理論とモデル

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事象(じしょう)のモデル()

ここでは、事象(じしょう)のモデル()(なが)れを()1に沿()って(かんが)えてゆく。

世界(せかい)・データ・インフォメーション

図1:事象のモデル化の流れ

まず、()1で『世界(せかい)』とあるのは特定(とくてい)知識(ちしき)(およ)範囲(はんい)のことである。具体的(ぐたいてき)には、(わたし)たちが研究(けんきゅう)対象(たいしょう)にしようとするもののことだと(かんが)えればよい。(わたし)たちは、その『世界(せかい)』を《探索(たんさく)》することによって『データ』を収集(しゅうしゅう)することになる。

探索(たんさく)》とは、()がかりを(さが)して調(しら)べる〉という意味(いみ)である。(わたし)たちは、研究(けんきゅう)をする(さい)(かなら)ず、『世界(せかい)』に対して《探索(たんさく)》という行動(こうどう)(おこ)なっている。そして、探索行動(たんさくこうどう)によって獲得(かくとく)されるのが『データ』である。ここで、『データ』とは、判断(はんだん)基準(きじゅん)根拠(こんきょ)になる事実(じじつ)()している。この〈『データ』を構造化(こうぞうか)整理(せいり)分類(ぶんるい)(なら)()え)したもの〉が『インフォメーション(=狭義(きょうぎ)の「情報(じょうほう)」)である。『データ』には収集(しゅうしゅう)されることによって、どんどん蓄積(ちくせき)されていく性質(せいしつ)があり、『インフォメーション』には(ほか)(ひと)たちと共有(きょうゆう)できるという性質(せいしつ)がある。なお、データと情報(じょうほう)については【→研究における情報とデータ】を参照(さんしょう)せよ。

具体例(ぐたいれい):アイスクリームの売上(うりあげ)

以上(いじょう)のことを、具体的(ぐたいてき)(れい)によって確認(かくにん)してみよう。ここでは、お(みせ)でのアイスクリームの売上(うりあげ)事象(じしょう)として(かんが)える。

図1:事象のモデル化の流れ

まず、アイスクリームを()る「商店(しょうてん)」が研究(けんきゅう)対象(たいしょう)、つまり『世界(せかい)』となる。(わたし)たちは、その「商店(しょうてん)」で(なに)()がかりとなるものがないかを調(しら)べて(=『探索(たんさく)』)、(たと)えば《いつ、どのアイスがいくつ()れた》というような『データ』を収集(しゅうしゅう)し、蓄積(ちくせき)していく。そして、その『データ』を(ひょう)やグラフなどの手段(しゅだん)整理(せいり)したものが『インフォメーション』である。

アイスクリームがどのくらい()れたかという『データ』は、毎日(まいにち)自然(しぜん)に)蓄積(ちくせき)されていく。一方(いっぽう)(ひょう)やグラフなどで(あら)わされた『インフォメーション』は、(ほか)(ひと)とも共有(きょうゆう)できるものである(『データ』のままでは(ほか)(ひと)には利用(りよう)しづらいであろう)

知識(ちしき)理論(りろん)

『データ』や『インフォメーション』は、研究(けんきゅう)基礎(きそ)となる資料(しりょう)であり、それだけでは、研究(けんきゅう)にはならない。

図1:事象のモデル化の流れ

まず必要(ひつよう)なのは、『インフォメーション』を分析(ぶんせき)して『知識(ちしき)』として記述(きじゅつ)することである。ここでの『知識(ちしき)』とは、〈ある対象(たいしょう)について(わたし)たちが()っていること〉であり、一般(いっぱん)に、文字(もじ)などを(もち)いて()(あら)わすことができる。

しかし、ひとつひとつの知識(ちしき)は、常識(じょうしき)当然(とうぜん)事柄(ことがら)(あら)わしたものであることが(おお)く、それを記述(きじゅつ)しただけでは研究(けんきゅう)とは(みと)められないのがふつうである。

重要(じゅうよう)なことは、知識(ちしき)知識(ちしき)()()わせたり・関係(かんけい)づけたりすることで、知識(ちしき)を『理論(りろん)』として体系化(たいけいか)することである。理論(りろん)とは、現象(げんしょう)包括的(ほうかつてき)理解(りかい)解釈(かいしゃく)するために構築(こうちく)される論理的(ろんりてき)体系的(たいけいてき)知識(ちしき)〉のことだといえる。

具体例(ぐたいれい):アイスクリームの売上(うりあげ)

以上(いじょう)のことを、具体的(ぐたいてき)(れい)によって確認(かくにん)してみよう。ここでは、お(みせ)でのアイスクリームの売上(うりあげ)事象(じしょう)として(かんが)える。

図1:事象のモデル化の流れ

(たと)えば、アイスクリームの売上(うりあげ)月別(つきべつ)(しめ)したグラフ(=『インフォメーション』)を()ると、1(がつ)や2(がつ)売上(うりあげ)(すく)なく、(ぎゃく)に7(がつ)や8(がつ)売上(うりあげ)(おお)いということに()づくかもしれない。これは、グラフ(=『インフォメーション』)を分析(ぶんせき)して()られた事柄(ことがら)であり、《アイスクリームは(さむ)いと()れず(あつ)いと()れる》のように()(あら)わすことができる。これが、アイスクリームの売上(うりあげ)についてのひとつの『知識(ちしき)』ということになるわけである。

しかし、《アイスクリームは(さむ)いと()れず(あつ)いと()れる》というだけでは、あまりに当然(とうぜん)のことである。そこで、(たと)えば、気温(きおん)(かん)して《日本人(にほんじん)気温(きおん)が26()()えると(あつ)いと(かん)じる》という知識(ちしき)があれば、それをアイスクリームの売上(うりあげ)関係(かんけい)づけて〔アイスクリームは気温(きおん)が26()()えると()れるようになる〕ということができるかもしれない。これは、非常(ひじょう)単純(たんじゅん)(れい)ではあるが、アイスクリームの売上(うりあげ)(かん)する理論(りろん)であるといえる。

〔アイスクリームは気温(きおん)が26()()えると()れるようになる〕という理論(りろん)があれば、アイスクリームの売上(うりあげ)のグラフを()て「7(がつ)や8(がつ)平均気温(へいきんきおん)が26()前後(ぜんご)かそれ以上(いじょう)なのでアイスクリームがよく()れているのであろう」などと、『インフォメーション』を様々(さまざま)解釈(かいしゃく)してみることができる(ただし、その解釈(かいしゃく)正当(せいとう)なものであるかどうかは、さらに(くわ)しく調(しら)べてみなければならない)。さらに、気温(きおん)基準(きじゅん)にして『インフォメーション』を分析(ぶんせき)することで、《気温(きおん)26()以上(いじょう)では、気温(きおん)が1()()がると売上(うりあげ)が10%アップする》という(あたら)しい知識(ちしき)()られるかもしれない。もし、そのような知識(ちしき)()られたのならば、それをもとの理論(りろん)()()わせて〔アイスクリームは気温(きおん)が26()()えると()れるようになり、それより気温(きおん)が1()()がるごとに売上(うりあげ)も10%アップする〕という理論(りろん)(かんが)えることができるであろう。

モデル・制御(せいぎょ)

一般(いっぱん)に、『理論(りろん)』とは、現象(げんしょう)予測(よそく)することができるものである。理論(りろん)による予測(よそく)一般化(いっぱんか)して表現(ひょうげん)したもの〉は『モデル』と()ばれる。理論(りろん)による予測(よそく)は、個別(こべつ)のケースについても可能(かのう)だが、それをできるだけ一般的(いっぱんてき)(かたち)記述(きじゅつ)したものが『モデル』(または、『理論(りろん)モデル』)である。

図1:事象のモデル化の流れ

『モデル』は、『理論(りろん)』をわかりやすく・具体的(ぐたいてき)で・利用(りよう)しやすい(かたち)にしたものであり、一定(いってい)のルール(の集合(しゅうごう))や図表(ずひょう)、イラストなどによって表現(ひょうげん)されることも(おお)い。なお、『モデル』は、一般(いっぱん)具体的(ぐたいてき)なものであるため、実際(じっさい)の『データ』と照合(しょうごう)することで、直接(ちょくせつ)検証(けんしょう)する現実(げんじつ)()っているか()っていないか判断(はんだん)する)ことが可能(かのう)である。

『モデル』をつくる意味(いみ)は、理論(りろん)具体化(ぐたいか)して、データによって検証可能(けんしょうかのう)なものにするというだけではない。『モデル』は、実際(じっさい)利用(りよう)できるものでもある。そのため、『モデル』にしたがって行動(こうどう)することは、現実(げんじつ)(=『世界(せかい)』)を制御(せいぎょ)(コントロール)することにつながるのである。

具体例(ぐたいれい):アイスクリームの売上(うりあげ)

以上(いじょう)のことを、具体的(ぐたいてき)(れい)によって確認(かくにん)してみよう。ここでは、お(みせ)でのアイスクリームの売上(うりあげ)事象(じしょう)として(かんが)える。

図1:事象のモデル化の流れ

〔アイスクリームは気温(きおん)が26()()えると()れるようになり、それより気温(きおん)が1()()がるごとに売上(うりあげ)も10%アップする〕という理論(りろん)があるとき、この理論(りろん)からは、「効率的(こうりつてき)仕入(しい)れの方法(ほうほう)」についてのモデルを()()すことができるだろう。「効率的(こうりつてき)仕入(しい)れの方法(ほうほう)」についてのモデルは、(たと)えば、(つぎ)のようなルールの集合(しゅうごう)(あら)わされるであろう(あるいは、フローチャートなどを使(つか)って図解(ずかい)してもよい。なお、図解(ずかい)については、【→図解のし方】を参照(さんしょう)せよ)

  1. 翌日(よくじつ)予想気温(よそうきおん)が26()未満(みまん)ならばアイスクリームを仕入(しい)れずに在庫(ざいこ)()
  2. 翌日(よくじつ)予想気温(よそうきおん)が26()ならばアイスクリームを10()だけ仕入(しい)れる
  3. 翌日(よくじつ)予想気温(よそうきおん)が26()以上(いじょう)ならば、仕入(しい)れの(かず)を1()につき1()()やす

このモデルが現実(げんじつ)適合(てきごう)しているかどうかは、このモデルにしたがった仕入(しい)れを実際(じっさい)(おこ)なうことで検証(けんしょう)することができる(なお、このモデルにしたがった仕入(しい)れを(おこ)なうということは、このモデルによって現実(げんじつ)制御(せいぎょ)しようとしているということを意味(いみ)する)。このモデルにしたがった仕入(しい)れを(おこ)なうことで、商店(しょうてん)売上(うりあげ)()えるようであれば、このモデルは現実(げんじつ)によく適合(てきごう)していると評価(ひょうか)することができるだろう。(ぎゃく)に、売上(うりあげ)()えないのであれば、このモデルは現実(げんじつ)にあまり適合(てきごう)していないと評価(ひょうか)されるであろう。

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