4時半起床。
さっそく5分ほど歩いて、昨日の露天風呂に入りに行く。
露天風呂にたったひとりが入り、朝霧のかかった屈斜路湖を眺められる最高シチュエーションである。
ちょっと熱めのお湯になっていたが目覚ましにはちょうどいい。
空には薄雲がかかってはいるものの青空が見えている。
よっしゃー!
今日は良い天気になりそうだ。20分ほど浸かりテントに戻って朝食をとる。
今朝は腹もすいているので豪華に袋ラーメン
にする。
今日のルートを頭の中であらかた決めながら、ぼちぼち出発準備をしていると、近く森で小鳥が囀りながらエサを探しながら飛び回っている。
時おり「ダララララッ」
とドラミングも混じっているので「おやっ」と思い、森に目を凝らすとキツツキの姿が見える。
種類を確認すべく望遠で覗くと、黒い体に紅い帽子。
なんと「クマゲラ」
が木をつついて小気味よい音を立てながら飛び回っているではないか!
うおっ!なんてラッキー!
まさかまさか、北海道にいる間に「クマゲラ」を見られるとは思わなかった。
今日は朝からツイている。今日は好調な滑り出しである。
すべて相棒に積み込んだ後に地図でルートを確定させ、出発時には久しぶりの太陽が顔を見せて、すこし寒いものの何とかカッパなしでも走れる気温になってい
た。
7:30に出発。
昨日通った美幌峠が見えていれば一旦戻ってみたいと思っていたが、まだガスがかかっている。
仕方が無いのであきらめて進路を摩周湖へ。これこそ「霧の摩周湖」と呼ばれる所だけに期待はしていなかった。
しかし摩周湖へ登る峠にはガスはかかっていない。
「ひょっとすると、ひょっとするかも!」
と思いながらアクセルグリップにも力が入る。
展望台の駐車場で相棒を止めるのももどかしく、展望台への少ない階段を小走りに駆け上る・・・。
目の前には巨大なカルデラ湖が不思議な青い色をたたえて広り、摩周岳もきれいに見える。
これはまさに「絶景」である。外輪山にある展望台から湖面まで200mの落差、水深も200m。
あまりのきれいさにカメラのシャッターを押す回数も増える。
いままで周ってきた他の湖が「霧の○○湖」
だったが、
初めて摩周湖に来てこの景色が見られればすべて帳消しにしてやっても良いぞ!
うむうむ!苦しゅうない。
暫くは見とれてしまって動きたくなかったが、「通」が行くという「裏摩周湖展望
台」 からの眺めも見てみたい。
きまぐれな霧が出てこないうちに峠を下り、小1時間ばかり走って先の展望台の湖を挟んだちょうど反対側にある展望台を目指す。
ここはさほど観光地化されおらず、人もまばらであるが、やはりとても良い眺めであった。摩周湖にはまさに「感動した!」の一言である。
・・・「出世できない」とか 「婚期が遅れる」とか、そんな小さいことにはおいちゃんは興味
ないのだ。たぶん・・・。
いくら綺麗だとはいってもずっと留まるわけには行かないので、摩周湖を後にして 開陽台へ
向かうことにする。
ここは穏やかな丘陵地帯をグルリ360度見渡せる展望台だが、期待通り見渡しが良い。
遠くのほうは若干霞んでいるが、広大な牧草地帯がパノラマで目に飛び込んでくる。
展望台下の売店で、普段は食べないアイスクリームを買って食べる。晴れた夜にくれば全天に星が見えて最高なのだとか。
なるほど確かにそうだろうなあ。しかしさすがに夜までいられないので30分ほどで出発する。
ここからは知床半島の北側を目指して、北上するルートを辿ることにする。
ときたもんだっ!
晴れていれば何でも最高の北海道ではある。
標津町から国道244号線を通り斜里町へ。そこからは海岸沿いに知床半島をなぞって走る。海も青いし空も青い。
バイクで走るにはちょうど良い天気ではあるが、服装はやはりTシャツにダンガリー、フリースにジャケットで昨日と比べてカッパが無いだけである。
7月下旬でフリースが手放せないとは・・・。どうやら北海道中はこの格好が定番となりそう。
海の近くで流れ落ちる滝「オシンコシンの滝」を見ながらこれからの予定を検討する。
天気が良いので、カムイワッカの滝まで行くのもいい。
しかしこれには途中からシャトルバスで行く必要がある。
知床五湖までなら相棒と一緒に行くことができるが、五湖すべては見られない可能性が高い。
半島の反対側の無料露天風呂「熊の湯」「セセキ湯」「相泊温泉」
に入るのならば、時間的に見てカムイワッカは難しい。
どうするか暫く迷ったが、結局知床五湖に行き無料露天風呂のハシゴをすることに決定。
やはり、相棒を置いて自分だけ観光することはできない。 (本当か?)
五湖に向かう途中に知床自然センターで軽く山菜ソバを口にする。
山菜ソバでタラの芽が入っているのには驚いたが、口の中に爽やかな香りが広がりとてもおいしかった。
そこから五湖へは20分ほどだろうか。
知床半島の深い自然の中、眼前に羅臼岳を見ながらワインディングを鼻歌交じりに走る。
五湖の駐車場に着くと結構な数の人がいる。まあ仕方が無いか。
ここでこのツーリングで、はじめて女性ソロライダーと遭遇する
。
ちょうど五湖を見終わってきたところだとか。
・・・くっ、一歩及ばずだったか。(なにが?)
その女性は今年9月まで仕事で北海道にきている鹿児島の人で、こっち(北海道)にいるうちにいろんな所を周るつもりなのだとか。
みればテントも積んでいるのでソロキャンプもするのだろう。たいしたものである。
「ちっ、今日民宿をとっていなければ・・・」頭の端で思ってみたり。わはは。
少しばかり旅の話をしてから「じゃあ気をつけて。」「お互い様に。」とサヨナラする。
本当にお互い気をつけましょう。
さて、五湖は案の定、すべて見られずに一湖・二湖どまりであった。
この時は単に「熊が出る可能性があるのだな」と思っていたのだが、後日聞いたところによると、どこかのカメラマンが熊の写真を取るために餌を撒いてしまっ
たのだとか。まったく呆れる話である。
ここは隣りにちゃんとしたホテルがあって、羅臼岳への登山者の宿になっているようであったが、その人達の視線をよそに堂々と入る。
我ながら他人の視線には強くなったものだ。
逆に観光客には「あー、人が入ってるよー。」
と評判が良かったりもする。
なぜか手まで振ってみたいとか。
これから温泉のハシゴをするのであまり長く入らずにさっとあがり、目前に羅臼岳を眺めつつ知床峠を越える。
遠くの山の谷間には万年雪らしきものが見える中、半島の南側にある 無料露天風呂「熊の湯」へ。
地元の人が多く、独特の方言が飛び交いとてもおもしろい。
少々熱いが地元の人と話をしながら入浴。親子連れの観光客などもいるが、子供にはかなり熱
いお湯 なので湯船に入れない。
とか言いながら他人に子供にザバザバとお湯をかけている。
子供は滝修行のごとく固まっている。うーん、すごい。北の男達はかっこええなあ。(?)
それはともかく、この露天風呂は地元の有志で管理を行なっているのだとか。
すばらしいことだと思い、少しばかりの気持ちを募金箱にチャリン。
ぼけ
てるけど。
峠をすべて下り、今度は海沿いの「セセキ湯」に行く途中に「ヒカリゴケの群生」
をついでに見ていく。
なんでも学術的にみても貴重なものらしい。なるほど蛍光色でぼんやり光っているのが分かる。
さて「セセキ湯」であるが、ここは「北の国から〜遺言〜」でジュンがトドの親父と一緒に入っ
た、波打ち際の露天風呂として有名になった所である。
県道が通っているすぐ下、昆布小屋の隣りにあり、湯船は道路から丸見えであるが、風呂を管理されている方に一声かけ、気にせず入ることにする。あと一時間
もすれば水没するタイミングではあったが入浴することができた。
波打ち際で入る露天風呂
はなかなか気持ち良い。ドラマ同様に雪に囲まれて入れば最高だろうなあ。
これも10分ばかりで上がり、お次は「相泊温泉」へ向かう。
ここは露天風呂とはいえブルーシートに囲まれて、湯船も一応男女別に分かれている。
地元の人がいっぱい入ってきたので5分もしないうちにとっととあがる。
露天風呂の雰囲気としてはセセキ湯のほうが良いが、もともと昆布漁などで働いた人達の汗を流す場所であるので、
一介の通行人が文句を言えるはずも無い。
お湯、ありがとでした。
ここから今日の宿「民宿とおまわり」
へ向かう。
羅臼の道の駅から2キロばかり中標津方面へ向かったところにあるこの民宿は、漁師のオーナーが経営されている。
当日はソロライダーが9人、車の方が3人ばかり集まっていて賑やかだった。こんなに集まることもまれなのだとか。
さて、7時から始まった「ウワサの夕食」
。このために昼を軽く済ませていたのだが、食卓に並んだ料理を見て
おいしくいただいていると、さらにオカズの追加、追加、追加、追加、追加・・・。
魚中心の海の幸が「これでもか」というほど出てくる。しかも終盤は揚げ物中心。
民宿の常連さん曰く「わんこ揚げ」
なるほど、言いえて妙だ。後から後からくる料理に、ビールはもちろんご飯など食べている余裕などいっさい無い。オカズにメインで食べていくしかないが、不
本意ながら食べきれずに残してしまうことに。
うーむ、食卓に並んだ料理は、どんなものであろうともすべて残さないのがモットーだったのだが、これには参った。ごめんなさい。もうしません。それでも、
完食者は3人いたことにはちょっと驚いた。スバラシイ。
食事の後は、当然のごとく酒盛り
へ移行する。
このタイミングで蟹が出てくるのだが(いつもあるわけではないらしい)さすがにすぐには食べられない。
しかし、他の宿泊者と談笑しながら2時間もすると、目の前の蟹に胃も騒いでくる。
満を持して焼酎をやりつつ蟹をいただくと、また
「こりゃー、うまい!」。
おーなーさん
漁で2日寝ていないというオーナーは、焼酎が添加剤となってテンションがは上がる。
同じく宿泊者もテンションもあがり、結局深夜の1時まで騒ぎようやくお開きとなったのでした。それにしても、お客さんを決して不快な気持ちにさせないオー
ナーの人格はすばらしい。なんでも、年に数回オーナーが本州に来るたびに、各地でオーナーを囲む会が開かれるのだとか。
・・・それも分かる気がする。
北海道入りして3日目にして、天気・景色・温泉・料理すべてが最高の一日を味わって幸せな気分まま眠りについたのだった。