ボクシングのゲーム、実写でボクシングのバナー(3)

石井広三

石井の試合は一度も東京では放映されていなかった。

雑誌でその戦績と気の強そうな眼差しを見ることがあっても

ネストール・ガルサVS石井広三

は筆者にとって
「無名選手の世界挑戦」だった。

我らが日本人ボクサーを応援する気持ちこそあったが
普段の世界戦よりも期待していなかったのも白状しよう。

世界初挑戦、初めて味わう緊張と興奮に
呑まれてしまうボクサーが多いなか
この若武者は実に堂々としていた。

「ぶっ倒してやる…!」

気合が全身をオーラのように包み込んでいる。

開始のゴングから筆者は石井のボクシングの虜になった…

雑な強打者かとばかり思っていたが
正しいガード、正確な距離感、どっしりした重心…。

「これは決していい加減な世界挑戦ではない」

筆者は勝手な印象を深く反省し
石井の一挙一動に集中する…

硬そうな拳は迫力充分。
重い左右フックはガードの上からでも激しくベルトの行方を揺さぶった。

が、タイガーの異名を持つガルサも尋常ではない。
その危険な強打が石井の顔面に何度も叩きつけられる。
ダメージを蓄積させる嫌なタイプの拳だろう。

正面衝突を避けようとしない両雄…
にもよらず、相打ち気味の危険な場面は少ない。

「絶対に俺は倒れない。俺が先に倒す。」
お互いに相手の強打を認めた上での
ガチンコ勝負なのだ。

そして先に後退したのは王者ガルサだった。

石井のフックが連続してヒットするとコーナーから動けない。
「効いている!」
手応えを感じた石井はさらにペースアップ!

が、自ら選んだ至近距離に罠が待っていた…

王者の放つショートアッパーが何度も石井の顎を捕らえるのだ。
若い挑戦者はこのアッパーを完全無視して
がむしゃらに攻め続けた。

「もうすぐ倒せる!」

気負いから単調になってしまった攻撃は
ガルサのガードを叩くだけとなったが
延々と攻め続ける石井…

その精神力・スタミナ・タフネスは驚きの一言だ。
この一戦に賭ける石井の想いを感じた。

互角のまま迎えた最終R、
石井は力を振り絞って襲い掛かったが
防御がおろそかになった。

一瞬の空白にフックを被弾、石井は倒れる。

すぐに逆転を目的に立ち上がるが
もう体はダメージで動かない。
連打にさらされ、レフリー・ストップ…


この試合、勝者も敗者も最高に輝いていた。
負けはしたが石井の戦いぶりは感動的だった。

ダメージを抜いて再起して…次こそ
必ずベルトを巻ける、いや巻くべき男だ!


満を持して迎えた2度目の世界挑戦は
ボクシングの怖さを存分に知らしめる凄惨な試合となった。

ラウンド終了10秒前に鳴らされる拍子木の合図。

朦朧としていた石井は
その音を終了ゴングと勘違いする。

コーナーへ戻ろうとしたその瞬間、
相手の左右連打が立て続けにヒット。

「なぜ殴ってくるんだ?」

混乱した石井は次のラウンド、
強烈な一撃を受けてリングに深々と沈んだ…

会場の悲鳴と共に。


「俺が弱かった、ただそれだけです。」

試合後の石井は淡々と
自分の敗北についてコメントを残した。

「いつまでも続けても仕方ないし…」

引退を匂わせる発言から
相当なショックが感じられた。

あの強気だった男が
自信に満ち溢れた男が
心底、打ちのめされてしまった夜…


彼自身、理由を含め多くを語らないが
世界戦の2週間前に腰を痛めてしまったようだ。

シューズの紐も結べないほどの負傷。

万全の状態でもう一度、
彼の挑戦を見たくないですか?

俺は見たい!
見せてくれ〜!



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