引用の方法

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誠実(せいじつ)引用(いんよう)

(ほか)文献(ぶんけん)資料(しりょう)から(ぶん)語句(ごく)などの表現(ひょうげん)()りることを引用(いんよう)という。

いかなる場合(ばあい)にも、引用(いんよう)は、誠実(せいじつ)(おこ)なわれなければならない。誠実(せいじつ)引用(いんよう)とは、自分(じぶん)のことばと他人(たにん)のことばとを明確(めいかく)区別(くべつ)するということである。

引用(いんよう)であることを明示(めいじ)せずに(おこ)なわれた引用(いんよう)無断引用(むだんいんよう))は、盗用(とうよう)剽窃(ひょうせつ)である以下(いか)(てん)十分(じゅうぶん)注意(ちゅうい)しなければならない。

  1. 自分(じぶん)のことばと他人(たにん)のことばとを明確(めいかく)区別(くべつ)する
  2. 自分(じぶん)(かんが)えと他人(たにん)(かんが)えを明確(めいかく)区別(くべつ)する
  3. 自分(じぶん)発見(はっけん)他人(たにん)発見(はっけん)明確(めいかく)区別(くべつ)する

引用(いんよう)孫引(まごび)

引用(いんよう)するときには、オリジナルの資料(しりょう)から直接(ちょくせつ)引用(いんよう)しなければならない。すでに引用(いんよう)されたものを(ふたた)引用(いんよう)すること(=孫引(まごび)き)はできるだけ()ける。

引用(いんよう)(おこ)なう意味(いみ)

引用(いんよう)は、他人(たにん)(かんが)えや他人(たにん)提示(ていじ)した情報(じょうほう)利用(りよう)することによって、自分(じぶん)議論(ぎろん)記述(きじゅつ)補強(ほきょう)するものである。

要約(ようやく)」のレポートや「学習報告(がくしゅうほうこく)」のレポートを()場合(ばあい)(のぞ)き、引用(いんよう)はあくまでも補助的(ほじょてき)役割(やくわり)()たすものである。レポートや論文(ろんぶん)()くときには、必要(ひつよう)なものだけを引用(いんよう)するようにしたい。

引用(いんよう)本文(ほんぶん)主従関係(しゅじゅうかんけい)

論文(ろんぶん)自分(じぶん)主張(しゅちょう)()べるものであるから、引用(いんよう)中心(ちゅうしん)となるような()(かた)(この)ましくない。文章(ぶんしょう)(なか)での引用(いんよう)分量(ぶんりょう)割合(わりあい))が(おお)きくなりすぎないようにし、(ひと)つずつの引用(いんよう)(なが)くなりすぎないようにしなければならない。引用(いんよう)分量(ぶんりょう)にはっきりしたルールはないが、一応(いちおう)目安(めやす)として、文章(ぶんしょう)分量(ぶんりょう)の10-15%を()えないようにするとよい。

引用(いんよう)では、自分(じぶん)()いた文章(ぶんしょう)内容(ないよう)(=本文(ほんぶん))を他人(たにん)文章(ぶんしょう)内容(ないよう)(=引用(いんよう))が補強(ほきょう)するようになっていなければならない。そのために、(つぎ)のことに注意(ちゅうい)しよう。

  1. 事実(じじつ)やデータなどの情報(じょうほう)引用(いんよう)したときには、その情報(じょうほう)(たい)する自分(じぶん)見解(けんかい)解釈(かいしゃく)()くようにする
  2. 他人(たにん)主張(しゅちょう)やアイディアを引用(いんよう)したときには、その内容(ないよう)賛成(さんせい)同意(どうい)するか反対(はんたい)反論(はんろん)するかを明確(めいかく)()べるようにする

引用(いんよう)(しめ)(かた)

一般(いっぱん)引用(いんよう)部分(ぶぶん)はカギカッコでくくって(しめ)される。また、引用(いんよう)をするときには、出典(しゅってん)(どこから引用(いんよう)したのか)(しめ)さなければならない。

引用(いんよう)出典(しゅってん)(しめ)(かた)

出典(しゅってん)は、『著者名(ちょしゃめい)発行年(はっこうねん)西暦(せいれき))』のかたちで(しめ)すのが一般的(いっぱんてき)である。なお、著者名(ちょしゃめい)(せい)だけを(しめ)せばよい共著(きょうちょ)場合(ばあい)著者名(ちょしゃめい)は、(せい)をナカグロ(「・」)かアンパサント(「&」)で区切(くぎ)って(しめ)す)著者名(ちょしゃめい)発行年(はっこうねん)(あいだ)は1バイトのスペース(「 」)かカンマ(「,」)で区切(くぎ)り、全体(ぜんたい)をカッコでくくる。

※ここでは、語句(ごく)(ぶん)引用(いんよう)する場合(ばあい)出典(しゅってん)(しめ)(かた)について説明(せつめい)している。図表(ずひょう)などを引用(いんよう)するときの出典(しゅってん)(しめ)(かた)については、【→図版の出典】を参照(さんしょう)せよ。

出典(しゅってん)は、引用(いんよう)直後(ちょくご)()く。なお、出典(しゅってん)はカギカッコの(なか)()場合(ばあい)も、カギカッコの(あと)()場合(ばあい)もある。

著者名(ちょしゃめい)本文(ほんぶん)一部(いちぶ)になるような場合(ばあい)は、著者名(ちょしゃめい)(うし)ろに発行年(はっこうねん)をカッコでくくって(しめ)す。

この場合(ばあい)著者名(ちょしゃめい)(せい)だけを(しめ)せばよい。「〜()」「〜先生(せんせい)」「〜教授(きょうじゅ)」「〜博士(はかせ)」などの敬称(けいしょう)不要(ふよう)である。

また、書籍(しょせき)論文(ろんぶん)などから引用(いんよう)したときには、(なん)ページからの引用(いんよう)かを(しめ)した(ほう)がよい。ページ(すう)発行年(はっこうねん)(うし)ろにコロン(:)で区切(くぎ)って(しめ)す。なお、2ページ以上(ぺーじ)場合(ばあい)は、ハイフン「-」でつないで(しめ)すか、「f.」("following page"の(りゃく)。「11f.」は11ページと12ページとなる)「ff.」("following pages"の(りゃく)。「11ff.」は11ページからの(すう)ページの意味(いみ)になる)()く。



ウェブ(じょう)資料(しりょう)から引用(いんよう)する場合(ばあい)

ウェブページやPDFファイルなど、ウェブ(じょう)資料(しりょう)から引用(いんよう)する場合(ばあい)も、著者名(ちょしゃめい)などがわかっているときには、書籍(しょせき)場合(ばあい)(おな)じように()く。

指宿(2000)は、「一般にインターネットでは新しい情報が流通しやすい。」と述べている。

著者名(ちょしゃめい)などがわからないときには、資料のタイトルを()く。タイトルは、カギカッコやクォーテーションマークでくくる。

「今後の社会資本政策に関するインターネット・アンケート調査」は、「高速道路の無料化を支持する声が多いが、これも利用料金の引き下げに結びつくことを期待している面が大きい」と分析している。

出典(しゅってん)表示(ひょうじ)複雑(ふくざつ)になる場合(ばあい)は、注釈(ちゅうしゃく)(かたち)(しめ)してもよい。【→注釈の付け方

出典(しゅってん)(しめ)さなくてよいもの

(ひろ)()られている事実(じじつ)知識(ちしき)一般常識(いっぱんじょうしき)やことわざなどを()くときには、出典(しゅってん)(しめ)さなくてよい。

アメリカ大陸は、1492年にコロンブスによって発見されたと言われている。

6万人の兵士を失ったアメリカは、ベトナム戦争に敗退した。

「待てば海路の日和あり」ということわざがある。

引用部分(いんようぶぶん)表現(ひょうげん)表記(ひょうき)

引用部分(いんようぶぶん)本文(ほんぶん)(おな)文字(もじ)()く。文字(もじ)のサイズを(ちい)さくしたり、ゴシック(たい)斜体(しゃたい)太字(ふとじ)などにする必要(ひつよう)はない。

引用(いんよう)はもとのままに(うつ)さなければならない。いかなる場合(ばあい)でも勝手(かって)表現(ひょうげん)()えてはいけない。引用(いんよう)する(もの)表現(ひょうげん)()えた場合(ばあい)には、不正(ふせい)引用(いんよう)となってしまう。

誤字(ごじ)誤植(ごしょく)

原文(げんぶん)(あき)らかな誤字(ごじ)誤植(ごしょく)(ふく)まれている場合(ばあい)にも、表現(ひょうげん)()えてはいけない。誤字(ごじ)誤植(ごしょく)(ふく)まれている場合(ばあい)は、誤字(ごじ)誤植(ごしょく)部分(ぶぶん)(うえ)右下(みぎした)(ちい)さく「(ママ)」()く。

陳(1990:115f.)は、「いかに短気(ママ)でも、留学では日本語が生活言語」だという。

陳(1990:115f.)は、「いかに短(ママ)でも、留学では日本語が生活言語」だという。

漢字(かんじ)旧字体(きゅうじたい)

ただし、漢字(かんじ)旧字体(きゅうじたい)については新字体(しんじたい)(あらた)めてよい(例:戀→恋、來る→来る)。そのときは引用(いんよう)(つづ)けて「(旧字体は新字体に改めた)」「(原文旧字体)」のように注記(ちゅうき)する。

恋といふものももとは欲より出つれども、ふかく情にわたるものなり。(旧字体は新字体に改めた)

不要(ふよう)部分(ぶぶん)省略(しょうりゃく)

引用(いんよう)途中(とちゅう)不要(ふよう)部分(ぶぶん)省略(しょうりゃく)してもよい。省略(しょうりゃく)する場合(ばあい)には、省略(しょうりゃく)した部分(ぶぶん)「……」「[……]」「(中略)」「[…略…]」などと()く。ただし、もともとの文章(ぶんしょう)意味(いみ)()えてしまうような省略(しょうりゃく)をしてはいけない。

国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、[……]その福利は国民がこれを享受する。

補足(ほそく)強調(きょうちょう)

そのまま引用(いんよう)したのでは、意味(いみ)がよくわからなくなってしまうときには、必要(ひつよう)情報(じょうほう)補足(ほそく)する。ただし、補足(ほそく)した部分(ぶぶん)(かく)カッコ([])か亀甲(きっこう)カッコ(〔〕)でくくり、「[]内引用者」「〔〕内筆者」「角カッコ引用者」「:引用者注」などと注記(ちゅうき)する。

野原(2000:10)は、「[大衆は]愚かだが鈍くはない(角カッコ引用者)」と述べている。

野原(2000:10)は、「〔大衆は〕愚かだが鈍くはない(〔〕内筆者)」と述べている。

野原(2000:10)は、「[大衆は:引用者注]愚かだが鈍くはない」と述べている。

引用(いんよう)のなかに、(とく)注意(ちゅうい)(うなが)したい(強調(きょうちょう)したい)部分(ぶぶん)がある場合(ばあい)は、下線(かせん)(アンダーライン)(ほどこ)したり、太字(ふとじ)(ボールド)にしたりする。そのときには、「下線引用者」「太字筆者」「強調筆者」のように注記(ちゅうき)する。

「人間の能力は遺伝によって決まるのではない(下線筆者)」(葛西1993:321)といわれている。

「人間の能力は遺伝によって決まるのではない(太字引用者)」といわれている(葛西1993:321)。

もともとの文章(ぶんしょう)補足(ほそく)強調(きょうちょう)があり、それが引用者(いんようしゃ)によるものではないことを(しめ)必要(ひつよう)がある場合(ばあい)には、「角カッコ原文」「下線原文」などと()く。

葛西(1993:321)は、「能力は環境に左右されないわけではない(下線原文)」という。

なお、引用(いんよう)をするときの表現(ひょうげん)文型(ぶんけい)については【→引用する表現】を参照(さんしょう)せよ。

(なが)引用(いんよう)(みじか)引用(いんよう)

引用(いんよう)には、(ぶん)のなかの語句(ごく)(ぶん)レベルの(みじか)引用(いんよう)と、段落(だんらく)レベルの(なが)引用(いんよう)とがある。(なが)引用(いんよう)(みじか)引用(いんよう)区別(くべつ)は、(ぶん)(かず)が2以下(いか)引用(いんよう)(みじか)引用(いんよう)、3以上(いじょう)(なが)引用(いんよう)(かんが)えればよいだろう。

なお、複数(ふくすう)段落(だんらく)(ふく)むような引用(いんよう)は、できるだけ()けた(ほう)がよい。複数(ふくすう)段落(だんらく)(ふく)引用(いんよう)必要(ひつよう)なときには、内容(ないよう)要約(ようやく)して引用(いんよう)する。【→内容を要約した引用

(みじか)引用(いんよう)(しめ)(かた)

(みじか)引用(いんよう)では、引用(いんよう)をカギカッコ(「」)でくくって(しめ)す。そのとき、出典(しゅってん)もあわせて(しめ)すようにする。

出典(しゅってん)(しめ)位置(いち)は、引用(いんよう)末尾(まつび)か、引用(いんよう)直後(ちょくご)がふつうだが、引用(いんよう)(ふく)(ぶん)末尾(まつび)でもよい。

引用(いんよう)のカギカッコ(「」)の(なか)のカギカッコは、二重(にじゅう)カギカッコ(『』)になる。つまり、カギカッコを(ふく)(ぶん)引用(いんよう)するときには、原文(げんぶん)のカギカッコを二重(にじゅう)カギカッコ(『』)に()えなければならない。

もとの文

便利さに慣れきった現代人は「生きる力」が弱い。

→引用文

神田(1994:18)は便利さに慣れきった現代人は生きる力が弱い。と指摘している。

また、外国語(がいこくご)()かれた(ぶん)引用(いんよう)する場合(ばあい)は、本文(ほんぶん)(おな)言語(げんご)(やく)して引用(いんよう)する語学(ごがく)などの論文(ろんぶん)例文(れいぶん)(しめ)場合(ばあい)(のぞ)く)。そのときには、「(筆者訳)」「[引用者訳]」のような注記(ちゅうき)(わす)れずに()く。

劉(1986:224)では、「台湾の高度な経済発展への影響は小さい[引用者訳]」と予測されていた。

(なが)引用(いんよう)(しめ)(かた)

(なが)引用(いんよう)では、引用(いんよう)をカッコでくくる必要(ひつよう)はない。(なが)引用(いんよう)は、引用(いんよう)全体(ぜんたい)本文(ほんぶん)より2()()げて()く。また、引用(いんよう)前後(ぜんご)は1(ぎょう)あけるようにする。また、引用(いんよう)先頭(せんとう)字下(じさ)げしなくてよい。

(なが)引用(いんよう)をするときには、「牧原(1986:5-9)は、次のように述べている。」とか「杉本(1999:12f.)は、次のように指摘している。」のように()いてから、引用(いんよう)(しめ)すようにするとよい。

 文体論の目的は、それを解明すべく文体について論じるものである。但、ムーナン(1970:219)
は、次のように指摘している。

  文体は人間的な現象で非常な複雑性を持つ……したがって、いつの日にか文体についての説明
  をまとめあげられるとしたら、その説明は極度に複雑なものであろう。文体の定義の簡潔に縮
  めた表現はすべて一方的な貧困化であろうし、そのことはずっと変わることはあるまい。

 文体論の歴史は特に短いものでないが、その探求はいまだ発展の途上にあるといえる。英語文体
論《スタイリスティックス》は、米英が〈国際語〉を一極支配するなか、英語教育の版図拡大とと
もに大きく発展した。他方、日本語文体論は、70年代以降目立った進展がないともいわれる。

また、引用(いんよう)(まえ)出典(しゅってん)(しめ)されないときには、かならず引用(いんよう)のあとに出典(しゅってん)明示(めいじ)する。

 数理的手法に対してどのような態度をとるにせよ、操作主義的文体観は、一方で書き手との関係で
文体を理解しようとし、他方で所与の有機的な統一体を前提する傾向がある。しかし、例えば、次の
ような見解が事実と異なることは、e-textを前にしてはおのずと明らかである。

  文章とは、有機的な統一体である言語表現の一全体を意味する。始めがあって、終りがあり、そ
  の間に有機的に連続する脈絡があって、それ自体をすべてとして完結している一全体を指す、た
  とえば、一作品というようなものである。(永尾 1975:11)

 また、ヨリ現実的な問題として、原著者に集約されない分散的なテクストにあって、原著者推定は
象徴的問題といえる。

なお、引用(いんよう)をするときの表現(ひょうげん)文型(ぶんけい)については【→引用する表現】を参照(さんしょう)せよ。

内容(ないよう)要約(ようやく)した引用(いんよう)

(なが)引用(いんよう)では、内容(ないよう)要約(ようやく)して引用(いんよう)することもできる。なお、(みじか)引用(いんよう)では、内容(ないよう)要約(ようやく)するよりももとの文章(ぶんしょう)直接(ちょくせつ)引用(いんよう)した(ほう)がよいだろう。【→参照の方法

内容(ないよう)要約(ようやく)して引用(いんよう)するときには、(つぎ)のような(かたち)()く。

なお、要約(ようやく)して引用(いんよう)する場合(ばあい)(かなら)出典(しゅってん)明記(めいき)する。また、引用(いんよう)する内容(ないよう)をカギカッコではくくってはならない。

クリステヴァ(1983:20ff.)は、書き手こそが最初の読み手であると述べている。

クリステヴァ(1983:20ff.)によれば、最初の読み手は必ず書き手自身なのである。

クリステヴァ(1983:20ff.)がいうように、書き手こそが最初の読み手である。

最初の読み手は書き手だといわれる(クリステヴァ1983:20ff.)。

要約(ようやく)して引用(いんよう)するときには、もともとの文章(ぶんしょう)内容(ないよう)(ただ)しく(つた)わるよう十分(じゅうぶん)注意(ちゅうい)しなければならない。

なお、内容(ないよう)要約(ようやく)した引用(いんよう)(しめ)(かた)について、よりくわしくは【→参照の方法】を参照(さんしょう)せよ。また、引用(いんよう)をするときの表現(ひょうげん)文型(ぶんけい)については【→引用する表現】を参照(さんしょう)せよ。

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