固有名詞の書き方
表記の基本
文字や表記符号の使い方については、次を基本とすればよい。
- 原語が漢字以外の外国語はカタカナで書く
- 漢字で表記されるているものは、できるだけそのままの表記で用いる
- コンピュータで旧字体や簡体字などが扱いにくい場合は、別の字体に改めて構わない(例:渋沢栄一[澁澤榮一]、森鴎外[森鷗外]、中華人民共和国[中华人民共和国])
- 姓名などをつなぐときにはナカグロ(・)を用いる(例:ジョージ・ブッシュ)
- カタカナ表記では、むやみに促音などを使わない(例:フィリピン、ヒトラー、/×フィリッピン、×ヒットラー)
人名の表記
論文やレポートで人名を表記するときには、次のようにする。
- 引用の出典など、参考文献の著者名(編者名)では、姓だけを示す 【参考→引用の出典の示し方】
- 「永田(2002)は次のように述べている。」→◎
- 「永田良太(2002)は次のように述べている。」→×
- 「氏」、「先生」、「教授」、「博士」などの敬称はつけない
- 「日本人で初めてノーベル賞を受けたのが湯川秀樹である。」→◎
- 「日本人で初めてノーベル賞を受けたのが湯川秀樹博士である。」→×
- 初出では姓名(フルネーム)を示し、2回目からは姓だけを示す
- 「日本人で初めてノーベル賞を受けたのが湯川秀樹である。湯川は、1907年東京に生まれた。」→◎
- 「日本人で初めてノーベル賞を受けたのが湯川秀樹である。湯川秀樹は、1907年東京に生まれた。」→×
- 原語が漢字で表記されるものは、そのまま漢字で表記する
- 「蔣介石」→◎
- 「シャン・カイシー」、「チャン・チェシー」、「ジャン・ジエシー」→×
- 原語が漢字でないものはカタカナ表記に改める
- 「ミハイル・セルゲイビッチ・ゴルバチョフ」→◎
- 「Михаил Сергеевич Горбачёв」、「Mikhail Sergeevich Gorbachev」→×
原語が漢字でない人名をカタカナ表記に改めるときは、できるだけ通用している表記を採用する。ただし、複数の表記が通用している場合は、本文の中で統一されていれば、どれを採用してもよい。
マホメット/ムハンマド、ユリウス・カエサル/ジュリアス・シーザー、アレキン/アリョーヒン
なお、原語が漢字でない人名の場合、初出で原語の綴りを示すようにすると丁寧である。
リチャード・ミルハウス・ニクソン (Richard Milhaus Nixon) は、アメリカ合衆国の第37代大統領である。ニクソンは、1960年の大統領選挙では僅差で破れたものの、1968年の大統領選挙で当選する。
団体名、組織名の表記
団体名や組織名は、通用しているものを書けばよい。もちろん、必要があれば正式名称で書いてもよい。
- 自民党政権は打倒されなければならない。/自由民主党政権は打倒されなければならない。
- 2005年に楽天イーグルスがパ・リーグに参入した。/2005年に東北楽天ゴールデンイーグルスがパシフィック・リーグに参入した。
- これは、米国のIBMが開発した技術である。/これは、米国のインターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションが開発した技術である。
ただし、略称が通用されているものについては、初出で正式名称もあわせて書くと丁寧である。たとえば、略称のあとに正式名称をカッコで示せばよい。または、初出で「(以下、**と略す)」とか「(以下、**)」と断っておき、2回目から略称を使うようにしてもよい。
- NATO(北大西洋条約機構)は、治安維持のためアフガニスタンに部隊を派遣した。NATOが派遣した部隊は英国軍を中心に構成されている。
- 在日本大韓民国民団(以下、民団と略す)は、日本に定住する在日コリアンを代表する組織である。民団は、数十万人の会員を持つといわれる。
- 在日本大韓民国民団(以下、民団)は、日本に定住する在日コリアンを代表する組織である。民団は、数十万人の会員を持つといわれる。
地名、国名の表記
地名や国名では、できるだけ標準的な表記をを用いるようにする。必要があれば正式名称で書くが、多くの場合は通称で構わない。なお、「英国」、「米国」など漢字表記が通用しているものは漢字で書いてもよい。
参考:通称と正式名称(英語表記)
台湾(中華民国 Republic of China)、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国 Democratic People's Republic of Korea)、キューバ(キューバ共和国 República de Cuba, Republic of Cuba)、フランス(フランス共和国 République française, French Republic)、イギリス/英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国 The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)、韓国(大韓民国 Daehan Minguk, Republic of Korea)、中国(中華人民共和国 People's Republic of China)、アメリカ/米国(アメリカ合衆国 United States of America)
ただし、カタカナで表記されるものでは、実際の発音とは異なる表記が標準になっているものもあるので注意しなければならない。
参考:世界の首都
モスクワ(Moskva/ロシア Russia)、ワシントンDC(Washington, D.C./アメリカ America)、キャンベラ(Canberra/オーストラリア Australia)、ローマ(Rome/イタリア Italia)、アムステルダム(Amsterdam/オランダ Holland)、ブラジリア(Brasília/ブラジル Brasil)、パリ(Paris/フランス France)、ワルシャワ(Warszawa/ポーランド Poland)、ソウル(Seoul/韓国)
また、カタカナで表記されるものでは、複数の表記が通用しているものもある。その場合は、どれを用いてもよいが、本文の中では統一しなければならない。
- Los Angeles:ロサンゼルス/ロスアンジェルス/ロスアンゼルス
- Strait of Dover:ドーバー海峡/ドーヴァー海峡
- Vladivostok(Владивосток):ウラジオストク/ウラジオストック/ウラジヴォストク