火災調査探偵団       Fire Investigation Reserch Team for Fire Fighters
Title:「火災損害の区分」-11

B1-21   17’02/03  . 
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火災損害の区分 - 焼き・消火・爆発の損害
  火災損害の区分
   火災損害の区分は、どのような区分に分かれているのでしょうか。
   平成7年の火災報告取扱要領の改正により「火災」の中に「爆発」を取り込むこととしました。このため、「爆発現象」による損害と言う項目
   を設けることとなり、この時点で「爆発損害」を創設しました。
    次いで、それ以前からあった「焼き損害」「消火損害」と言う区分については、その当時の刑法改正により「焼燬(き)」が「焼損」と書き換えられたこと
    から、変更を考えたのですが、やはり燃えている現場状況から言えば「焼き損害」をそのまま残すこととなりました。

 全国と東京消防で使用している火災損害の区分
   火災損害の区分は、次のようになっている。
               
  [全国]                   [東京消防] 
        火災損害   ア 焼き損害         火災損害 ア 焼き損害  
                 イ 消火損害                イ その他の損害 (火災報告上は消火損害)
                 ウ 爆発損害                ウ 爆発損害
                 エ 人的損害                エ 人的損害 

        [全国] 火災報告取扱要領の解説
                  焼き損害 (火災の火炎、高温等によって焼けた、こわれた、すすけた、変質したもの等の損害)
                  消火損害 (火災の消火行動に付随して発生する水損、破損、汚損等のものの損害)
                  爆発損害 (爆発現象の破壊作用によって発生した損害のうち、焼き損害、消火損害以外の損害))

 東京消防を含め各用語の意味
     「焼き損害」は、火炎によって焼失、火炎による焼けた、火災の熱による炭化、溶融、破損、変質した物の損害。
     「爆発損害」は、爆発現象により受けた破損等の物の損害。
     「その他の損害」は、「消火損害」と「火災による影響により生じたその他の損害」の合計。
                   「消火損害」は、消火のために受けた水損、破損、汚損等による物の損害。
                   「その他」は、火災時の搬出等による物の損害、煙の臭いによる商品等の物の損害、火災停電による冷蔵施設等の
                            溶解商品の損害等としている。
「その他の損害」の意味
    東京消防で、「その他の損害」を「消火損害」と「その他」の合計に意味づけているのは、一般的に「焼き損害」が火炎等による損害として「燃えたり、
   すすけたり」したことに対してり災申告される対象となりますが、「煙等の臭いだけの損害」などは「焼き損害」とも「消火損害」ともその範囲に入りづらい
   ものとなります。その意味で、このような稀な損害も含めて捉えることから「その他の損害」としています。
     とは言え、「煙による臭い」ですので「焼き損害」としても支障ないと言えます。
   「その他」を「消火損害」と合算させたのは「焼き」以外の損害を全てひっくるめて、「その他の損害」としてり災申告してもらうこととなます。
    「臭いだけの損害」は、商店などの損害として提出されるもので、見た目には「煤け」も認められない損害で、これらをり災として救済することから扱う
   こととしています。(東京以外は、「焼き」か「消火」のどちらに申告するかは聞いて記載する)。

 
現場の事例-1 から見た「火災損害」の扱い (焼き損害とその他の損害)  
 写真01
  実際の火災現場では、燃えている所と燃えていない所の「境界」は 
  は、極めて曖昧なものとなります。
  上部に対しては「火炎プルーム」により「火災熱の影響」は顕著で
  「焼き損害」としてはわかりやすいですが、床面付近の横方法に
  離れるほとんど「焼け」は見られなくなります。
  この写真では「消火損害」として見られる部分もありますが。
  「臭い(におい)等」を含めて広くとらえるとひっくるめて火災による
  「その他の損害」としてり災申告してもらうのが分かりやいことと
  なります。
  コタツ付近の床、際の本棚に沿った垂直方向、そして、天井も
  すべて焼き損害として捉えられるので、6畳全体を「焼損床面積」
  として計上しています。
 写真02
  少し、わかりにくい現場です。
  しかし、実際の現場はこのようなケースがほとんどです。
  特に、耐火系建物火災では、内装材が不燃系材質のため
  「すすけ」だけの場合も多くあります。
  この写真の現場では、天井は火煙の影響で「照明器具」の溶融に
  見られるように明確な「焼けの損害」となっています。
  しかし、床にはまったく「すすけ」等もなく、この部屋には「放水」もさ
  れなかったことから「消火損害」として捉えるのも難しいです。一般的
  には「臭い(におい)の衣類は、焼き損害」として火災保険では申請で
  きます。
  東京消防では、り災申告として「その他の損害」として「消火」等も含
  め損害計上の対象としています。
  「洗濯すれば、着られます。」と言う人もいますが、臭いは抜けない
  もので、火災損害を低く計上するメリットもないことから、正確に「火災
  損害」にすべきと思われます。

 
現場の事例-2 から見た火災損害の扱い(すすけを中心に)
 
 写真-03
 「焼き損害」となる代表的現場。
 天井、壁、床を含めて「焼け」が見られ、「焼き損害である」ことはだれが見ても
 明らかで「焼損床面積」として扱割れる箇所です。
 もともとも火災報告取扱要領の解説のような「焼き損害」「消火損害」とされる対象
 はこのような「焼けた」現場を想起して、記載されています。
 初任科学生などでは、むこれで十分に説明が着きます。
 しかし、「火災調査」都道府県消防学校専科や消防大学校では、このような写真1枚
 で納得する生徒は少ないです。

 専科では、この写真で、どちらの方向から「延焼してきたか」と言う課題を実況見分
 調書で書かせる、宿題のほうが力点となります。「焼け」をどのように見て、どのよう
 に記載(表現する)か。
 「火災損害」を考える際には、「焼け」を立体的な要素の中で捉えて、文章として表
 する必要があります。
 学校教育で、1枚の写真を各生徒に配って、文章を作成させてください。
 時間と手間のかかることですが、教育訓練として必須です
 写真-04
 台所全体が黒く「焼損」しているように見られる。
 しかし、黄色矢印の「絵画「流し台の扉」「床の籐かご」はいずれも焼きしていない。
 このように焼けている「天井」を除くと、「高熱による影響」が認められる範囲は、
 オレンジ色矢印て示された範囲であす。
 左側のまど上部壁板や窓枠には黒い変色の受熱影響があり「焼け」が認めら
 れる。室内全体が「煤け」ていても天井面から約60cm程度の範囲が、「焼やの
 範囲」と認められると判断される。
 
 天井面は、石膏ボード材なので、表面が高熱で焼けていても天井そのものは
 「燃えてはない」。壁面は、石膏ボードにクロス貼りと板張りで、天井付近を除く
 と、煤け(すすけ)ているが、焼けが認められる部分は上部のみで、床は汚れ
 (汚損)しているだけです。
 
 この場合、3面以上の壁の1/3程度に「焼き損害」があれば、東京消防では
 「焼損床面積」として計上しています。
 
 「すすけ」を拡大解釈して「焼損によりその機能が失われている」ことに意味づけ
 ると、火災調査の根幹とする「焼け」の判断を間違ってしまいます。「すすけ」に
 とらわれず、正確に「焼け」を見分する姿勢が必要です。ただ、「1/3程度の焼き
 損害を焼損床面積とする」かどうかは、消防本部内の見解として定着させるか
 は別の問題です。
 
 写真-05
 天井は「煤(すす)」で汚れているだけで、「焼け」として認められる範囲はない。
 障子戸を見ると、障子紙の黒変から、天井から1m程度が「煤けている」と判定さ
 れる。
 この場合、天井のみを焼損表面積とすることもできるが、汚損している壁面は、
 「焼損範囲」としてはとらえられない。
 ほぼ「すすけ」だけの室内まわりは、扱としては、難しい面がある。
 天井面の受熱影響を確認して「焼損表面積」とすれば、火災保険上は「焼けた部
 屋」として査定対象にはなりえる。もっとも、保険査定と消防判断が違うことはあり
 得ることですが、り災証明が示される面積などは、出来る限り保険会社と一致す
 ることが望ましい。
 その意味では、火災調査員は保険査定員と同等以上の見識を求められます。
  
  「焼損」を「焼け」として捉えると、上の2枚の写真(-04.05)の現場は、焼損表面積が計上されるだけの火災損害となこともある。
  「焼損」を「焼き損害」とすると「焼け」が確認されない「高熱による変形」や「すすけ」などの取扱いが難しく、特に「すすけた」と言う範囲を
  「火炎や高熱による影響」を前提としないで読み取ると「すすけた」と言う現場は広範囲なものとなってしまう。
  本来の言葉からは「すすけた」と言う範囲は、焼き損害として計上されずに「表面材に煤が付着している部分」となり、「焼き損害」としては
  「火炎によって焼失、火炎による焼けた、火災の熱による炭化、溶融、破損、変色した物の損害」として「炭化、変色」が見られる受熱影響
  に着眼するものです。その意味で「すすけた」は前置詞に「火炎、高熱等によって」となっています。
  「焼け」は焼けとして見る姿勢を保ってください。

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