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G3-06 10.11.06
火災調査の業務を行っていると、火災保険金の支払いに関与する請求裁判等に出会うことがある。
ここでは、「火災保険金の支払い」が、裁判等でどのように扱われいるかを見てみる。
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= 火災保険を契約した建物で火災が発生した時、その保険金の支払いにおいて、受取人の被保険者(り災者)が、そ の火災が偶発によるものであることを「立証すべき責任」を負うものではない。= 1, まえがき 損害保険は、商法第629条「損害保険契約は、当事者の一方(保険会社)が偶然なる一定の事故に因りて、生 じることあるべき損害を填補(てんぽ)することを約し、相手方(被保険者)が之にその報酬を与えることを 約するに因りて、その効力を生ずる。」(*原本は各自確認を)を基にして、契約行為が成り立っている(この 商法665条)。この条文の「偶然に生じた」という言葉があることから、「偶然かどうか」は被保険者が立 証すべき性格のものであるとした-傷害保険の特異な事例の判決-が、平成13年4月20日の最高裁判決とし て出された。 以後、この判例が拡大解釈され、一般的な火災や自動車事故の保険まで同様の被保険者の火災原因の立証 責任があるかのような下級審の判例が続いた。 現在は、以下の最高裁判例により、まったく考慮されることはなく、立証責任は保険会社にある (参考:火災保険は、商法第665条[火災による損害填補]「火災によって生じたる損害は、その火災の原 因如何を問わず保険者これを填補する責に任す。ただし第640条及び第641条の場合はこの限にあら ず」(*原本は各自確認を) 2,「被保険者の立証責任がない」とした判例。 最高裁判決平成16年12月13日第二小法廷・判決平成16(受)988保険金請求事件 判決理由 1, 事実関係 1)被告人A(り災者)は、建物の所有者である。 2) Aは、保険契約をB社(損害保険会社)としている。 3) 平成11年12月7日午前11時ころ、本件建物内で火災が発生し、本件建物4階の居室20㎡を焼損し、そ の他の各室にも消火活動による水損等の被害が生じたほか、保管されていた家財、店舗の商品等にも被害 が発生した。 2, 本件は、被上告人A(り災者)が上告人B(保険会社)に対して、本件火災により損害を被ったと主張して、本 件保険契約に基づき、火災保険金及びその遅延損害金の支払を求めるものである。 3, 商法は、火災によって生じた損害はその火災の原因の如何を問わず保険がてん補する責任を負い、保険契 約者又は被保険者の悪意又は重大な過失に因って生じた損害は、保険者が、てん補責任を負わない旨を定 めている(商法665条、641条)。 火災発生の偶発性いかんを問わず火災発生によって損害が生じたことを火災保険請求権の設立要件とする とともに、保険契約者又は被保険者の故意または重大な過失によって損害が生じたことを免責事由とした ものと解される。火災保険契約は、火災によって被保険者が被る損害が甚大なものとなり、時に生活の基 盤すら失われることがあるため、速やかに損害がてん補される必要があることから締結されるものである。 さらに、一般に、火災によって保険の目的とされた財産を失った被保険者(り災者)がその原因を証明す ることは困難でもある。 法は、これらの点に鑑みて、保険金の請求者(被保険者)が火災の発生によって損害を被ったことさえ立 証すれば、火災発生が偶然のものであることを立証しなくても、保険金の支払いを受けられることとする 趣旨のものと解される。 このような法の趣旨及び前1 (2) 記載の本件約款の規定に照らせば、本件約款は、火災の発生により損害 が生じたことを火災保険請求権の成立要件とし、同損害が保険契約者、被保険者又はこれらの者の法定代 理人の故意又は重大な過失によるものであることを免責事由としたものと解するのが相当である。 したがって、[要旨]本件約款に基づく保険者に対して火災保険金の支払いを請求する者(り災者)は、火災 発生が偶然のものであることを主張、立証すべき責任を負わないものと解すべきである。これと結論にお いて同旨をいう原審の判断は正当である。所論引用の最高裁平成10年(オ)第897号同13年4月20日第二小 法廷判決・民集55巻3号682頁、最高裁平成12年(受)第458号同13年4月20日第二小法廷判決・裁判集民 事202号161頁(まえがき触れた障害保険の判決)は、いずれも本件と事案を異にし、本件に適切ではない。 論旨は、採用することができない。よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (最高裁第二小法廷平成16年12月13日民集58巻9号2419頁。判例タイムズ1173号161頁) |
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保険会社が、被保険者からの請求に対して、保険金を支払わない時に、保険約款に定める「保険契約者等 (被保険者)が故意(放火等)又は重大な過失によって発生した火災である」ことを保険会社が立証して、支払 を拒否できる約款の条文となる。このケースでは、ほとんどの場合、保険契約者が、自ら或いはその家族、 従業員等に指示して「放火火災を発生させた」場合が、裁判判例として、支払拒否の理由となる。 重大な過失程度では、支払拒否の事例はほとんど見られない。 この支払拒否の「放火」の観点はどのような所にあるか、つまり、関係者が放火したと推定される立証は、 刑事事件での裁判と異なり、断定されるような“証拠”がそろっているわけではないことから、推定される 要件として、どのようなことがあるかを示すことである。 消防の火災調査書の中身を含めてみると。 1,出火時の関係者の行動に不信な点、或いは、つじつまの合わない供述がある。 2, 出火箇所が特定され、その出火原因として「放火」が検討される程度に、他の火源の可能性が低いか否定されて いること。 3,出火箇所付近で、助燃剤(ガソリンや灯油など)が検出されるか、或いは、その要因によるとされるような早い延焼 を裏付ける焼け方が見分されること。 4,火災と直接に関係する範囲で、他者を巻き込むと推定されるような本人以外の死傷者の発生がないこと (死傷者があると、刑事事件の対象として、すでに捜査対象となっている)。 さらに、保険会社の調査で、 5,火災保険金の受け取りを必要としているような経済状態にあること。これらの要件が必要となる。 しかし、裁判で認めうる要件は、まずは、「出火箇所」をどのように判定するか、次いで、消防機関が 「出火原因」とした原因と被保険者が「放火した」と主張する内容の相対的な比較である。 保険会社の「放火」立証は、往々にしてガスクロなどの分析結果、又は、火災実験などを示すことが多 い。つまり、火災調査後のかなり日を経て、保険会社の代理会社(リサーチ)作り上げた構図(放火と推定 されるような)と消防の作成している火災調査書類とのズレが問題となる。消防機関の調査書類は、放火を 否定または推定している論理構成の内容によって、決まってくる。 さて、ここで消防として、留意すべきことは、消防の判定書が「放火」としていない場合に、消防の判 定書と異なる「保険会社側」からの裁判資料が提出されることである。 一つには、①「放火」と推定しうるために、ガスクロ分析の試料を採取した分析結果がある。この分析 が「火災現場での調査員の見分感覚や実態」とかなり異なることがあり、例えば、鎮火後一週間以上して、 火災発掘後のもっとも焼き状況の強いところから採取したとされる残存物(通常は、最も焼けて、かつ、 最も放水影響のある箇所)から、灯油のチャートが明瞭すぎる、或いは高濃度すぎるなどの不自然な鑑定 書が出されることがある。火災現場には様々なにおいがあるとは言え、火災調査員の感覚で、灯油臭をか ぎ分けられないことはなく、その際にまったく「匂わない」とされている所から、灯油が検出されたとの 鑑定が出されることである。あえて、捏造とまでは言わないが、「感覚的」にはソレに近い印象を受ける。 例えば、床がコンクリートで、出火場所付近の膨大な放水がなされた所の床面の根太の木材から、ガス クロで灯油のきれいなチャートを見せられることがあるが、通常の火災現場でも、灯油臭がしていも焼損 残存物から灯油を抽出、判定することは難しいのに、である、つまり、ほとんど捏造では?と疑いたくな ることがある。そして、このような「まったく匂わない」ことから可燃ガス検知をしてない“弱み”があ る。 次に、出火箇所から拡大して延焼した、焼けの様相を、まったく無視したような「火災拡大の論理」が それらしく述べられることで、この場合には、フラッシュオーバー、バックドラフト、ベンチュレーショ ン、プルームの形成などのそれらしい用語を並べて、論理立てられることである。これらの言葉は、小区 画の耐火建物火災の様相としての実験則から得られた言葉であり、開口部条件が全く異質の木造系建物火 災に適用できるわけでもでもないのに、臆面もなく出されることがある(この時は、学者が関与する。)。 消防機関としては、これらの鑑定関係書類にあまりこだわらず、淡々と現場見分の事実からの推論を展 開するのが、この種の裁判での、証人時の対応であると言える。(成分鑑定書・延焼シュミレーション画 像・りっぱな学者の延焼理論などに対して、意見を求められことがあるが、きっぱり無視する。) 民事裁判での「鑑定等で出される資料」は権威づけられているが、それらが捏造であったとしても、そ の責任が問われたことはほとんどない。つまり、「何でもあり。」の鑑定書と思って、それらに惑わされ ることなく、現場での真摯な「火災原因調査結果」を証人として述べることである。中立、公平で火災現 場を最も良く知っているのは、消防の調査員である。研究者や学者は、実際の火災現場で、火炎の延焼と 消火活動がどのようになされて、鎮火後の火災現場が成り立っているのかを知らない、それだけの大きな 差があることを自信として、対処するのがベターだ。 |
現行(2010年)の火災保険との関わり |
2009年8月19日の保険法の改正により、2010年04月から、新しい保険法となった。 (詳しくは、法務省・保険協会等のホームページを) 前記、最高裁判例等を踏まえ、被保険者(り災者)保護の立場を強く打ち出したものとなり、[・・保険会社が必要とす る不可欠な調査の期間を除いて、その調査に必要な合理的な期間が経過した後は保険会社は遅滞の責任を負うこと となります。 ただし、保険契約者または被保険者が正当な理由なく、保険会社の調査を妨げたり、調査に応じなかったりした場合 については、保険会社は遅滞の責任を負いません。]となり、保険者が「不払いのための火災原因立証を負う」ことが 明らかとなった。 -わかりやすくルール化された。- また、火災保険では、損害評価において、「時価額」で支払われるため、再建築時の価額から、[建築から火災まで の期間の原価償却(減損)]を差し引いた金額となり、何となく割り切れない思いをすることから、選択肢として、[再建 築時価格(再調達価額)]での火災保険を取り入れることとなった。(旧来の減価率計算の保険も存在する。) さらに、わかりやすくするため、保険契約の査定の価額を示して、その設定範囲により、火災時の損害評価がなされ ることを事前説明して、誤解を生まないようにしている。 とは、言え、「全焼」する建物は少ない。 今の消防制度下の火災現場では「半焼、部分焼」での火災損害評価が、や はり難しいところです。火災損害鑑定人(日本損害保険鑑定人協会のH.Pを参照)により、評価されるが、一般的に は、消防機関が評価する「火災損害評価額」よりも大きい(高い)「損害評価額」が示され、保険金の支払いがなされる ことが一般的です。 最近、再建築価額から減価償却した時価額で、支払われる保険よりも、前出の「価額協定保険特約」が推奨商品と して扱われいます。また、焼損後に一定期間内に、再建築される際に、新築時の建築費用を負担する「新価保険特 約」と言う保険も扱われいる。 |
消防機関の火災損害評価は、「半焼や部分焼」火災で「算出される損害額」が保険会社に比べて低くなります。これ は、消防機関は、厳格な減価償却を計算式に入れ込んでいることと、水濡れや再建築的な評価の組み込みがない ため、保険会社の査定する価額との差が低い価額くなります。 もっとも、現行の「火災報告取扱要領」を遵守してい ると「耐火建物火災」等では、まともな損害算出はできませんから、被保険者からの問い合わせに答えられないの が現状です。 |
東京の場合ですが、ほぼ全国的に「火災時に被災者に対する税金の減免措置」があります。 1,減免する場合 火災により家屋焼失等の被害を受けた場合 2,対象となる都税 〇 固定資産税・都市計画税(23区内) 〇 不動産取得税 〇 個人事業税 〇 事業税(23区内) 3,減免の手続き 減免を受けるためには、納付期限までに納税者ご本人からの申請が必要です。 被災された方は、消防署の発行する「り災証明書」を添えて、管轄の都税事務所に申請書を 提出してください。 また、火災が原因で自動車が使用できなくなり、解体した場合には、自動車税の減額制度が あります。 詳しくは、都税の減免等について、都税事務所に問い合わせしてください。 |
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