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8.中尾彬のスケッチ法

 画家でもある中尾彬が、かつてあるテレビのインタビューで話していました。書きたい風景に出遭ったら、そこへいきなりキャンバスを 持ち込むのではなく、まずなん回となく現場に足を運んで、その魅力を確認し、作品のイメージを固める。いよいよ自信が付いたところで、 書き始めると言っていました。頭の中にキャンバスをイメージし、そのキャンバスの上に仕上がりの絵を 想像してみる。それで納得がいって初めて創作に取り掛かるようです。
 私も全く同感です。これと思って目にした情景を、まず頭の中に描いてみるのです。絵で経験を積んでいくと、何時しか自分の頭の中に、イメージ上のキャン バスがもてるようになります。
これは第4章で説明した頭のキャンバスそのものです。そこに形も色も鮮やかに絵が書けるようになります。 頭のキャンバス上で、仕上がりをあれこれ想像してみます。あるいは何回も手直しをします。こうしてとことんまで納得がいくこと が重要です。
 これができると絵の描き方が全く変わってきます。姿と形は実景通りである必要はありません。眼下の風景と同じ感動が、想像上のキャン バス空間に実現されているかどうかをここで確認します。しかもその感動は、個人的一時的なものでは困ります。持続的で第三者の共感を 引き出せるものでなければなりません。そのためには、暫らくイメージのまま保留しておいて、時間をかけて検討してみるのも無駄ではあ りません。 そのような確認を充分済ませてから絵を描き始めると、描いている途中での迷いがなくなり、一気に手早く、しかも期待通りの傑作をものに することができます。  
 2006/7/20     

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