4時半起床。
雨は昨夜どうにか止んだみたい。しかしテントは思いっきり濡れている
のでたたむ時が面倒。
やれやれである。いつものように今日のルート検索をしつつ、朝食を簡単に済ませて出発準備に取り掛かる。
雨こそ降っていないものの霧はかなり出ている。コインランドリーで乾かしたいつもの服装を身につけて、さらに霧対策でカッパを着込む。
相棒を起こして6時半過ぎに出発。
今日の最終目的地は富良野鳥沼キャンプ場だが、立ち去る前に一応「阿寒湖畔」へいってみることにする。
実は昨日まったく阿寒湖を見ていないのだ。(湖畔
キャンプ場に泊まったとはいえ、実際には湖を望める位置にはない。)
遊覧船発着場に行ってみると桟橋で釣りをしている人がチラホラいる。フライでニ
ジマスを狙っている みたいである。
ええのう。そんなのを見ると自分もやりたくなるじゃんか。それをぐっと我慢して、写真だけ撮って出発する。
暫くは霧や小雨の中を走り南西方面へ。
時間が経つにつれて次第に霧もはれ、日も差すようになってきたが、朝早いだけにまだちょっと寒い。
途中、牧場の景色が美しいと聞いている「ナイタイ高原」
に立ち寄ることにしたが、高原に上がるにつれてまた霧
が出てくる。
今回のツーリングは(も)こんなんばっかりである。
天空の城ラピュタを髣髴させる、霧(雲)の多さと、緑の鮮やかさ。・・・ほら、どこからとも無くロボット兵が・・・。
到着すれば案の定、 「霧の海」
である。駐車場には先客ライダーが1人。
やっぱり「霧の海」を目の前にして途方にくれていたので少しばかり話をする。
TZR250に乗るこの男性も、今日は自分
とほとんど同じルートを通り、美瑛の「日の山キャンプ場」に泊まる予定だとか。
「またどこか出会うかもしれませんね。」
と挨拶をして霧の中分かれる。気をつけてなー。
高原を離れ、下界に降りると霧も無くいい天気である。まあ、こんなもんだろうな。
青空が広がり気温も上がってきたので、糠平湖に行く前に途中のパーキングでカッパを脱ぐ。(とは言え、フリースは欠かせない。)
流して走るのにちょうど良い、気持ちのよい天気である。
気持の良い幾つかの峠を越えていよいよ三国峠
に向かう道へ入る。
白樺の森を横目に見つつ、交通量の少ない綺麗な道を軽快に走る。
その脇には清流が流れているので思い切って相棒を止めてチェックしてみる。
ちょうど良い流れにいい感じの渕
。竿を出すのには絶好のポイントである。
「よっしゃ!いっちょやってみるか。」
と竿と仕掛けを持ち、小道を川へ向かって降りていく。
少々ぬかるんではいるが「ハイホー!ハイホー!」
と、北海道ではじめて竿をだせるだけに足取りは軽い。
前方に水溜りを発見ーっ!しかぁし、十分飛び越せる大きさだぁ!
えーと、着地点は、っと・・・・
「んー?おやあぁ?」
目を凝らせばぬかるんだ地面に規則的な凹みがある。
大きさは人の手のひらほど。はっきりした形こそ崩れているものの、明らかに四足歩行
の大型動物の足跡 である。
えーと、これはつまり・・・「熊」だったりするのか、な・・・?
一瞬、「ぴきっ」と体が固まる。体の中で鳴る警告音!
「だはあぁーっ! 熊の生息地域だってこと忘れてたぁー!」
ゆっくりとあたりを見渡す。しかし、国道から20mも離れていないところでまさか足跡があるんかいな!
釣りに未練はあるが、命の危険を冒してまでもやるようなことじゃあない。
念のため「あるぅ〜ひ〜、もりのなか〜、くまさんにであった〜♪あははははー。」
(歌がミスチョイス)
と声を出しながら相棒のところまで移動して、さっさと撤収。
うーむ、ちょっとリアルに身の危険を感じてしまったなあ。
しかし、姿こそ見なかったとはいえ、ヒグマの存在を確認できたことで、また一歩北海道を身近に感じられた(気がした)。
さて、気を取り直して、三国峠頂上をめざし高速コーナーが続くワインディングをしばらく登る。
標高は1100mを越える峠であるが、霧も無く日がさして良い天気である。
グッドジョブ!!
こうでなくては!そして、頂上からのそこからの眺めは・・・
こんなところに住んだら目が良くなってしまう。
なんとスバラシイ!眼下に広がる原生林、遠くに連なる山々のパノラマ。
やっぱり北海道は晴れていればなんでもすばらしいのだ。
同じような風景をアメリカのヨセミテ国立公園で見たこ
とがあるが、感動はソレ以上である。
いいもの見たなあ。ナンマンダブ、ナンマンダブ。
写真を撮り今度は反対側へ下る。上のほうが雲に隠れてはいるが、
大雪山が見え隠れするいい景色の峠道。
峠をあらかた下ったところに滝があるというので行ってみると見覚えのあるバイクが駐車場に止まっている。
どうやらナイタイ高原で出会ったTZR250
である。
ご主人が見当たらないのでとりあえず滝の展望台へ階段で上がるが、この階段を嘗めていた。
まあきつかったこと。最近運動不足でもあるが、足がパンパンである。
汗だくになって展望台へ着いて写真を撮るが「銀河の滝」と「流星の滝」が二つ流れ落ちる様はなかなかである。
一息ついて下るとTZR250の持ち主と遭遇
。
「ああ、やっぱりまた会いましたね。」
「ほんとうに。展望台へはどのくらいですかね?」
「まだ結構ありますよ。きついですよ。」
などと声を交わし、一足先に相棒が待つ駐車場へ。汗を乾かしながらごそごそやっているとTZR250の主が戻ってきた。
「きつかったすよー。」
「・・・ですよね。」
三国峠が綺麗に見えてよかったことなど、少しばかり話をしてお先に出発する。
なんだか、またどこかで会いそうな気もするけど・・・。
山を下りきって平地を走る。
旭川に近づくにつれてだんだん交通量が多く
なりはじめた。
スピード感が道東・道北のソレに慣れきってしまっているせいで60km/h巡航でも「遅い」と感じるのう。
本州でみればこのスピードで流れればよいほうなのになあ。人間って贅沢な生き物だ。
少々いらつきながら旭川入りするが、交通量が多いのが嫌になって市内を通らずに、美瑛へ抜ける県道を走る。
とはいっても、やはりそこそこ交通量はあるので、暫くは車の後ろをついて走ることになる。
時はすでに午後1時になり、さすがに空腹感が大きくなってきた。美瑛で食事をすることにして目的地を探す。
場所は美瑛駅付近の「富川食堂」。ちょっとミーハーではあるが、ツーリングマップルにオススメ食堂として載っている食堂である。
評判の「トンカツ定食」を食べることにした。なんでもボリューム自慢だとか。ちょいと分かりにくかったが何とか店を見つけて注文する。
10分ほどして出てきた「トンカツ定食」には声こそ出さなかったが一瞬
「うっ!」 と不覚にもたじろいでしまった。
直径30cm近くはある大皿の半分がトンカツ、半分がキャベツの千切り山盛りというボリューム
である。
他にご飯、ワカメのスープ、おしんこが付いて700円なり。むう、確かにボリューム自慢をすることだけはある。
しかぁしっ!羅臼の民宿「とおまわり」で胃が大きくなっているのでこの挑戦は受けて立てる!
戦闘開始、ペース配分を考えながら箸を動かす。
トンカツも薄っぺらなものでなく、厚みがあって更にやわらかい。これは純粋に美味しいトンカツである。
15分ほどで米粒一つ、キャベツの千切り一本も残さず完食。完全勝利である。しかしこのボリュームはスバラシイ。
「とおまわり」がなければ、完食できたかどうかちょっと微妙な量であった。ごちそうさまでした。また来ます。
腹ごなしに美瑛の観光地をひとっ走りしてみることにする。(走るのは相棒だが)
セブンスターの木、マイルドセブンの丘、ケンとメリーの木、などなど。
有名地の近くは観光客が多く、ふらふらと道路に出てくるのでバイクで走るのが危ないくらい。
綺麗ではあるけれど、さして興味もないので(おい!)適当に写真を撮ってから、本日の宿泊所である鳥沼キャンプ場へ向かう。
ここはライダーやキャンパーには「北の鳥沼、南の霧島(宮崎県)」
と形容されるほど「濃い」
人たちが集まる所としてその筋では有名である。
なんでも、ほとんどそこに住み着いている状態のライダーやキャンパー達がいて、キャンプ場の管理人状態なのだとか。
一部では「雰囲気が悪い」と言う声もあるが、個人的には大変楽しみである。
富良野市街から少し離れたところにそのキャンプ場はあった。
予想より小さなキャンプ場には、確かに常駐者らしきテントが幾つもある。
テントではなくブルーシートを使ってほとんど「家」
と化しているものもある。うーむ、なるほどこれがそうか。と妙な納得をする。
そうはいってもスペース的には狭いわけではないので、適当に我が家を設置し荷物を置くことにする。
家の主の多くは、バイクで外出中のようだが、まったりとくつろいでいる人もチラホラ。
適当につかまえて富良野近辺の見所と風呂屋を教えてもらい、重い荷物を降ろした相棒と共に散策に出てみることにした。
まずは「北の国から」で有名な「麓郷」へ行ってみる。20分ばかり走って到着。
景色はさほど富良野近辺と変わりないが、町は「北の国から」一色である。
さして興味があったドラマではないが、観光の定番メニューとして押さえておく事にする。ドラマは終わって暫くはこの町も大丈夫だろうが、
何か他に「コレ」というものがないと山の中にある普通の町になってしまう可能性が大ではある所だと感じた。
景色は確かに良いのだが。まあ、余計なお世話ではある。
富良野展望台から・・・って市内は見えないね。
我が家へ帰る前に銭湯へ行って汗を流し、コンビニでオカズの「かに玉」を買って帰る。ついでにビールも。
ご飯を炊いて夕食を食べていると、そろそろ帰宅するライダーの数も多くなってきた。
完全にソロでテントにこもっている人もいるが、数人で集まっているグループが2つほどあるようだ。
自分の夕食が終わった後に、焼酎片手に
女性の声がしたほうのグループに声をかけてみた。
「どうも今晩は。話に寄させてもらっていいですかー?」
と声をかけると、
「どうぞ、どうぞ。」
と快く承知もらい、6人の輪ができた。
基本的にみんなソロで旅をしているが、このキャンプ場で知り合って今日のような宴会を毎晩やっているのだとか。
このグループで最長滞在期間者は、19日間滞在のキャンパーネーム「管理人」
。
他は皆、鳥沼に来て一週間以内とのことだが、北海道滞在期間はソレより長そうではある。
ブルーシートをタープ代わりにして宴会会場を作ったのは「ママ」
。(左手奥)
紅一点の「ばば」。(左手前)
だるまのような「おやっさん」。(右端)
一番若い「いっぺいちゃん」といった面子である。(右
中央)
酒のつまみも近所で買ってきたイカゲソやイカのキモを煮詰めたもの(珍味!)、
ミートボールのようなサイコロステーキ(?)に野菜炒めなどなど、多彩である。
話も「富良野へそまつり」の早食い大会にこのメンバーで参加して 景品の米10kgを貰ったこと。
また、コレをある程度減らさないと荷物になるので移動できないこと。
この鳥沼キャンプ場も以前はもっと長期滞在者がいたが、数年前に「ブルーシート(で家を作るのを)禁止」となったことをきっかけに
ライダーが激減したこと。(まあ、今もいるのだけれど・・・)
そのかわりに出稼ぎ(アルバイト目的)に富良野へ来て長期滞在する人が増えたこと。
「北の鳥沼」として名をはせたことから「俺は鳥沼デビューしてきた」などと言って他のキャンプ場で自慢する輩が出てきたこと。
その名だたるキャンプ場も来年には、ただの公園になってしまうことなど、あれやこれやと談笑
しながら時は過ぎて夜の10時に。
そこへもう一人常連メンバーが加わる。
なんでも十勝のほうの林道を走り、帯広の「六花亭」でケーキを買って帰ってきたのだとか。
(キャンパーネームは残念ながら忘れてしまったので仮に「林道
(右奥)」と呼ぶ。)タフだなぁ。
ソレをさかなにまたワイワイやっていると、いつの間にか12時近くになっていて、
さすがに他の常駐者から苦情がきたので
反省してお開きにする。
夜遅くまで騒いでいたことはたしかにマナーが悪いことなので素直に反省しなければならないが、
注意する言葉の中に「キミ達見ない顔だね。」
という言葉があったのが少し引っかかる。
少なくとも自分には「俺達長期滞在者をよそに勝手に騒ぐな」といったニュアンスにしか受け取れなかったし、他の皆もそうみたいだった。
管理者を気取るのは良いが、それならば皆が集まれるべきはずの中央のキャンプファイヤー場で、我が物顔に夕食を食べて他の常駐者と騒ぐのは止めて欲しいと
ころだ。(グループのもう一つがその集まりだった)
鳥沼キャンプ場のもう一つの評価として「雰囲気が悪い」というものがあることは先にも書いたが、やはり「常連顔」「管理者顔」して、ファミリーキャンパー
などがとっつきにくい思いをするのは十分にありうることだ。自分達も気をつけなければならないと感じた。(キャンプ場に長期滞在することはまずないだろう
が。)
ともかく、鳥沼のライダー達と楽しい夜をすごせてとてもよかった。明日もなんとか天気は持ちそうだ。酒も手伝って気持ちよく寝た。