7 月28日(月曜日)〜4日目:道東へ
クッチャロ湖畔キャンプ場→紋別→サロマ湖→網走→美幌峠→屈斜 路湖
雨の日
お約束の雨




 4時起床。天気予報どおりやっぱり小雨が降っている。

自他共に認める「雨男」の面目躍如 である。おいちゃんのツーリングは雨無くしては語れないのだ。
気温も依然低く寒いので、昨夜残しておいたご飯に味噌汁を混ぜて簡易雑炊(?)にしてあたたかい朝食をとる。
小雨の中、出発準備をするが、濡れたテントがええい、うっとうしい。

本当ならば乾かして収納したいが仕方が無い。
さっさと私宅をして東広島のライダーと、隣りにテントを張っていた初老の夫婦に別れを言い7時前に出発する。
出発  
天気は良くない・・・


今日の最終目的地は「屈斜路湖」である。昨日と同じく海沿いの道を、

「北風に追われ、南へ向かう〜、俺の行く先は、聞いてくれるな〜、
ひとりでいるより、二人のほうが〜、なおさら孤独な、時もある〜♪」(『喜望峰』より)

寺尾聡の歌を大声で口ずさみらひたすら南下。

45度  
北緯45度ラインのモニュメント。ほかは特に何も・・・。



走りやすいが特に何も無い道が続く。途中、小腹がすいたのでコンビニで菓子パンと野菜ジュースを買ってしのぐ。
場所によって小雨が降ったり止んだりする中をさらに南下。

昨日は「週末だから車が少なくて走りやすい」と思っていたのだが、どうも違うみたい。
羨ましいことに、基本的に「交通量が少なく、信号も少なく、道がよい」 のだ。渋滞という言葉 は、このあたりには存在しないのだろう。
まさに「ライダーの聖地」の北 海道である。


快調に、しかし何も無い道に少々飽きながらも10時ごろサロマ湖に到着。
道路では荷台に山盛りホタテ貝を積んでいる4トントラックとすれ違う。うーん、ホタテの香りがする。さすがサロマ湖である。
後日聞いたところによると、今年はホタテが大漁で一枚20円程度 なのだとか。マジ?チロルチョコと同じ値段っすよ、そ れ。
そのチロル、もといホタテの養殖を行なっているサロマ湖は、雨こそ降っていないものの薄く霧がかかっておりよく見えない。


一縷の望みをかけて「展望台に行ってみるか」とわき道に入ると、右目の端でなにか大きな鳥 が羽ばたいて来る のが見えた。
一瞬「トビ」かとも思ったが、どうも様子が違う。「おやあ?」と思い首を動かしてすれ違いざまに確認すると、なんと 「ワシ」の類ではないかっ!
独特の「ワッサ、ワッサ」と いった豪快な飛び方、そしてタカ類と比べちょっと長めの首。
テレビでしか見たことの無いフォルムが目前に飛び込んできた時には、

「にょほぉっ?!」

とびっくりして、思わずバイクがよろけてしまった。

危ない危ない。Uターンして種類を確認しようかとも思ったが、山のほうに飛び去ってしまったので残念ながら諦めた。
タカの類は広島でも見ようと思えば見られるのだが、「ワシ」の類は見ることが少ないので非常に興奮した。



 ラッキー、ラッキー!うきうき気分で

「よし、展望台へGO!」


と意気込んだが、そこはいきなりのダート路面。
北海道ではじめてのダートの洗礼を受けることになる。
途中までは締まった砂利ダートだったのだが、上に行くにつれ赤土の滑りやすい路面に変わり、しかもワダチも大きくなってきてセパハンのグースではかなり厳 しくなってきた。

「うーん、どおしようか。」 と躊躇したが、今更止めて下るような距離でもない。
「ええい、行ってまえ!」と相棒をトコトコ 走らせて着いた先は、

真っ 白の霧の海。

よっし、予定通り!(おい)

なんてこった、ガスっている。

展望台   霧のサロマ湖

一応展望台に上がるも当然見えるはずも無く、目の前には「霧のサロマ湖」が広がるばかり。3キロのダート走破の苦労は一体・・・。

「しかも、帰りも3キロあるのだな、これがまた。」とかブツブツ言いながら 出発準備をしていてふと隣の斜面を見ると、大きなフキが群生している。
「ああ、広島では見ないなぁ、こんなでかいフキ。」などと何気に見ている と、一定範囲のフキが折れている。

熊?
えーと、これってもしかして・・・↑


最初は「ばかな観光客が持ち帰り用に折った」と思って いたのだが、どうも様子が違う。
根元から折れているだけで持って帰った様子は無い。

おやあ?これってもしや・・・?

その周りの状況から見ても「何か大きな動物」 が車か何かに驚いて、急いで斜面を駆け下りた際にフキが折れたような感じでる。
大きな動物とは・・・鹿?いや、鹿なら足跡だけのはず・・・。
では・・・行き着くところはやはり・・・「熊」 ?。

不気味?


だんだん悪い発想になってきた。辺りは霧に包まれて、よく言えば「神秘的」な、悪く取れば 「薄気味悪い」状況である。
しかもこの山の中においちゃん一人だけである。

・・・はい!即座に撤収っ!

想像力豊かなおいちゃんはさっさとその場を去り、3キロの下りダートをさほど長 いとも感じず降りたのだった。



 さて、下ってみると霧は晴れている。
サロマ湖もいちおうその姿を見せている。みごとに「展望台へ上がった意味がない」 のだなこれが。

サロマ湖


しかしそこそこの天気にはなりつつある。常呂(トコロ)町を過ぎた辺りから今度は農作風景が広がり始めた。
道北には無かった風景。ジャガイモ、ソバ、ネギ、そして色づいた麦。すべてが本州とはスケールが違う規模で作られている。
「緑と金」のコントラストが目に優しい。

麦  ソバ

「はぁぁぁ、 北海道じゃのう・・・。」




とため息混じりにその光景に見とれてしまう。気温も少しずつ上がり始めている。



 ちょうど12時に 「網走監獄」へ到 着。まあ、とりあえず入ってみることにする。

アバシリ
強面の門番が。


もともと博物館の類は「好き」なのだ。中に入れば観光客もそこそこ多いが、嫌になるほどではない。
全体的にマネキンやジオラマを多く使った分かりやすい、丁寧な展示方法である。
しかもめちゃくちゃリアルで、たまに動いたりするので「うわっ!」 とビックリすること請け合いである。

裁判  労働  宿舎
裁判の様子                    労働の様子(マネキン)                 囚人達の宿舎

宿舎内  フロ
宿舎の中には看守がいます。(マネキン)      ア、アニキ。お勤めごくろうさまです!


風呂の風景を展示した所には、背中に立派な彫物をした人 (マネキン)が入浴していたりして面白い。


うーむ、技が細かい。 侮りがたし、網走監獄博物館!

北海道の開拓の歴史は、網走の囚人達を無くしては語れないことも、恥ずかしながら今回はじめて知った。道路整備や農地開拓に多くの囚人達がかりだされ、そ の途中で死んだ囚人達は、道路脇に埋められていった。寒さや熊などの野生生物に脅かされながら働いた人々の心境いかばかりだっただろうか。日本一、いや世 界一厳しかった監獄は、今はもう無い。


 網走監獄で1時間ばかりのお勤めを終え、無事出所した後に向かったのは、あの 「美幌峠」で ある。
ゆったりと曲がるワインディング。きれいな木立。頂上から眺める屈斜路湖の絶景。


最高じゃん!美幌峠!

写真でしか見たことがないけど・・・。
それはもう最高のロケーションにただ酔いしれるばかり・・・天気がよければ。

霧の海  あう
そこは霧(ガス)。そう霧の海だった。



ウエットの高速コーナー、(こわっ)おそらくはきれいな木立(見えん)、頂上から眺める「霧の屈斜路湖」 (摩周湖じゃないよねぇ)。
最高のロケーションのはずが、タダのその辺の峠道と変わりないもの となってしまっている。


「やっぱりこうか、そーか、そういうことか、分かったよ!」


などとよく分からないことを叫びながら峠を下る。
すると段々と霧も晴れてきて麓近辺はガスもなくなっている。
ハーフウエットのワインディングを、緑を横目に見ながらまあまあ気持ちよく走ることができた。これで晴れていたら!



さて、本日の宿泊場所を決める前にひと風呂浴びることにする。

場所は 和琴温泉。


観光地だが無料なのがいい。いいタイミングで4人のライダーと遭遇、一緒に入ることにした。


仲間


屈斜路湖水面と同じ高さの露天風呂。だだっ広く普通に観光客が来る中で、裸になって入るのは一人だとかなり度胸がいる。
まあ、入ってしまえばこっちのもので、首まで浸かりながら

和琴

「はぁぁ、 極楽だぁねぇ。」と、ゆっくり暖まる。



湯は硫黄泉。熱泉が自然に湧き出してくるので湖水で熱さを調整する。
石で作られた湯船には「藻」 が浮いていて、こんなに熱くても藻類が生えるのかとちょっとビックリ。
見た目はちょっと汚いが聞いたところによるとクロレラの一種 で、体に良いのだとか。
浮いている藻類の、何がどう作用して体にいいのかは不明だが。

一緒に入ったライダー達はこれからサロマ湖へ向かうらしい。あっちの天気情報を伝えてさよならする。
おいちゃんはすぐ隣のキャンプ場に泊まることに決定。これで風呂代は無料である。

屈斜路
さっそくキャンプの手続きをするが、雨こそないものの依然風が強く冷たいので場所を考えながらテントを張る。
夕食に買出し(今日はレトルトカレー)に行き、ついでに焼酎も買う。
6時ごろには夕食を済ませ、先ほどの露天風呂のすこし奥の森の中に、秘密の (?)温泉 があるとの情報を貰っていたので、
薄暗くなりかけの頃に探しながら行ってみることにした。


情報ではさほど歩かないとのことだったが、なんだか遠い。

あたりは段々暗くなる。懐中電灯はあるものの、熊が出るかもしれない森の中を歩くのは気分がよくない。
「あるこー、あるこー私は元気ぃー♪」と空元気を出 しながらもくもくと歩く。

どうやら和琴半島を時計回りに一周しているみたいである。

20分も歩いただろうかようやく秘湯にたどり着い た頃には汗だくになっていてあたりも真っ暗であった。

秘湯?

ようやく探し当てたお湯は、ヌルめで汗をかいた体にはちょうど良い。ココも同じく湯船に藻類が生えているようだが薄暗くてよく見えない。
(逆に見えないほうが良かったという情報も後で聞く。)

汗も流してさっぱりした後に再び歩いてテント設営場所へ向かう。
来た道を戻らずにそのまま進むと、5分もしないうちに最初に入った露天風呂へ着くではない か。
・・・つまり最初から反時計回りの道を歩いていればあっという間に着いていた訳だ。・・・まあ和琴半島1周というイベントが加わったと思っておこう。ちく しょう。


テントに戻ってみると、結構多くのソロライダーがテントを張っているが、風邪が冷たいのと強いのでみんな大 人しくテントでごそごそしている様子。
ひとりのソロライダーと話をすると、フライで釣りをしながら周っているのだとか。
なんて羨ましい!釣果を聞くと小川で20cmほどのヤマメが数匹釣れたとのこと。
おいちゃんも渓流竿を持ってきてはいるが、移動が忙しく竿を振れていない状況なのだ。ええのう。どこかで糸をたらしたいとは思うのだが。

明日の宿には例の民宿「とおまわり」を予約してみた。宿泊費はそこそこかかるけれど、これも話のタネである。
まだ寝るには早いのでテントの中で小説など読んで、ふと外を見ると、雲の隙間から星が見えているではないか。

夜
ランタンの明かりがそこかしこに。


さっきまで強かった風も若干和らぎはじめている。明日は晴れの予感が何となくするけれど、あまり期待はしないでおこう。
しばし星を見ているとおおきな流れ星が一つ。そして人 工衛星だろうか、星の大きさの明かりが一定のスピードで空を横切る。

・・・んー?でも、さっきまであの光は動いていなかった気がするんだけど・・・。

よく分からないがまあ、よしとしよう。焼酎を飲み干して寝ることにした。



空
何となく星も見えて・・・





本日走行距離 330.3km





7月29日編へ。

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