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Title:「焼損」と「焼き(焼燬)」-12 |
B1-04 06’10/21 17’02/03 . 焼損と焼き < 用語の解説-1 <火災損害調査 <ホーム:「火災調査探偵団」 . |
「焼損」と「焼き(焼燬)」 |
質問「焼き」の用語使用 先日、ある所で、『「火災調査書類」の記載に際して「室内北側の壁面は強く焼きし、・・」と書いたら、「焼き」は「焼損」に書き直せ!と言われた。 どう違うのか』と質問された。 ・火災損害には、「焼き損害」「消火損害」として「焼き」の用語を使用している。 ・「焼き(燬)」とは、焼くこと、焼き払うことの言葉の意味がある。 このように、損害を区分する言葉として使用されていることから、見分事実を説明する際に用いることに支障ないのではないか?と疑問がありますが ⇒回答: できる限り「焼損」の用語を用いて表現してください。 「焼き」を「焼損」と表現 この用語の扱いは、平成7年(1995年)改正(平成7年5月12日法律第91号)により刑法が、漢字片仮名混じりの歴史的仮名遣から、漢字平仮名の 現代仮名遣いに改めるための改正がなされ、この時点で、刑法108条「現住建造物放火」等の中で使用されていた「焼燬→焼損」へと「しれっと」変更 されたことによる。 従来の「焼燬」では、「焼けて、滅する」と言った言葉づかいに近いことから、そのような言葉づかいからは、木造系建物火災において表現されるもの で耐火系建物火災となると表現の範囲が狭くなり、「放火火災」の公共危険性をとらえると、「焼損(焼けて損害を生ずる)」の語感が近いことになる。 また、すでに、昭和50年頃から、消防関係の書類では「焼け」を「焼損」と言う言葉で使用して、現場見分調書の書き方の基本としており、一般的に 広まって定着していることから改正された刑法でも「焼損」にしたのでは、と思う。 この改正により、法文や判例等論文も含めて「焼燬→焼損」となったことから、従来からの使用にかさ上げして、消防上の用語も「焼き→焼損」とした。 「焼き」の用語が残ったこと 損害の分野で、「焼損損害」と言うと同義語が重なり「変」ですし、「焼けた」ことを特定したい気持ちもあり 「焼き損害」の言葉を残しています。 また、「消火損害」との対で「焼き損害」としています。 「焼き損害」とは言っても、熱により溶けた、割れた、変形したも入り、その意味では言葉本来の「焼き」だけに限定されるものではなく、広い意味の 「焼損」に近い用語の使い方としています。なお、東京消防の統計区分は「消火損害」はなく、「その他損害」の言葉を使用している。 刑法上の取扱い 刑法の108条現住建造物放火等の扱いでは、昔から①独立燃焼説、②効用喪失説、③中間(折衷)説に分かれる所です。原則は①独立燃焼説で、 判例の中で、鉄筋コンクリートのコンクリート壁だけの部屋での物件の放火は「現住建造物放火罪」にあたらない、とされ、建物材が燃えてないので、 独立燃焼していない、とされています。もし、効果喪失なら、物件の焼損により「室内」の主要部分がその「効果」を放火により喪失することになるが、 やはり、「燃えていない」とダメとなっています。しかし、放火は公共危険がその本来の意味でもあることから、燃え移る状況で、消し止められ時は 燃えることを前提として議論されることがある。(参考:ジェリスト平成7年「刑法の争点」から) (建物外壁に置かれた物件の放火事案など)火災現場で、耐火造建物火災の場合、「建物構造材の焼け」を探して写真撮影している警察の捜査官 がいることに気づくことと思う。 消防では、耐火造建物でもひっくるめて広く焼損部分を捉えて、不燃材料等により燃えていなくても「焼損床面積」を 算定しており、火災調査書類上の記載では「焼損」を使用するようにしている。 とは言え、「焼けの強弱」を説明する際に「焼損の強弱」と表現すると、消失箇所などの表現として、何とも物足りなさを感じてしまう。特に、たばこ火災 での蒲団とその下面の床等の焼損を表現する際には「焼き状況」と表現と記載してしまうのはなかなか治らない。 |
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