これまでアクセサリー扱いかモニター用として使われ,オーディオ機器としては継子扱いされてきた。確かに昔のものは前頭葉が痛くなるものだったが、小穴による均等な音の拡散(Diffuse-field equalization) や耳を遠巻きにする耳あて(Circumaural Ear Pad)の使用によってずいぶん良くなっている。特にオープン型のBeyerやSennheiserのものは音漏れを逆に利用しているように感じられる。歩きながらイヤホンでラジオを聞いていて,急に音が広がったように感じられたことはないだろうか。そんな時はきっと近くで同じ局のラジオが流れている。最近のヘッドホンにはそんな音の広がりがある。実験される方は国会中継をNHKのラジオを片耳イヤホーンで聞きながらテレビを見ると再現できる。実体感というか臨場感というか、一方だけ聞くよりも明瞭になる。人によっては耳の左右感度の違いにも気付くだろう。
低音部の逃げがないからか、振動板がフィルムなので独特の低音(十分すぎるが薄めの低音)なのでスピーカーとは違和感があるのは確かだ。 低音部は低い方まで出ていれば良いと言うものではなくて低音の質感が大事だと思う。 特に古いタイプのJBL, ALTEC、TANNOYなど大口径のスピーカー(ユニットのfo60Hz程度)は実は50Hz以下の低音はあまり出ていないものが多い。 それでも厚い低音感があったのは確かだ。 録音がそれらのスピーカでモニターされていたから(やはり刷り込み)なのか? 周波数特性にこだわるのがハイファイだとすればヘッドホンがスピーカーとしては一番のはずだ。 小口径のスピーカでも100Hz辺りまでフラットならば低音感は十分!?
自然と大音量で聴いてしまいがちだが、良いヘッドホンはその特性上小音量で聴いて十分楽しめる。 スピーカーで大音量が出せない環境だからといってヘッドホンを大音量で聴く人の耳は既に劣化している。少なくとも私には映画館の大音響は耐えられない(生のオケでうるさいと感じたことはないのに)。
ヘッドホンがやっとオーディオの仲間入りした証拠に最近になってヘッドホンアンプがSATRI・SOUND・Audio-Technica他から発売され始めた。 過去にOPアンプを使って自作したがノイズが多く使えなかった。 2001年春、窪田式ALL FETアンプ(出力6Wx2 at 8Ω)をライン兼用アンプとして自作ー満足の行くものになった(A補正なしで残留雑音60μV以下)。 ヴォリュームは最初東京光音電波の導電プラスチックのものを試したが芯がなく、ノーブルのBTS準規格カーボンRV24YG 20S Aカーブ50KΩに換えた。 ヴォリュームの品質はアンプの形式などよりずっと音質にかかわる問題なのを実感した。
ヘッドホンの特殊性:低音の波長より小さい部屋では十分な低音が再生できないハズという説がありました。それはさておきヘッドホンでほんとに低域を再生できるか、そして外部スピーカと同じ振る舞いをするのかという疑問がありました。オンキヨーのオールホーンシステムGS-1の開発者だった由井氏(現在TimeDomainを主催されています)が、「オールホーンシステムの開発意図」(「電波科学」 84年3月号)で電磁変換器の3種の制御方式の違い(慣性制御Direct
Radiator/抵抗制御Horn/弾性制御Closed Headphone)の図を示しています。それによると「いずれの方式も再生帯域で音圧特性はフラットになりますが、変位は異なり、例えば、同じ大きさの100Hzの音と10kHzの音では、ますヘッドフォンの場合、振動板の振幅は同じであるのに対して、直接放射型(コーン型、ドーム型、平板型等)では10kHzの振幅は100Hzの信号の振幅の1万分の1、ホーン型は100分の1になる」そうです。
門外漢の私には理解できませんが
1)空気バネ弾性を使い振幅が周波数に依存しない
2)foの位置も低域端でなく高域端にある(超低域から再生できる)
ヘッドホンって本当に面白いですね。
但し、ヘッドフォンには本質的な欠点があります。それは右の音は右の耳にしか入らない、左の音は左の耳にしか入らない、従って通常のスピーカで聴くsound stageとは異なるものになることです。左右の耳に届く音の位相差を聞くことによって音の位置が分かるのです。そこで、人形の耳にマイクを仕込んでスピーカで聴く音と違和感をなくしたバイノーラル・ステレオ録音が試みられたり、位相差によるsound mappingを再現しようとしてヘッドフォンアンプに特殊な(delay&mixing)回路やプロセッサーを仕込んだシステムなども古くから発明されていますが、決定的な方式や解決法は未だ登場していません。従来のステレオスピーカでさえ実演のsound stageを再現することは難しいと感じます。サラウンドシステムにおけるsound mappingは理論上のことで、実際の部屋の反射特性を考慮しなければDiscrete 4 channelsの失敗と同様に際物・単に新しいだけに終わります。実際の部屋の音響特性をモデル化し更にスタジオのような音響を一般家庭に適用することは実際的ではないようです。