセッサであるPPC750FXで先にギガヘルツを実現したとなると、Appleは、AltiVecのG4を取るか、ギガプロセッサのG3を取るかという難しい選択を迫られることになります。ギガヘルツG4/G5はまだまだ先の話なので、それまでの間AppleがMacのラインアップをどうするのか、興味深くあります。

(追記2002/1/30)
 と、言っていたら1月28日にギガヘルツG4、MPC7455と、新PowerMacG4が発表になりました。ホントにできるのかな?と思っていただけに、ちょっと驚きでした。
 モトローラのCPUサイトにも、28日付で新G4の資料がアップされています。ただデータシートがまだないところと見ると、ギガG4&Macの発表はかなりすべり込みだったような気がしますが、実際はどうでしょうか?
 ギガヘルツ実現には、SOIプロセス技術の採用もあるとは思いますが、新しい型名になったことや、866MHzから一気にギガヘルツになったこと、発表に時間がかかったことなどから考えると、コアの内部配線を合理化して、高クロックに対応できるようになったこともあると推察されます。


PC雑記帳に戻る
トップページに戻る