研究計画の書き方(1)
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- 自分自身の興味や関心にしたがって大きなテーマを決める
- 例えば、「日本語のアスペクトについて研究する」のようになる
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- 大きなテーマが決まったら、総合的な入門書や専門論文の参考文献欄を利用して、基本文献(特に入門的な文献)を集める
- 基本文献は少ないより多い方が良い。手に負えないほど集める必要はないが、1冊だけでは少なすぎる。
- 集めた文献は、著者名(編書の場合は編者名、翻訳書の場合は翻訳者名も)・発行年・タイトル・出版社(論文の場合は、掲載誌や書籍名・掲載ページ数も)を参考文献欄の書式でメモしておく
- 泉井久之助(1981)『言語の構造』 紀伊国屋書店.
- 丸山圭三郎編(1985)『ソシュール小事典』 大修館書店.
- ガイヤー,ホルスト(1973)『馬鹿について 人間—この愚かなるもの』(満田久敏・泰井俊三訳) 創元社.
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- ノートを作ったり、メモをとったりしながら文献を(繰り返し)読む
- ノートやメモを作るときには、文献名と当該ページ数をはっきりさせておくのが良い。そのまま書き写したものか、自分の言葉でまとめたものかも区別しておく必要がある。
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- 実際にどのような研究が行なわれているのかまとめてみる
- 研究の対象や方法によって整理するのがよいだろう。
- 例えば、次のようになる(▼は研究対象、△は研究方法を示す)
- 日本語のアスペクトに関する研究
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- ▼文法的アスペクトに関するもの
- △形態論的研究
- △対照研究
- △英語との対照研究
- △スラブ語との対照研究
- △その他の言語との対照研究
- ▼語義的アスペクトに関するもの
- △形態論的研究
- ▼動詞や語幹の分類に関するもの
- ▼複合動詞に関するもの
- △語彙論的研究
- この段階では、研究の概要が把握できれば良いので、特に厳密なものでなくとも良い。
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- 自分自身の興味や関心にしたがってテーマを絞り込み、小さなテーマを考える
- 例えば、「補助動詞によって表わされるアスペクトについて研究する」のようになる
- 多くの研究がなされているものを選べば、手がかりは多いがオリジナルなアイディアは出しにくくなる。他方、研究が手薄なものを選べば、オリジナルなアイディアは出しやすいが手がかりにできるものが少なくなる。
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- 入門書や専門論文の参考文献欄を利用して、小さなテーマに関する文献(専門論文など)を集める
- 集めた文献は、著者名・発行年・タイトル・出版社(論文の場合は、掲載誌や書籍名・掲載ページ数も)を参考文献欄の書式でメモしておく
- 泉井久之助(1981)『言語の構造』 紀伊国屋書店.
- 丸山圭三郎編(1985)『ソシュール小事典』 大修館書店.
- ガイヤー,ホルスト(1973)『馬鹿について 人間—この愚かなるもの』(満田久敏・泰井俊三訳) 創元社.
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- まず、小さなテーマに関係する疑問文をつくってみる
- 例えば、「『他動詞+テアル』で格助詞はどのように変化するか?」、「『山に登った』と『山に登ってきた』の違いは何か?」、「『置いてある』と『置かれている』の違いは何か?」のようになる
- 疑問文はできるだけ具体的なものにすべきである。例えば、「『テイル』の意味は何か?」や「『テイル』と『テアル』の2つがあるのはなぜか?」は十分に具体的ではない。「『テイル』の基本的な用法にはどのようなものがあるか?」や「『テイル』と『テアル』はどのように使い分けられているか?」の方が具体的である。
- 疑問文の答えが出せそうかどうか考え、出せそうもないものは除外する
- 例えば、「『テイル』に前接する動詞にはどのようなものがあるか?」や「『他動詞+テアル』が使用可能な文脈はいくつあるか?」のような疑問文に答えを出すことは、膨大な資料を収集しなければならないため、現実的には難しいと考えられる。
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- ノートを作ったりメモをとったりしながら、6で集めた文献を(繰り返し)読む
- ノートやメモを作るときには、文献名と当該ページ数をはっきりさせておくのが良い。そのまま書き写したものか、自分の言葉でまとめたものかも区別しておく必要がある。
- 特に、7で考えた具体的な問題がどのように論じられているかに注意する。
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- 7で考えた問題についてすでに言われていることをまとめてみる
- 以下の点がポイントとなる
- 既存の研究や理論はどのように説明しているか?
- 通説(研究者に広く受け入れられている説明)はどうなっているか?
- 一般にはどのようにうけとられているか?
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- 9でまとめた説明を批判的に検討し、問題点をまとめてみる
- 以下の点がポイントとなる
- 十分な説明になっているか?
- より簡潔な説明のしかたはないか?
- 複数の異なる説明をひとつにまとめられないか?
- 反例(説明が当てはまらない事例)はないか?
- 異なる視点で捉えることができないか?
- 複数の異なる視点を融合させることはできないか?
- 他の事象との関連性が見落とされていないか?
- 問題点が発見できなければ、7に戻ってやり直す
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- 10で既存の説明の問題点が明らかになったら、その具体的な問題を研究の対象として考えることができる
- まず、既存の説明が持つ問題を解決するためにはどうすべきか考えてみる
- この段階では問題を解決することはできないはずであるから、問題を解決するために何が(何をすることが・何を知ることが・何を作ることが)必要かがわかれば良い。
- うまくいかなければ、7に戻ってやり直す
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- 既存の説明が持つ問題を解決するために何が必要かがわかったら、そのための具体的な方法を考えてみる
- 方法には、理論的方法・事例的方法・統計的方法・計量的方法などがあるが、目的に最も適していると思うものを選ぶ。
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- 研究計画を書く準備として、大きなテーマ・小さなテーマ・具体的な問題・既存の説明・既存の説明の問題点・既存の説明の問題点を解決するために必要なもの・オリジナルの理論や方法を簡潔にまとめておく