TAKESHI氏の物語A

ボクシングのゲームの区切り画像

プロ・アマに関わらず、ボクシングのトレーナーになり、数年間の年月が過ぎようとしている。

今までにボクシング界に関与するようになってから色々なことがあった。

感動的な勝ちも屈辱的な負けも経験した。
これからもボクシング界に携わる限り、色々なことがあると思う。

僕は高校一年生から本格的にガードを学び、ジャブの打ち方を学んだ。
そのときから本格的にボクシングを始めた。

はじめて本物のボクシングジムの雰囲気。

本物のボクシンググローブを手にし、
本物のボクシングジムの臭いを嗅いだときは、
物凄く新鮮で、心がときめくほどの感動を覚えた。

毎日、新しい事を吸収するために心底充実していた。


そこから実戦でアマで7年間。
プロで5年間、試合をして来た。

記録の残らない非公式戦を入れたら100戦ほどは試合をしていて、
多くの試合を倒し切って、勝っている。
ボクシングは自分自身の人生だ。

ロードワークやシャドーボクシングなどの練習で得たものは大きいが、
僕が在学していた高校にはボクシング部がなかったので、
怪我を覚悟で実戦でボクシングを覚えて行った。

現在でボクシング界に関与するようになってから24年目になる。

現在、練習のときに軽くウオーミングアップとして、選手と一緒に練習をしたり、
スパーリングもしているが、

普段はボクサーではない一般の方々と同じ普通の人間。

一般の方の中にはボクサーという人種のことを
暴力的に思われる方もおられるようだが、
元ボクサー、現役ボクサーもリングを離れれば同じ人間。一般の人間だ。

元来、男性のスポーツであったと思われたボクシングも、
自らの意思で女性がボクシングを始めようとする時代になった。

それは女子柔道などがメジャー化されて久しい現在なので、
時代の必然の流れなのかも知れない。

以前は女性が殴りあいを!
と、多少は否定していたが、女子ボクシングの演技の部。
女子ボクシングの試合を観戦する限り、
RSC(レフェリーストップコンテスト)のタイミングも妥当だし、
なかなかの水準のレベルに達している女子選手もいる。

個人的には日本国内では完全にメジャー化されている女子柔道のように、

女子ボクシングも、もっとメジャー化されて行ってもいいと思う。

そして、現在は60歳を超える高齢の方でも
健康維持のためだろう、ボクシングの練習をする方々も少なくはない。

自分自身「変わった奴」と思われることもあるが、普通に考えれば、

ボクシングを始めようと本気で思った時点で、
多少は変わっている部分はあるのだろう。

それは個性と言うべきか。

ボクサーには多かれ少なかれ、
それなりにボクシングを始めようとする【過去】を持っているように思う。

少なくとも、僕の知る限りのボクサーには少なからず、
【過去】を持っている人達が多い。

社会の中には色々な方々がいらっしゃるのと同じようにボクサーもボクシングから離れれば、
一般の方々と同じく、喜怒哀楽憂恐の様々な感情や個性を持つ一人の人間だ。



2004年10月30日に、両国国技館で行なわれた試合を観戦するために上京した。
久しぶりの東京だったので凄く懐かしかった。

世界王者の新田豊選手の世界タイトルマッチの防衛戦
と同じ日に、同じ会場で行なわれた
日本人の世界ランカー同士による
三試合(詳しくは分からないが日本初?)を生観戦した。

久しぶりの世界レベルの試合を生観戦して緊迫した気分だった。
大きな番狂わせもなく全試合が終了。いい試合の連続だったと思った。

世界レベルにもなれば、
恐らく、常人からは想像も付かない練習や節制をしているのだろう。

その全試合の中で関西のホープと噂されていた長谷川穂積選手と
同じ、拓殖大学のボクシング部の後輩、
鳥海純の試合が一際、印象に残った。

とにかく内容の濃い。
観る者を飽きさせることのない10ラウンズだった。
スピードとパワーとタイミング。

打っては避け。避けては打つ!
スピード感あふれるジャブの刺し合いと、激しいカウンターの打ち合いで、

両者の意地とプライドのぶつかり合い。
観応えのある素晴らしい試合だった。

2004年度の日本ボクシング界の年間最高試合
の候補に挙げらてもいいと思う内容の好試合だった。
凄い!あれぐらいのレベルになれば!

長谷川選手VS鳥海戦にカルチャーショックを受けた。
ある意味、小学生の時に観た「モハメド・アリVSジョージ・フォアマン」戦の時と同じような
プロボクシングの試合という意味で、
感動と共にセンセーショナルな衝撃を受けた。

忘れかけていたプロボクサーの姿を思い出した。


自分の仕事とボクシングの事は知っている。
当然のことだが、自分の仕事は真剣にやっている。

他のことは深くは分からない。
否定するつもり全くないが、アイドル歌手などは興味がなく全く知らない。

ボクシングに関して言えば、プロ、アマ両方を実戦で経験して来たので、
ボクシングの本質は知っているので、そこのところを尊重して頂きたい。

僕はスポーツが大好きだ。

色んな方々が色んな職業に就かれていて色々と複雑で大変なことがあると思う。
何事も経験しないと本質までは分からないように、
他のことは深く経験したことがないので、本質までは分からない。

どんなスポーツでも競い合うようになれば、
身体に無理をするので、健康的なものではなくなってくるように思う。

ボクシングをはじめ、どんなスポーツでも健康的なものだが、
試合になり、相手より上回ろうと思えば、
勝とうと思えば!
その時点での自分の身体を極限にまで鍛えるので、
健康的なものではなくなって来ると思う。

どんなスポーツにでも怪我が付き物で、
引退後に時間をかけて治療すれば治る。

勝負の世界はどちらかを取るか!
栄冠を勝ちとるか!楽をして、そのままの状態に甘んじるか。の独特のものだ。

勝つ為に!少しでも記録を伸ばす為に!タイムを競い合う為に!
そうなるために厳しい練習をし、身体を鍛えるので、
トップに立つ人間の努力、才能、頭脳、根性、精神等は並大抵のことではない。

団体競技も自分のために、勝敗が決することもあり、
厳しいプレッシャーを感じる部分はあると思うが、
一対一の真剣勝負になれば、特に自分自身で切り開いて行くことなので、
団体競技とは別の厳しい部分が大きくなって来ると思う。

そんな過酷なことを自分の意志で心に決心し
自分の心の中で決心したことを実行しようと思えば、
全て自分自身との戦いだ。

スポーツではボクシングしか知らないのでそう思うのかも知れないが、
一つの試合に費やす労力、報酬、世論…のことなどを思うと
日本・東洋・世界のタイトルを取ったり、
スター性があり特別、知名度の高いボクサーは別として、
ボクシング程、割の合わないスポーツはないと思う。

数あるスポーツの中でも自分はボクシング。

自分自身のポリシーだ。


僕のボクシングの先生や身近なボクサーの人達から聞くところによれば、
自分には、凄いボクシングセンスと才能があったらしい。
あまり人には言わないようにしてたが、隠れてでも努力してきたつもりだ。

努力なくして才能は開花しないし、努力なくして天才などは有り得ない。

自分のボクシングスタイルがある程度完成したと思った頃には
ボクサーとしての自分に自信があった。

ボクシングは打たせずに打つ!
打つ為に避ける!

避けてからカウンターを取れる局面があれば、瞬時の感性でカウンターを取る。

攻撃と防御はコンビネーションでなければいけない。

強くなり、上の地位まで登りつめようと思えば、
考えながら、練習に取り組まなければ強くはなれない。

ブロッキングとジャブは基本。
ブロッキングは一番固い防御の一つだ。
基本はとても大切だ。

変則ボクサーでも、基本が出来た上で変則的な動きが出来るものだ。

それほどに、基本は大切だ。


相手のフェイントに引っかかったり、
駆け引きや能力で負けて、強烈なパンチを受けて効いてしまったとき
パンチの効果によるクリーンノックダウンでも色々ある。

フラッシュダウンなどのダメージの軽いダウンもあるが、
痛烈なパンチの効果で効いてしまい深刻なダメージを受けたときでも
相手にダメージを悟られないように意地でポーカーフェイスでいるもの。

特にボディを打たれ、効いてしまったときはなおさらポーカーフェイスは大切だ。

ボディが効いてしまって、露骨に表情にだせば、
確実に相手につけ込まれる。
時には立ったまま、無意識で身体が覚えている
練習で培った本能だけで何ラウンドか戦っていることもある。

そんなときは相当なスタミナをロスする。

独特の危機感。

試合を何度か経験されたことのあるボクサーの方々は
ある程度理解されているはずだ。

そして、ご存知の通り、日本のボクシング界はアマとプロとに大きくわかれている。

スポーツ自体の種類が違うと言っても過言ではないほどに
アマとプロとではルールが違う。

しかし、プロもアマも同じく神聖なるボクシング。


僕は色々な事情で高校卒業後、拓殖大学で4年間アマチュアボクシングを経験した。

ボクシングの名門校、拓殖大学でアマチュアボクシングを4年間経験したお陰で、

プロ入りしてからプラスになった部分が大いにある。


もしも、トップアマとトッププロが試合をすると想定すれば
長丁場になれば、ほぼ確実にアマボクサーはプロボクサーには勝てないが、
短期決着戦という形になれば、
トップアマもトッププロといい勝負が出来るぐらいにトップアマも鋭い!

国際大会の場合には2分4ラウンド制の場合もあるようだが、
アマチュアボクシングはテクニックボクシングのテンポの速い、
どんな大きな試合でも3ラウンド制のスポーツ。

何年か前かは分からないが、仲良く共存しあっていたプロとアマが分裂したらしい。

詳しくは知らないが、
プロボクシング界とアマボクシング界には色々な内情があるのだろう。

井岡会長さんの甥っ子さんで
現在トップアマとして活躍中の井岡一翔選手のように
オリンピックで金メダルを取ろうとする国際的な考え方には大賛成だ

そうすれば、必然的にアマチュアボクシングや
プロボクシングのレベルも上がる。

勿論、トップアマ、アマチュアボクサーのままで引退するのもボクサー本人の自由である。
トップアマでボクシング人生を終える
アマチュアボクシングに美学を持つボクサーも存在する。


僕はアマでは日本代表のメンバーに属していたこともあり、
日の丸をつけて国歌を聞いて海外で試合をしたこともある。

国歌を聞いて試合をするときは凄く気合いが入り、
とても言葉では表現出来ない気分になれる。

強くなることを本気で望み、真剣に
考えて、身体を鍛えてボクシングに取り組んだお陰だと思っている。

色んな経緯を経て、小年の頃からの夢だったプロボクサーとなり、
連勝した後のプロ入り4戦目に
当時のトップコンテンダーと堂々と打ち合って敗れた後

「あれだけのプロの強いボクサーと堂々と打ち合ったんや。
他に怖いボクサーはいない」と、思っていた記憶が今でもある。

その後に、自らの不注意で交通事故を起こし、
引退を与儀なくされるほどの大怪我をし、無念の引退だった。


その無念を現在は自分の指導するボクサーに夢を託している。

日本のトップレベルになれば、スパーリングなどではは
パンチを交換しあって避ける。
打つ!フェイント…パンチの交換で会話する
という感覚を分かっているはず、

日本のトップレベルともなれば分かっていない方が不思議なぐらいだ。

ボクシングは両拳のみを武器に優劣を競い合うシンプルなスポーツなので、
対戦相手より上回ろうと思えば、
シンプルがゆえに難しく、奥が深い部分はあると思う。

試合も普段の練習と違い非日常的なことであり、真剣だ。
試合前の練習も減量も真剣だ。

試合と名が付けば、ボクサーは真剣に取り組む。

「凄い試合を観た!俺も努力してあんな風になりたい!」
「倒れるかと思う程、練習して身体を鍛えた!自信はある」
「疲れている。自信はあるが、もっと走らないと納得いかへん」

「ジムワークでも、もっと納得しないと」
「もっと練習せな、やりたいことが果たせへん!試合で出ない!限界を超えたる」


「ディフェンスは当たり前。冷静にみたら相手が次にやってくることが分かる」

「うわっ!気を抜いたらヤバイ」

と、頭では理解していても実際に実行にうつすのは難しい。

持って生まれた性格か、生まれ育った環境のせいかは分からないが、
そんなことを実行しようとする漢と巡り合える。

そんな奴って大好きだ。本物の好漢だ。

だが、試合前のオーバーワークには絶対に気を付けなければいけない。

そんな厳しい事を実行しようとするボクサーには
そんな漢には心から自分が経験してきたことや
自分が長年強いボクサーと接してきたことを思い出し、
ボクサー自身が考えるように、
ヒントとしてボクサーに伝えているつもりです。


充分な練習をこなし、試合になれば、試合直前が一番大切な時間だ。

ボクシングもメンタルスポーツである。

自信を与え、ボクサーを安心させることが一番大切なことだ。

親子鷹のボクサーもいくつか存在する現在だが、
ボクサーとトレーナーはアカの他人同士の場合がほとんどだ。
信頼関係を築くのに何年間もの年月が必要だ。
アカの他人同士なので、
普段から約束にしても何にしても破らないように心掛けている。
そうして信頼関係が生まれれば、
その分だけボクサーとの結束は固い。


孤独な試合前の練習で、その信頼だけを頼りにボクサー・トレーナーが
お互いを信じ、作戦なり戦い方をたてていきテンションを高めて行く。

勝てば最高に嬉しい!

負ければ、嬉しさの何倍もの悔しさが襲って来ることを知り、
人前で大声を出して泣いてしまったこともある。


試合をしたもの同士は分かり合えるもの。

僕はトレーナーとして、ボクサーには信頼関係とボクサーである前に
一人の人間として、はじめて会った人も同じ人間なんだから、まず尊敬しろ!

何をやるにしても簡単ではない。
必ず自分より上回ってる部分もあるはず、自分の知らないことも知ってはるんや!
まずは尊敬して接しろ。
勝負事は勝つことが第一なので、負けに来ようとするボクサーはいない。


自分と同じく、もしかしたら自分以上に相手も試合に備えてるかも知れない。

試合をする相手も勝つために色いろなことを犠牲にして鍛えて来ている。

勝っても負けてしまってもお互いを認め合って尊敬しろ!スポーツマンライクだ!
と、思えるようなボクサー(人間)として成長して欲しいと思い、
指導しているつもりです。

勝ち続けているボクサーもいれば、
途中で負けて挫折を味わうボクサーもいる。

負けた悔しさをバネに勝ち続けて、トップの地位まで上がって行けるボクサーもいる。

勝ってもいい人間はそれ相当の努力を考えながら実行した人間だ。

自分が指導するボクサーからいくらでも教えられることがある。

本当の師弟関係はお互いがお互いを高め合い、
お互いを成長させて行くことだと思う。

トレーナーはボクサーを指導し、ボクサーから学び、ボクサーを指導する立場だと思う。

自分の息子にもボクシングでなくてもいい。
そんな強い気持ちを持ち、たった一つのことでもいい。
やりたいことを内に秘め、道を外さないで実行しようとする
堂々とした人間に育っていって欲しいと思っている。

世間の皆さんは父親、母親として先輩の方が多いです。

試合ではチャンスやピンチ。
チャンスのあとにピンチが訪れたり、
ピンチのあとに逆転のチャンスが訪れたり、色々なことが起こり得るので、
ボクシングの試合とは人生の濃縮版だと思っている。

たった数十分間のために、2〜3ヶ月前から
試合より遥かに長く辛い練習や減量で、
自分自身に勝ち、大勢の人達の前で堂々と生き様をみせる訳だから。


ボクシングで培った精神は貴重な財産だ。



ボクシングのゲームの区切り画像

あるボクサーの物語へ。

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