第2回
■長期優良住宅が完成
都内で本格的な賃貸住宅としては初めて長期優良住宅が完成しました。意外なことに賃貸ではまだなかったようです。
社会資産としての建築という考え方は、海外では珍しくない考え方ですが、戦後の日本にとっていままではあまりなかった考え方です。
戦後の日本は住宅不足から、質より量の供給体制に始まり、建築は結果的に、経済性を優先した消費対象物として、スクラップアンドビルドを繰り返してきました。
そのターニングポイントともいうべき考え方が、「社会資産としての建築」となったわけです。そのひとつが制度としての長期優良住宅です。
これからの建築は、リフォームで新陳代謝を繰り返しながら世代を亘る存在になります。成熟した社会への第一歩です。
なぜ長期優良住宅がよいかというと、3回以上建替えるところを1回で済ませてしまうわけですから、最初の30年はほかの建築と同じですがその後は資金的に余裕が生まれます。
その資金で、インフィルを作り変えていくことで、より競争力のある賃貸経営を可能にします。
くわえて、街づくりがきちんと形成されていく核になります。時間をかけて木を育てることができ、街並みを手直ししながら形成していくことが可能になります。
やがては、街区の魅力が増して、街区全体の資産価値が上がるかも知れません。
完成した長期優良住宅のグレースフォート西新井のおもな特徴を下記にあげます。
1.街並みの形成を意識した設計
2.スケルトンインフィル(SI)建築
3.構造の耐震性能を25%高めた設計
4.高耐久仕様の鉄筋コンクリート造
5.設備の更新は共用廊下から行う設計
6.次世代型省エネ基準仕様
その他にも細かい工夫は多岐にありますが、ハードウエア的には大きくはこんなところです。
次にソフトウエアの特徴を挙げます
が、それは次回とします。
第1回
■200年住宅とは
100年建築の次は200年住宅です。なんだかインチキくさい名称ですが、さにあらず。これからの日本社会にとってとても重要なプロジェクトなのです。
2008年の年頭の日経新聞をはじめ各社で一斉に報道されたましたが、大真面目の不況を打破する起爆剤とも言うべき力の含んだ政策です。
正確には長期優良住宅と決まりました。前ふりはこのぐらいにして本題に入りましょう。
日本の住宅は約30年で建替えられて来ましたが、この住宅の寿命を超長期(例えば200年ぐらい)にして、社会資産としていくことができれば、
建築の際に生じる地球環境負荷の40%低減が可能となります、さらに個人が一生の間にかかる住宅費用が3割低減される等、
これからの成熟社会のふさわしい「暮らしのゆとり」をもたらすというものです。
ここでいう「暮らしのゆとり」とは何でしょうか。
簡単に言うならば、住宅ローンや高い家賃におわれて、仕事中心の人生だった日本人が、
これからは住宅の負担を3割減らして、「その分余暇に使えますよ」ということ。
実はヨーロッパのサッカーやレース観戦などの膨大な時間を費やせるのには、この辺に理由がありそうです。
ここで寿命が6倍なのに、なぜ環境負荷やコストがすべて1/6にならないのかという疑問がでます。
これはメンテナンスやリフォームを計画的に行って住宅としての価値の持続をはかるための費用をすべて含んでいるためです。
この数値は、200年のライフサイクルコストを試算した上での数値が根拠になっています。
ちょうどヨーロッパの古い町並みを思い浮かべてください。その中の住宅は超モダンなインテリアで快適な生活があるという風景。
まねではなく、その日本版を創っていこうというわけですから、ちょっと楽しみです。
この200年住宅を実現するためにはいくつか整備しなければならないことがあります。
いくつかあげてみます。
1、200年もつ建築技術(ハード))
2、200年通用するシステムプラン(ソフト)
3、中古住宅の市場整備
4、超長期ローンの創設
5、家暦書の整備
6、社会資産としての長期償却税制
ここで200年住宅のハードとソフトは100年建築の研究時点で完成度が高くそのまま流用できる段階にあり、
後は市場や税制などの整備がこれから待たれる状況です。
参照 100年建築
次回に続く