8月1日(金曜日)〜 8日目:移動日、そしてハプニング
富良野→日高峠→苫小牧→支笏湖→羊蹄山→余市

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 4時起床。
簡単に朝食を取り他のキャンパー達を起こさないようにごそごそと出発準備をする。

あさ  うたげのあと
おいちゃんの寝床と、                               昨日の宴の後。


6時ごろになりあらかた準備が整ったところで、「管理人」が起きてきたので昨夜の宴の片付け を一緒にする。

片づけが終わった頃に「おやっさん」、「ばば」も起きてきたので、 今日のルートについて相談する。
到着予定地は「小樽、もしくは余市近辺でテントを張ることができる所」 が条件で各人ルート検索を開始。
しかしいずれにしても、ココから小樽方面は「コレ」といった名所もなくただ「移動」が主にはなるという。やっぱりそうなのか。
札幌を通ると渋滞に巻き込まれ大変なことになるのでパスしたほうが良いらしい。

今日の宿泊予定地は羊蹄山の麓、倶知安(くっちゃん)ということで落ち着いた。
管理人いわく「ライダーたちの道南のベースキャンプ」としての地位を確立していて、 ここも面白い人たちがたくさんいるという。
なるほど、そういうことならば是非行かなくては。
翌朝には小樽にいなければならないが、50キロ程度しか離れておらず1時間弱もあれば着く距離であるので、最終目的地をココにすることにした。


ルートはまず南下し、途中から日高峠を越えて西へ向かうことにする。
今後のみんなの予定を聞くと、管理人は今日の苫小牧発のフェリーで東京へ帰るが、 他のみんなは「ねぶた」へ遠征するのだとか。
しかもベースキャンプを鳥沼にしたまま。なんとまあ、バイタリティのある人達である。
「ねぶた」にも行ってみたいがソレはまた別のお話しである。

こ、これは


さて、おおまかな方向性が決まったのでさっそく相棒に荷物を積み込むが、駐車場には 「鹿の角」が付いたジュベルが止まっている。
「林道」のバイクであるがこれはいったい・・・。

おやっさんに聞くと「林道が 徒歩で知床半島を歩いて巡った時に、山中に落ちていた鹿 の角を拾ってきて付けた」 ということらしい。
うーん、知床半島を歩く、か。羨ましい気もするがちょいと怖い気もする。しかし、バイクと妙にマッチ していて コレはコレでよいかも。


 最後まで見送ってくれたおやっさんに別れを言い、富良野を後にして南下を開始する。
暫くはいつも通りの道をいつものように走るが、道東と比べては車の量が多いので幾分スピードも控えめではある。
道は確かに広くて走りやすいが、景色はさほどでもなく今まで見てきた「北海道の景色」というものに比べれば
「特に何もない」と思える景色である。

日高峠を越えたあたりで給油しついでにチェーンの張りを調整することにした。
実は3日前頃(知床近辺)からチェーンが緩みだして、富良野ではダート路面を走 行中にはチェーン脱落 という事態もあったのだ。
今や「たるたる」 のチェーンであったが、車載工具にはチェーンを調整する工具が無かったのでGSで工具を借りてやることにしたのだ。
リヤのハブボルトを緩めてスイングアームにきってある目盛りを頼りに、チェーンの張り具合を調整していく。
一応定石どおりの調整を終えてGSに御礼を言って再出発。


20分ほどは気付かなかったが、クラッチを切って惰性で走ると(エンジン音が小さくなると)

チェーンが「グロローン、グロローン!」 と聞きなれない嫌な音を発しながら回っている。

見ればリヤスプロケが微妙にブレながら回転 していてチェーンもそれに伴って不規則に動いている・・・。

「ぎょっ!どうなったんや、こりゃ?」

一瞬、思考が凍り付いてすぐ最悪の事態が頭をよぎる。

「ツー リングの終盤で、北の田舎の街中に相棒を置き去りにしてヒッチハイクで帰る・・・。


そんなん、いやじゃぁぁぁーっっ!!



やばい、やばすぎるぞ、これは!
さっそく路肩に相棒を止めて状態を見る。
良くはわからないがリヤハブにガタが出ていて、さっき張ったチェーンがそこに負荷をかけてるようだ。
このままではどうしようもない。1キロほど戻った小さな町の中で別のGSを見つけ、工具を借りる。
あらためてハブをチェックすると中のベアリングが損傷しているようだ。
スプロケが軸方向に2ミリ程度、回転方向にも少々ガタつく。

そういえば先に調整した時にも、ハブにガタが少しあったのだが余り気にしていなかった。
そこへチェーンを張って負荷をかけたので症状が悪化してしまったようだ。さて、どうしようか・・・。
とりあえずチェーンを再度緩めて試走してみると、異音は出ない。
チェーンのたるみとリヤタイヤの少々のガタつきさえ気にしなければ、以前と同じように走ることができるようだ。

・・・症状を知ってしまった以上、気分は良くないが、とりあえずどうしようもないので、広島に帰るまでは騙し騙し乗ることにする。
コーナリング中は特に気をつけなければならないが。スマン相棒、何と か頑張ってくれよ。
ついでに他の部分のチェックしてみると、エンジンからもオイルがにじんでいるようだ。
ショックからのオイル漏れも前にも増してひどい。いわゆる「満身創痍」の状態である。

まあ考えてみれば、このツーリングは一種の「耐久レース」 みたいなものだ。

ライダーと20キロ近い荷物を載せて、およそ90KG。これで常に時速100キロ近くで一日約10時間走るわけである。
しかもたまにダート路面に見舞われることもある。相棒にとっては過酷な旅である。
これまで良く頑張ってくれていることに感謝しつつも、再度鞭をいれて走らせなければならない。
お世話になったGS(ガスを一滴も入れないのに快く場所と工具を貸してくれた)に御礼を言って苫小牧に向けて出発することにした。

 オイルがにじんではいるが、エンジンの調子は割といい。
クラッチのつなぎを慎重に行なってリヤハブとチェーンに急激な負荷をかけないようにしつつ、アクセルは以前と変わらない開度で走る。

苫小牧に着いたら今度は北西に進路を取って支笏湖方面へ。
支笏湖あたりでポツポツと雨が降ってきて少し寒くなったので再びカッパを着込むことにする。
昨日は影を潜めていた「雨」がまた顔を出してきた。なんとも律儀なやつではある。
支笏湖を右手に見ながら倶知安へ向かう。霧はかかっていないが、曇天模様の空の下なのでさほど「綺麗だ」とも思わず、
写真すらも撮らず通過するのみとなった。


羊蹄山


2時頃には羊蹄山が見 える位置に到着。 富士山のごとき円錐形の綺麗な山で ある。
本日はじめて一眼レフカメラを取り出して記録用に何枚か撮る。まあ、倶知安に泊まるのなら凝った写真はいつでも撮れるだろう。
案外早い時間に倶知安についたので、足を伸ばして余市へ行くことにする。
目的はもちろん「ニッカウヰスキー蒸留所」 の見学である。日本初のウイスキーを生産した会社として興味がある。
ニッカの駐車場に着くとバイクが一台止まっていて、ちょうど持ち主が見学を終えて戻ってくるところだった。

なんと偶然にも今朝まで倶知安でキャンプを張っていた人で、キャンプ場の様子を聞くと、
「今日はキャンプ場のある公園でジャズ・フェスティバルがあって人がとても多くなるので行かないほうが良いかも」
ということであった、さらにいわゆる「面白い人達」の多くは例の「ねぶた」へと向かったとのこと。
この方も今日、函館発のフェリーで帰路に着くのだとか。

そうか、そういうイベントと重なってしまったか。


にっか1


どうするか考えながらニッカウヰスキーの蒸留所を見学することにした。
見学はガイドに付いて行く方法と、個人で見て周る方法があるが、最初はガイドに付いていくことにした。
30人ばかりの団体となってぞろぞろと動く。工場内の建物の位置関係上、製造工程順に案内してもらえないところが残念である。
1つのところで3分程度の簡単な説明をしながらさっさと移動していく。


ぽっとすちる
ウイスキーを蒸留するための釜「ポットスチル」。 これに注連縄が巻いてあるのはニッカならでは。


醸造過程は既に理解しているし、「ポットスチル」や「樽」の形状をしっかり見てみたかったので、早いうちに群から外れてひとりで見て周ることにした。
これでゆっくり試飲もできるというものである。
この見学コースで惹かれたのが、ニッカで醸造したウイスキー香りを10種類程度嗅ぐことができるブースと、
「ニッカ竹鶴10年醸造」を少しばかり試飲できるところである。

BAR?  BAR
お いちゃんにこのブースをくれーっ!!


特に試飲できるブースは「BAR」のようになっていて整然とウイスキーたちが並ぶ様は惚れ惚れしてしまう。
うーむ、家にこんなスペースが欲しいね。
試飲は50cc程度でまさに「舌の上を濡らす程度」のものであったが、ほのかに潮っぽい感じがした。
一度しっかり飲んでみたいウイスキーではある。


初代ウイスキー

日本産第一号のウイスキー。微妙に減っているあたりが気になる・・・。



見学コースを見終わった後にお土産品売り場と併設して試飲所も別にあったが、これからまだ相棒と行動をしなくてはいけないのでやめておいた。

駐車場であったライダーの話では、倶知安キャンプ場のライダー達が去年、この試飲所で 1.8Lほど試飲用のウイスキーをペットボトルに詰めて持って帰り、皆で酒盛りをしたことがあるそうだ。  
(もちろん常識外れの行動ではあるが、話としては面白い。)
そんなこともあって、今年からはニッカも警戒していて、ライダーの風貌をしている人には試飲をさせてくれないようになったのだとか。
酒気帯び・飲酒運転の類はもちろんのこと、「なんでもアリ」になってしまいそうなライダーの行動は厳に慎まなければいけないと感じた。

蒸留所の見学はニッカの他にも「サントリー白州」に行ったことがあるが、サービスというか見学コースの質からみれば「白州」のほうが上だった。「山崎」も 見てみたいし、メルシャンの「軽井沢」も見てみたい。ああ、おいしいウイスキーが飲みたいなあ。



 さて、本日の宿泊所を決めなくてはならない。
余市の海岸にもキャンプ場はいくつかあるのだが、この際小樽まで一度行って、テントを張れる所を探してみることにした。
40分程度走り、有名な小樽運河を横目にフェリーターミナルへ行ってみる。
トイレを借りてからターミナル内でキャンプ場案内等がないかとさがしていると、ライダーがひとりやってきた。
なんでも明日のフェリー便の混雑具合を確かめに来たのだとか。

雰囲気から見て北海道常連組 と判断し、これ幸いとこの辺に泊まれるような所はないか聞いてみると、
近くに24時間サウナがあるが、最近小樽の治安も悪くなってきているので、最悪バイクが盗られる心配 がある とのことであった。
実際この方も、以前そこに泊まった際にバイクに括りつけていたテントを盗まれたのだとか。
そんなこともあってか、今日は小樽と余市の間にあり、一泊二食2400円程度でいいものを食べさせてくれるライダーズハウスに泊まるらしい。
ライダーズハウスはまだ未経験だったので泊まってみたかったが、今回のツーリングはいささかお金を使いすぎている感があるので我慢する。

ターミナルの近くに臨海公園という小さな公園もあったが学生時分ならともかく、 いわゆる「普通の公園」に、この歳になってゲリラ的にキャンプするのもアレなので、再度余市に戻り浜辺の 無料キャンプ場にテントを張ることにした。
無料キャンプ場だけあって地元の家族連れがたくさんテントを張っている。
北海道ツーリングの最後の晩餐は、いつものメニュー(ご飯、味噌汁、サバ缶、ビール)にコ ンビニのサラダが加わり、
コーヒー酎のつまみに魚肉ソーセージ。


最後の晩餐
かっ 食らうぅぅ!!

「うーまーいーぞ おぉぉぉぉっ!」 (ミスター味っ子風)


おお、なんと豪華な夕食だ 。ライダーハウスに匹敵するぞ。(んなわけないって)



海を見ながらひとり食事をし、砂のマットレスに寝転がりながら持ってきた本をしばし読む。
暗くなってからも家族連れテントの子供達の騒ぐ声や、ロケット花火などが騒がしいので
「これならば倶知安に行って、ついでにジャズを楽しんだほうがよかった かも。」

と思ってみたりする。

昨日の鳥沼の宴を少し思い出しながらいつのまにか眠りについた。明日はいよいよ離道である。







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