リングの申し子。この称号、かつての辰吉丈一郎以外に日本で継ぐものは現れないと思っていたが、どうやら人間風情の思い込みだったようだ。 平成の世にその二人目を拝めようとは。 冠を失くし、母を亡くし、長谷川穂積の心身はあまりに危うい極限にありと思われた。 妻子親族、山下会長始め、人目に触れざるチーム長谷川のサポートの心労、察して余りある。 それに応えんとする長谷川の決意、これを果たせなければ昨夜のリングに命すら置いてくる覚悟だったのではないか。 きっと、そうだ。 2階級4キロ弱という巨大ともいえる階級差に加えて、軽・中量級王国で貧困を拳で切り開きつつ指名挑戦者として待ち続けた、名誉に飢えた巨漢ブルゴス。 様々な想いの集中するリングは、テレビ越しには照明の眩しさが発火直前の熱にさえボクには感じられた。 纏うトランクスもグローブも、その内面を象徴する如くに真紅に彩られた雷神は、頭一つ分ほども大きなしかも好戦的な褐色の大男に対し恐れるところなし。 バンタム級を席巻した光の矢のような拳を矢継ぎ早に繰り出し、あまつさえ足を踏ん張っての大砲をも恐れ気もなく滅多打ちする。 瞼から鮮血が滴り、7回に顔面がほぼ垂直に上を向くアッパーを喰らった時には見ているこっちの寿命が縮んだ。一ファンがこの有様だから重ねてセコンド、家族の心労に同情を禁じ得ない。 鬼籍に入った母に向けた、しかと見届けてくれとの叫びにも見える、いや聞こえる。一挙手一投足はリングの申し子の声なき声。 久しぶりのフルラウンドを、傍観者の心臓を何度も脅かしつつ戦い切り、腫れ上がった顔で迎えた戴冠の時はただ涙が流れた。にもかかわらず、 「今日はこんな申し訳ない試合で、オカンも安心して観てはいられなかっただろう、自分の勉強不足、もっとしっかり勉強してきます」 あの声音は本気でそう思って言っている。 本年ベストバウトほぼ間違い無しの試合を自ら振り返ったコメントがこれだ。 どこまで高みを目指すのか。 当然かけるべき「おめでとう」すらおこがましく感じる。 日ノ本の国をこの申し子が選んで生まれてくれたことに、謝辞すら述べるべきなのかも知れない。 |
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