火災調査探偵団                 Fire Investigation Reserch Team for Fire Fighters
Title:「爆発」-03
B1-10   11’11/12 ⇒17’02/10      .   
爆発 < 用語の解説  <火災損害調査 <ホーム:「火災調査探偵団」   .
1,「爆発」として計上されるかどうか、事例から
 次の事例で、爆発として計上さるかどうかの「設問」があった。

 いずれも、「けが人のみで、焼損物なし」の現場です。
① スプリンクラーの配管改修工事で接着剤が管内に充満しているところでガスライターの火が引火爆発。
② 業務用フライヤー内に滞留していたガスが爆発。
③ 厨房コンロが点火操作を繰り返した際に滞留したガスが引火爆発かの「設問」があった。


 「爆発」として扱わない見解
   「3事例は、「けが人」は居るが、それ以外には爆発損害と計上すべき物がない事例です。
  この場合、「り災物件がないと火災として扱えない」と同じことになる。このため火災と扱われないと同様に「爆発としても扱われない」
  ということです。
  「人体は、損害(被害対象)から外す」ことが、前提にあり、「けが人」は火災・爆発の損害として扱われないです。このため、「人が火傷
  した」だけの火災も、火災として扱われません。
  例えば、たき火に近づきすぎて、火傷した時、「たき火」は火災ではありません。
 この事例を「爆発」として計上する考え  
  「人体は、損害から外す」のは、原則です。 このため、河川敷でガソリンをかぶって火をつけた場合は、「枯草若干」の火災として、
  死者1名を計上します。
   つまり、火災でも爆発でも「それが火災(爆発)として判断することが有効である」ならば、物的損害は何でも良いのです。
  3事例を爆発として損害計上すべき物が必要であれば、「ガス若干」を実損害として計上すれば「ガス若干焼損」「けが人1名」
 の爆発として認知されることとなります。
2, 事例の背景

 
「損害がない」と軽々に判断する過ち
   3事例のように、「全く被害が見られない」と言うのは、現場的には「本当?」と思われます。
     ・ガスは天然ガスの場合、空気より軽いため、爆発しても、拡散して、あまり被害はないが、その点で爆発現象そのものが
      珍しく、破壊部分は大きく、破損部分の被害が認められます。
     ・LPGでは滞留しやすく、ガス事故・爆発を発生しやすく、この場合は火源の位置により、滞留場所がベーパリッチの部分
      ができ、その部分で「火災」が発生します。もちろん、ガラス窓等の破損も確認されます。
     ・ガソリン系も同じです。
     とすると、設問事例作った人が、「被害なし」としたガス爆発は、架空の設問なのか、あるいは、現場を見る眼がないのか、
     となります。逆に、それほどに何も被害がないとすれば「爆発と言えるけが人の発生しない」のではないか、と、思えます。
 
被害物件のない、けが人の発生した爆発事例
   耐火建物の改修・解体工事で、床の掘削時に、床内の「ガス配管」を傷つけ、掘削機の火花に漏れてガスが引火して、作業員
  がけがすることがありました。他に燃えた物も破損した物も現認されない現場でした。
    この時は、爆発として認められることから、前掲出のように「都市ガス若干焼損。およびけが人1名」として、漏れて火の点いた
  ガスを損害に計上し、爆発火災として扱いました。
   つまり、「爆発だけのケース」として捉えないで、「被害」「損害物件」を探し出して計上し、爆発として火災調査により正規に扱う
  のが火災調査活動です。
 
3,火災調査活動の筋を通す
   爆発を「火災の定義」に入れたこと。
  平成7年の改正で「火災の定義」を改正して、燃焼現象としての「爆発」を入れました。
  Fire(火災)とExplosion(爆発)は、現象的には「同じではない」ことは、明白です。
  消防法上の災害の定義は、災害として「爆発」も扱われ、そのため広義の火災とされ、法第1条の条文解釈に入れており、
  同様に、法31条以下の火災調査においても同様の解釈から火災調査する、としていました。
  しかし、火災報告取扱要領の「火災の定義」は、当時は「爆発」は火災と現象面で異なるとして入れていませんでした。
  その意味で「火災でない現場を火災調査する」ことは実態として難しい現状となっていました。
   この火災報告取扱要領に縛られる状態の中では、昭和50年代に頻発したガス自殺等による「ガス漏れによる爆発」が発生
  した場合に円滑な火災調査ができませんでした。事実、まったく「火災調査をしない消防本部」もありました。
   爆発と火災が競合した場合も含め、東京だけで年間数十以上あり、さらに、現場で発生したけが人が「一次的な爆発による
  けが人」と「二次的な火災によるけが人」と分けて、一次的けが人は爆発によるものとして「火災の負傷者数」から除外してい
  ました。爆発火災でけが人が数十人以上あると、現場で、けが人ごとにチェックすると言うバカバカしい調査をしていたのです。
   このような経験から「火災と爆発」を同義にして、ようやく平成7年からこの悪癖を解消しました。
  このような経緯から言えば、爆発現場で一見すると物的損害が見られないとしても「爆発である」と言う判断を優先して、計上
  するのが「火災調査員」としての矜持であり。 人的被害の解釈などと言うものを引っ張り出して、否定的な「爆発の扱い」を
  する判断は火災調査を良く理解していない職員です(ドツボにはまった、やる気のないおじさん)。
  (なお、この3事例の解説は、月刊消防2007年5月号「火災調査相談室」から)
 
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