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「ホントにお気の毒な本当のお話」


まだまだ寒さの続く2月中旬、連休を控えた土曜日のお昼前。
閑散とした待合室からは天気予報を伝えるテレビの音声と共に耳馴れた電話の呼び出し音が。

「はい、はい・・・ちょっと代わりますので」という受付嬢の声と同時に手渡された受話器の向こうから
「もしもし、こちらは今朝、長崎市内を出発した南九州観光ツアーの者です。
車内で歯痛を訴えておられるお客様がお一人。宿泊先のホテルに問い合わせました所、そちらが一番近いとのことですのでのでよろしくお願いします。
現在、熊本インターから九州自動車道にはいり宮崎方面に向けて走行中。約2時間程で到着の予定です」
という添乗員らしき男性からの電話。

スタッフには手短に状況を説明。「え〜!!残業・・・・」という声を無視し、斜め向かいのファミレスを指差し今のうちに昼食を済ましておくように指示。

待つ事2時間余り。カーナビ常備の時代、予定通り目の前に派手なお化粧を施した長崎ナンバーの大型観光バスが巧みなハンドル(ステアリング)捌きでさして広くもない当医院の駐車場にノッシノッシと進入、占拠。
似つかわしくない光景に周囲からの好奇の目がチラチラ。
程なく添乗員と思われる方と共に左アゴをタオルで押さえ、虚ろな眼差しでご来院の初老の男性。

どんよりとした空気が一変、ピーンと走る緊張感。
通常の受付、問診は後回し。
とりあえずレントゲン室へ直行。

その後、診療チェアーに座って頂き、外見の確認、確かに左頬から顎下リンパ節にかけての著明な発赤、腫脹。
口の中を拝見すると左下奥歯の歯肉から頬粘膜も同様の状態。
現像されたレントゲン写真をシャーカステンに貼り付けてみると下顎骨内に埋もれた歯の根、周囲は母指頭大の黒影。

以前から慢性の炎症による弱い鈍痛を感じていた筈。それがバス車内の暖房、適度の飲酒で急性化したものと思われます。

こうなると、やる事はただ一つ。
しかし、一個人開業医としてはもっともやりたくないケースの一つ。

通常の浸潤麻酔では炎症巣拡散の恐れ、又、酸性下の元、果たして麻酔効果は・・・。
もっともリスクを伴う伝達麻酔による三叉神経節への神経ブロック以外選択肢は無し。
折りしも土曜日の午後、日曜、月曜と連休。
おまけに遠方よりの観光ツアー。

不安、緊張、恐れを振り払うかのように、大きく深呼吸。
次の指示を待つスタッフの視線を感じながら、いつもより動作のテンポを遅らせ、低く、静かに一言。
「伝麻、切開の準備」
自分で発したこの一言により、スッと不安、恐れが遠のき、残されたのは適度の緊張感、そして職業に対する使命感。

内科的疾患、アレルギーの有無を確認すると、注意深く刺入点、角度、方向を確かめながら血管損傷のない事を確認の上、通法通り麻酔剤を注入。
瞬時に効果発現。
そのせいか、患者さんの顔にほんのり赤みが、こちらも第一の関門クリア。ホッ。
後は手順通りに切開、排膿、縫合、投薬。

私:大変でしたね。
  痛くはありませんでしたか?
  お気の毒ですが、今夜は温泉・お酒・お料理はお控えになりお部屋でお休みください。
  夕食時まではまだ麻酔の効果が残っていると思いますので、軽い流動食を。
  1週間後、かかりつけの医院で抜糸を。後で処置経過の文書をお渡しします。

温泉→お酒・ご馳走→カラオケのコースがお休みコースに。
他人事とはいえ本当にお気の毒ですが、それでも苦痛から開放された喜びなのか微笑みと共に待機中のバス車内へ。

「お疲れ様でした〜〜!!」と帰るスタッフに「今日はご苦労さ〜〜ん」と応えながら窓の外に目を向けると寒そうな中にも春近し、を感じさせる柔らかな陽差しが。

そして、逃げなくてよかった。一仕事を終えた充実感がチラリと心の隅に。

(M.マウス氏)



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