シンチレーション、シーイングについて


シンチレーション測定について
2006/1/18
 2006/1/15より、シーイング判定について、シンチレーションを直接測定する方法を加えた。
 従来、シーイングは観測経験から主観的に判断し、シーイングの善し悪しを適切と思われるいくつかの段階で表すことが多かった。(下記判定基準参照。)

 こういった判定基準は観測者の主観に委ねられてしまい、客観性に乏しく、シーイングの善し悪しの程度を第三者に正確に伝えるのが困難という問題がある。判定基準を定めたところで、大気の状態は一様に変化する訳ではないため、判定基準で判断しきれないこともある。よって、観測データの正確性を示す値としての適性を欠く。

 太陽観測においては、特にA型,B型,J型といった小規模で不明瞭な黒点群しかない場合は、「ハッキリ見えない」を理由にシーイングの評価が悪化しがちである。また、冬場の大気が不安定な時期は、日頃の大気の状態が悪いため、たまたま落ち着くと「良い」という評価をしがちである。

 そこで、主観による判定のバラツキを抑えるため、太陽の半径を全周にわたって非常に細かく測定し、その半径のばらつきをシンチレーションとして表すこととした。これにより、シンチレーションの程度を客観的数値として表すことが可能となる。


 測定は、次のようにして行った。
(1)太陽の視半径を放射状に測定


(2)視半径(秒角)に変換
 この測定で得られた値(半径○○ピクセル)を視半径に変換する。

 太陽がちょうど半径500ピクセルで写っているとき、太陽の視半径が977秒角となっていた(天文年鑑を参照)ため、ピクセル値で求めた半径を977÷平均視半径(ピクセル)倍にして視半径(秒角)に正規化する。

(3)歪み成分の除去
 ところで、日の出直後(日没直前)には、大気による屈折で太陽全体が楕円形に歪む。そのまま半径の分散を集計してしまうと、分散が非常に大きくなってしまう。
 そこで、測定する場所の前後100ポイント(計200ポイント)の平均をとり、その平均との差をとることで、歪み成分の除去を行う。

 上記のグラフの白い線が半径のばらつきを示す。縦軸が半径、横軸が中心からの角度で、端から端まで380度程度ある。(横幅526ピクセルとなっているが、実際の測定ポイント数は、この4倍である。)
 このグラフは、日の出直後の太陽の視半径を測定したが、大気で全体がやや楕円形に歪んでおり、白い線(半径のばらつき)はsinカーブのようにうねって見える。
 そこから、歪み成分を除去したものが赤い線で、平滑曲線との偏差+平均半径のグラフとなっている。

(4)シンチレーション値の集計
 ここから得られた半径の分散(全体の平均との差の二乗の平均)を求め、その分散の大きさからシンチレーションの善し悪しを判定することとした。(標準偏差も考えたが、あまりピンと来る数字にならないので分散のままとした。)
 この値と、約1年蓄積したシーイングレベルを平均した結果、

 最良…0.92秒2
 良 …1.03秒2
 中 …1.11秒2
 悪 …1.21秒2
 最悪…1.64秒2
 論外…2.70秒2

となった。もちろん、シーイングは主観値なので、シーイングレベルとシンチレーション値が大きくズレることも少なからずあったが、おおむね近似できているようであった。

 ちなみに、上記の例題にしている画像は、わかりやすくするため、かなり悪いシーイング下で撮った画像である。この画像から判定されたシンチレーションは2.54秒2で、数字の上でも観測にはまるで向かない状態だという事がわかる。
 将来的には、この値と相対数との関連を調べてみたいと思っている。


 ※実際には0.95より下回ることは滅多にない。この程度の値が最低値になるのは、サンプリング誤差のためだろう。1ピクセル1.8秒相当であり、これ以上細かく解像できないためだ。理論的にはおよそ0.81秒2(=(1.8÷2)の二乗)より小さくならない。

シーイング判定基準について
2005/5/5
 シーイングについては、次のような基準で分類する。(2005/5/1〜2006/1/12)
最良
気流が安定し、シャープな像を結ぶ。
微細構造がよくわかる。

気流の乱れはあるが、像は比較的シャープ。微細構造もわかりやすい。

気流が不安定で像が甘い。眼視では分離する。

像が甘く、詳細が見えない。眼視での分離も難しい。
最悪
気流が激しく乱れ、微小な黒点の判別も難しい。
論外
大きな黒点すら判別が難しく、データが取れない。

【参考】
同じ焦点距離で撮ったときの木星の大きさ


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