大橋秀行
「ミニマム級はつまらない」
最近ガチンコの影響でボクシングのファンになったある少年がこんな事を口にした。
詳しく聞いてみるとパンチが軽いのでスリリングを感じないと言う。
最終的には「ミニマム級でKOとかあるの?」と尋ねられてしまった。
チャナvs新井田の世界王座決定戦は見る者によっては
緊迫した技術戦だったかも知れないが、
この少年にとって退屈な時間だったようである。
が、この新井田は国内タイトルマッチでは
鈴木誠というタフなファイターを
アッパーで何度も倒しているほどのパンチャー。
決してパンチが軽い選手ではないのだが…
やはり世界の舞台で実力を発揮するのは難しいのだろう。
こんな時、ふと考える。
「この少年が初めて観るミニマムの試合が、
あの大橋秀行の試合だったなら…」と。
大橋のスタイルはそれまでの軽量級史でも異端だった。
どっしりとしたスタンス、体全体で撃つジョルト気味のパンチ、最低限のフットワーク…
そしてなにより、彼のカウンターは見るものを興奮させた。
昭和63年6月、2度目の世界挑戦
「張正九VS大橋秀行」(後楽園ホール)
この試合のカウンターは今なお目に焼き付いている。
張の連打を浴び、KO寸前になった大橋が最後に仕掛けていた罠、
右フックのドンピシャ、会場全体の息が止まるようなカウンター。
一方的に攻めていた張の体が大きく泳ぎ、後楽園のボルテージ爆発!
まさにホールは興奮のるつぼと化し、おおいに盛り上がった。
結果、8RTKOで敗れたのだが
その余韻はいまだ筆者の心に残っている。
その後、4連続KOで再起した大橋は平成2年、3度目のチャンスを掴む。
またも後楽園ホールで行われた世界戦は特別な意味を持っていた。
「日本人世界挑戦、連続失敗数 21」
重苦しい雰囲気の中、大橋はファンの期待を一身に受け、世界戦のリングに立った。
終盤9R、鮮やかなボディブローが決まり、王者が「うっ」としゃがみこんだ時は
あの試合を知っているボクシング・ファンとして涙が出るほど嬉しかった…
そのまま見事KOで勝利し、
念願の世界奪取、日本人の世界挑戦失敗ストップ
を達成したのである。
「バンザーイ! バンザーイ!」
「ありがとう、大橋!」
そんな声で後楽園ホールがいっぱいだった…
その後、2度目の防衛戦で強敵リカルドロペスに5RKOで敗れ
虎の子のベルトを失う。
周囲の声は「もう世界は無理」だったが、大橋はあえて再起ロードを選択する。
そして2年後には見事、大差の判定で2度目の世界奪取に成功。
不死鳥は蘇ったのだ。
日本の軽量級に一時代を築いた名ボクサー、大橋秀行。
彼なしでは日本の軽量級は語れない。
投稿
私は大橋VS崔漸煥の試合を
ホール北側 I列の中央よりで観戦してました。
でも試合が盛りあがりすぎちゃって、その時の記憶は途切れ途切れです。
ただ空気が普段のどの世界戦と比べて、大きく違っていたのは確かです。
最後のボディーで崔漸煥が倒れた。
でもそのカウントが歓声に消されていくつなのか聞こえませんでした。
が、そこへ自然発生的に観客のカウントが!
ホールの全員が「テン!」と叫んだ瞬間、レフリーが両手を交差…
みんな泣きましたよ。
(当時高校3年生だった)私より年上だろうお兄さん達や
知らないおじさんとホントに抱き合って泣きました。
ホールの全員が大橋も含めてひとつになった瞬間でした。
そのあと、誰がはじめたのか
「バンザーィ、バンザーィ」
と泣きながら皆がはじめました。
その後、どのくらいホールにとどまっていたか…
帰りの電車(2時間30分)では、
ずっと同じことを繰り返し繰り返し
話して帰った記憶があります。
またいつか、こんな試合に
そして、こんな選手に
めぐり合いたいです。
(投稿・プリンさん)
インタビューでいくら憎らしいことや
格好をつけたことを言っても、
応援したくなるのが大橋選手でした。
その裏にある努力や真摯な姿勢が
垣間見れたからです。
昭和63年6月、後楽園ホールでの張正九との再戦。
私は雛壇の席で観戦していました。
3ラウンド、大橋ダウン。
「あーあ」というため息がもれる。
しかし、あの逆転のカウンターが炸裂。
一気に会場の雰囲気が変わりました。
本当に「どよめいた」という表現がピッタリな興奮で包まれました。
結局、倒されはしたものの大橋への声援は止むことがありません。
「大橋、辞めるなよ!」と私は叫んだような気がします。
キャリアの後半こそ、フェニックスと言われた大橋ですが、
このころは「ひょっとするとこれで引退するんじゃないか」と
思わせる言動が多かったからです。
こんな強くて客を感動させる選手が他にいるだろうか?
でも、世界が取れるかは誰も分からない・・・。
そんな切ないイメージがあるこの時代の大橋は
今ビデオで見てもすごく魅力的です。
(投稿・三宅川修慶氏)
大橋選手が、世界取ったときバンザイコールをしたのは、私です。
後楽園ホール超満員3300人、消防法ちょー無視だよね。
立ち見の人が、階段にも座っちゃって
トイレに行くのに大変だったのをおぼえてます。
(投稿・常見孝氏)
大橋秀行は華のあるボクサーだった。
勝っても負けても格好良かった。
私は学生時代、学校が水道橋にあった影響で
よく後楽園ホールに足繁く通いました。
お金がなかったので世界戦は観に行けなかったけど、
張正九との第1戦以降の日本戦とノンタイトル戦は
すべて見に行った。理由はもちろんKOがあるから。
ボクシングにまったく興味のない友人たちに
大橋秀行の華麗さを力説し口説いて
手を引っ張って行ったものです。
連れて行った友人は皆、
大橋秀行のボクシングを生で観て感動していました。
専門誌で眼にした大口発言、とりわけ喜友名戦前の舌戦には興奮しましたね。
天才同士の一騎討ち。
正直、同時代のJフライ級の世界戦(張、柳)より面白かった。
判定は微妙でしたが…。
でも最初から判定の試合を望んでいた自分がいました。
今はジムの会長になられ、後進の指導に尽力されている大橋さん。
でも発言は相変わらず強気。うれしいなあ。
あなたのボクシングは本当に温かかったです。
(投稿・Kono氏)
私が大学生の時、後楽園ホールへ
その日本タイトルマッチを見に行きました。
今でもはっきり覚えていますが、その頃、
後楽園ホールで行われていた他の世界タイトルマッチより、
天才ボクサー二人によるその日の日本タイトルマッチの方が断然、
熱気に溢れていました。
「東京のファンは試合の価値がよく判っているな。」
と嬉しく思ったこともよく覚えています。
私は二階席での立ち見でしたが、
試合の終盤では客がそろって足を踏み鳴らし、
地響きと歓声で最高の盛り上がりでした。
ボクシングは50試合以上観戦しましたが、
間違いなく私の中ではNO1の試合でした。
ちなみに、試合後の私の判定は、
僅差で喜友名が勝ったかなと思いました。
家に帰って何度もVTRを見直したものです。
(投稿・駒沢氏)
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