ボクシングのゲーム、実写でボクシングのバナー(3)

川嶋勝重

長い間、川嶋は大橋ジムのエースとして実績を積み上げてきた。

デビュー戦からしっかりと国内で揉まれ、
逃げずにキチンと新人王戦エントリー。

決勝で名古屋の中野博(後の東洋王者)に判定負けした時が、
私が川嶋勝重というボクサーを初見した時だったと記憶している。

頑丈そうな体格ながら、当時から期待されていた中野のスピードに
やや空回りしたような試合展開で空振りも目立ったが、
決してその株をさげるような内容ではなかった。
(当時は中野に注目していたっけ…)


迎えた13戦目、対戦相手の名前は懐かしい名前だった。

ナパ・キャットワンチャイ

井岡と3度戦い、日本からベルトを奪ったタイのファイター。
川嶋の大橋ジム、大橋会長の持つベルトにも挑み、判定負け。

会長と縁のある選手を対戦相手に選んだ事で、
ジム側の川嶋に対する期待が感じられたし、
オールド・ファンに川嶋を紹介するような意味合いもあったと思う。

古豪を見事に5R終了TKOで退けると、
川嶋に対して茨の道が用意されていた。

白井・具志堅ジムの秘蔵っ子、名護と同時に売り出した
アマチュア界のホープ、長身の柳川荒士を7RTKO。

次に選んだのは誰もが避ける日本人キラー、ジェス・マーカ。
思えば、これが後の徳山戦への布石だったのかもしれない。

最後まで動く足、うるさいジャブ、立ったままの頭…

徳山との共通点が多いこのマーカは、川嶋のアタックを微差で退けるが、
川嶋の最後まで諦めない不屈の闘志に、時として弱気の表情も見せた。


飯田と激闘を演じたヨックタイをガツガツの痛そうな判定で下し、
強打の佐々木真吾とのボコボコの打ち合いも制した。
(見てる側は面白かったが、普通は持たないでしょ…。あの試合。)

頑丈な肉体があったからこそ、ハードワークをこなせた川嶋。
そして、劣勢でも決して諦めない不屈の闘志に我々は熱くなっていた。

ちなみに新人王戦を制した中野は東洋こそ奪取したが、
拳を痛めてしまい、世界戦線から脱落していった…


世界初挑戦となる徳山戦は、大方の予想通り
ジェス・マーカ戦と似た内容で判定負け。

我々にとっては予想通りだったこの一戦、
川嶋にとってはとてつもない手応えがあったようだ。

「次やれば勝てる。それも倒して…」

徳山との再戦で川嶋が世界戦1RKO奪取を演じたのは驚いたが、
ボディを打ちながら2歩前に出てのフックにマニアは納得。

初戦終盤で徳山のバリアをすでに破っていたのだろう。
あそこで倒さなくとも、あの日はいつか倒していたと思われる。

初防衛戦ではメキシカンから3度のダウンを奪い、判定で防衛。

ダウンは全てドンピシャのカウンター、その狙い撃ち精度には感嘆したが、
テクニシャン相手にポイントを取るという作業は、川嶋にとって難しいと感じさせた。


そして迎えた指名試合、オリンピックアメリカ代表プロ無敗のナバーロ。

「強い相手と早く戦いたい」

試合前にそう語った川嶋、かつて大橋会長も同じ発言をしていたのを思い出した。
それは無敗のリカルド・ロペスを挑戦者として迎えた試合の直前インタビューだった。


テクニックに勝るナバーロは表情もクールで世界初挑戦にも動じる様子もない。
スタイルも変化こそ少ないがノーモーションのストレートがまた伸びる。

初回の一発目を見たときに「こりゃ強い」とビビったと同時に、
数年前のリカルド・ロペスvs大橋とイメージがピッタリと重なってしまった。

接近すればどうだろう?とナバーロの穴を探す川嶋だが、
腹に穴が開きそうなボディフックで逆に強さを証明させてしまう。

そのインパクトポイントがまた正確無比。肋骨とベルトの間を何度もえぐる。

(タフな川嶋もいずれ倒れてしまうかも知れない…)

小刻みなヘッドスリップで直撃は許さないが、2Rには川嶋がカット。
4R、ロペスが大橋を倒した時間帯、唐突なラッシュで試合を盛り上げる川嶋。
あの悪い流れを無理やりにでも断ち切ろうとする、意地のラッシュに感じられた。


が、川嶋は私の想像以上に肉体も精神もタフだった。
近年稀に見る根性(この言葉使いたくなかった)、輪島や大場に近い境地だと思う。

解説陣はパンチなら川嶋とのコメントを残していたが、
私にはパンチ力も相手のほうが強く思えた。

川嶋の左フックは全てオープンブローで要するにピンタ。
派手な音こそすれど、ダメージは想像以上に少ないはず。

にも関わらず、川嶋はギアを上げ続け、大振り狙いを繰り返す。
時としてそのオーバーハンドが当たるが、体重が乗っていたか微妙な様子。

悲壮感漂うそのアタック、諦めない血だるまの男に会場の心が動いた。
賛否あると思うが、アニマル浜口氏の声援もとても熱かったと思う。

疲れきっているが、前に出る。更に手も出す。
打たれても「おりゃーー!」と声を出して更に前に出る。
 
無敗のエリートにとってそれは脅威だったのだろう。
確かに当てている、ポイントも取っている、そして何より効いているはず…

な・の・に・な・ぜ、こ・の・男・は・前・に・来・る…!?


判定結果を待つ間、いつの間にか拳を握り締め正座をしていた私。

120-109でナバーロ、点取りゲームのボクシングだから、これも有り得る。
が、二人のジャッジが示したようにアグレッシブだった川嶋のアタックは素晴らしかった。

これまで歩んできた茨の道、全てが血となり肉となりこの夜があった。

1/3にして年間最高試合?と思わせる熱いファイト。
勝利の瞬間、久々に声がでてしまいました。

よく言えば新撰組の近藤勇、悪く言えば熊のような風貌。
血まみれの男がインタビューで第一声、すぐに言葉が出ない。

「…、ごめんなさい。
また泣いちゃいました!」

俺、好きなんだよな〜。このギャップ♪




そして、試合後の大橋会長のコメントも良かった。

「エリートってのは、雑草に負けるものなんだよ…」



川嶋がダウンを奪いつつも微差で敗北、引退…。

が、引退宣言を撤回して挑むミハエルとの再戦、
技術的に取られた前戦だけに厳しい予想が目立つ。

体ごと打つ右ストレートは肩を相手の顔面にあらかじめ
近づけてからのノーモーションで最高の隠し球。

これまでなかったパンチなだけに、
大橋会長松本トレーナー含め再戦に賭ける意気込みを感じた序盤。

完全に取られたラウンドというのはなく、
頭の立ったミハエルに対して左フックも当たっていました。

が、これがどうしても興奮してくるとオープンになってしまう。

ミハエルは接近戦時に川嶋が、ガード姿勢のまま止まるのを見抜き、
中盤からは体の隙間に強打をズボズボ入れ始める。

ダメージを受けた状態でしたが、今度は接近戦でも手を出し始めた川嶋。

これが一定の効果を上げ、疲れ始めたミハエルに好打するも
やはり完璧に拳が返っていないため、なでるようなシーンも目立つ。

正直言ってダメージは溜まっていたと思います。
が、やはり川嶋は精神力が強い。

これまで私は「根性で勝った」などというのは、
技術で劣っているものが勝ったときの言い訳に聞こえていましたが、
ナバーロ戦にしろ前進し続ける川嶋の姿に心を打たれたのも事実。

そして、「もしかしたら…、逆転できるのでは!」と期待も感じさせ始めた10R。

限界を超えた状態にも関わらず教わってきた武器、
左フックと右ストレート、右のフックを混ぜつつ前進する男は
ジャブを受けたっていいという姿勢の時に横から打撃を受ける。

これで体のバランスが壊れ、全てギリギリで保っていた
ファイターとしての肉体が破綻してしまった。

スリップ判定だが、誰が見ても感じられるダメージ。

(一瞬にして坂本vs佐竹の悲劇が思い起こされる。
スリップ判定に激高した佐竹がフラフラしている坂本に
まともな強打を数発。前歯の部分が歯茎から折れるような
重傷を負ってしまった。難しいが、再開前にレフリーは
坂本の状態を一秒でも確認すべきだったと思う。)

コーナーに貼り付けられ、連打を浴びながら、
大きく口を開けて何かを叫ぶような川嶋。

あの男のことだ。
師匠に対して「勝てなくて申し訳ない」という気持ちを
あの連打の最中にいながらもう表わしていたように感じられた。

進退はまだ分からない。
ただ私は個人的に思います。

「この試合は川嶋のベストバウトだった!」

常に全力を出し切るこの男の試合は、我々に何度もこう思わせてくれる…



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