蘭園訪問記その14 <望月蘭園>
2006年9月、前日の「ハタオーキッド」さん、「相模洋蘭園」さんに引き続き「望月蘭園」さんに向かいました。前日は行き当たりばったりのスケジュールでしたが、望月さんは前々から訪問を決めていた蘭園さんです。6時にはホテルを出て上野駅へ。 30分おきに発車する「特急スーパーひたち」を利用するのは前回と同じ。 社長さんには「上野発7時30分」(この電車に乗ると9時少し前に水戸駅に到着します)と事前連絡していたのですが、実は1本早い電車で水戸駅へ向かいました。たまたま1本前の特急に間に合ったということもありますが、午後の予定を立てていなかったので水戸駅周辺の観光名所を調べたかったのと、やはり帰りの特急の発車時刻を時間の余裕のあるうちに調べておこうと。 ただ、昨日の雲ひとつない天気とはうって変わって当日は朝から雨。 都心を離れるにつれて雨も止みましたが、上野を出る時には大雨による運転見合わせ表示も別路線で出るぐらい大降りの雨でした。日本三大名園の1つ「偕楽園」が意外と駅の近くにある事に驚きましたが、当日の天気では観光は無理。 しかしいずれは見学に行こうと思っています。
前回は売店以外の温室の見学から始まって最後に売店へと向かいましたが、飛行機の出発時間が迫っていたので売店内を見る余裕が全く無し。 なので今回は売店から見学させていただきました。売店に入って蘭とともに目を惹かれるのがセントポーリアとベゴニア。 特にベゴニアは今まで見たことが無い斑入り品種が多々陳列されていて、観葉植物ファンにとってもたまらない蘭園さんだと思います。しかし私の目はパフィオの方へ。 花が少ない時期に来た事はわかっていましたが、それでも売店内は各セクションの開花株が陳列されていました。
画像左が兄弟株を私も持っている Paph. Star Chaser (Gilbert
Blythe x Macabre)、右は Anne's Spice (Anne
Shirley x spicerianum)。 他にも hennryanum
'Alex' (残念ながらピンボケでした)、Harold
Koopowitz、niveum alba、Julia Bell (fairrieanum
x wardii) = Albino Strain などなど。 売店全体に目を移せばカトレア、コチョウラン、その他の属の原種・交配種、食虫植物等が展示販売されていました。
続いて「第三温室」へ。 奥行きが 60m を超える長い温室です。左の画像でグリーン筋花が咲いているのが見えますか? 写っていませんが、ベンチ右側手前ではデレナティーも開花していました。デレナティーは完全に狂い咲きだとおっしゃっていましたが、沖縄ではグリーン筋花もデレナティーも、狂い咲きでさえこの時期に開花することはありません。 しかもグリーン筋花はこれでも少ないという御言葉。 私はこの時期にシグマトの開花を見ることが出来ることに、ただただ驚いていました。画像右は同じハウスの奥に開花していた
Maudiae 'Prieta' と Maudiae 'Ebony Queen'。 この時期でも綺麗に色がのっています。
「こういう系統はうちぐらいしか持っていないから」と言われて撮影したのは
Paph. Randy Randolph (sukhakulii x hirsutissimum)。 ピンボケですが御勘弁を。 他に
armeniacum (またしてもピンボケ。 大輪だったのに・・・)も開花していました。狂い咲きとは言え、この時期に開花しているのが信じられない。
続いて「第五温室」へ。 第三温室に比べると奥行きは短いですが、CP,小苗、ブラキ、ポリアンサ、整形花などの親株を置いているハウスです。最初に目を惹いたのは画像右のパフィオ。 U/R
(Muriel Constance x micranthum) です。終わりかけと言うことでしたが綺麗な白色でした。
思わず「おおっ!」と声を出したのはオーキッドゾーンの
S. Gratrix 'Make My Day' を見た時ですね。 4輪咲き、しかも1つ1つの花のでかい事! Lebeau
もそうですが、10年以上も前の品種なのに色褪せるどころか迫力を感じさせるのは凄い! 私自身はオーキッドゾーンの
S. Gratrix を肉眼で見るのは初めてなので、とにかくテンションが上がりました。他にも
Wellesleyanum 'Sphynchus' BM/JOGA や supardii(花の画像は花芽付きで購入した
Dragontale のサイトの中に添付しています)、Houghtoniae
(haynaldianum alba x roths.) (またしてもピンボケ! 全く・・・)等、いろいろなパフィオが開花していました。
今回の訪問で望月さんに確認したい事がいくつかありまして。 忘れないうちにとお聞きしたのは「本州では
Mount Toro alba は開花しましたか?」、「U/R
(Lebeau x adductum) は開花しましたか?」。 残念ながらいずれも答えは「No」。 ただし、いずれも再来年の年明けには確実に花を見ることができそうです。そしてもう1つお聞きしたかった事。 「シグマト系で1ステムに2輪以上の花がつくのはどの原種に由来するのか?」 答えは「強いて言えば
lawrenceanum の遺伝子が強く発現する場合」というお答え。 ただ、株を充実させるとかなり高い割合で1ステムに複数の花がつくという言葉に納得です。
今回の購入でテンションが上がったのは花芽付きの
Dragontale (supardii x sanderianum)。 いつもそうですが、予期せぬ花芽付きを見つけると心躍るものです。もちろん兄弟株を持っていますが、花芽付きを見つけてしまっては手を出さずにいられません。 即購入です。あとはブログにて紹介した通り。 U/R (Norito Hasegawa x micranthum)、Carolyn Butcher (delenatii x Fanaticum)、Macabre、U/R (Makuli x Ruby Peacock)、Voodoo Magic、Wellesleyanum (x sib. 'Sturdust' x 'Chocodust')、Pedro's Moon (Pinoccio x armeniacum)、U/R (Raisin Glory x Mulyk's Macabre 'Tagara
Bounty')、Petula 'Red View'、Anne Shirley 'Idre Wild'。 これからも新しい交配の苗が出来次第、随時購入していく予定です。もう望月さんからはほとんどの苗を購入したと思ったのですが、Dragontale
以外は全て初めて購入する品種ばかり。 これからも魅力的な品種が出てくるでしょう。
2年半前の初訪問の時にも強く感じましたが、温室・売店内ともにゴミや雑草が全く無く、ハウスの中に枯れたままの鉢が置かれっぱなしになっていたり、雑草が生えている鉢も全く見当たりません。 基本的な事なんですが、栽培環境に対する配慮が徹底されているのを感じました。次回の訪問が早くも楽しみです。そしてこの場を借りて御礼を。 「硬質透明プラ鉢」に関しては御足労をおかけいたしました。早速使わせていただいております。どうもありがとうございました。
蘭園訪問記その15 <つくば洋蘭園>
2006年9月、今回の蘭園巡りで最後に訪れたのは「つくば洋蘭園」さんです。電車で向かう予定でしたが、ありがたいことに望月さんのお父さんに車で蘭園まで直接送っていただきました。飛行機は最終便でしたが6時には上野に着いていなければいけません。 と言う事はつくばさんの所は午後4時までに出なければいけないという事。 望月さんの所を出たのが午後2時前なので既に時間が気になり始めていました。感謝です。
これまでに本州の蘭園さんをいくつか見学させていただきましたが、1つの温室全てがパフィオで埋まっているのを見るのは大和さん、望月さん、そしてつくばさんです。画像左が蘭園入り口から見ると奥にある2連棟のハウスなんですが、2連棟全てがパフィオです(ただし、左側は親株が結構入っています)。しかもフラスコから出したばかりの小苗が多かったので、いったい株の総数はどれぐらいになるんだろうという数。 大和さんもそうなんですが、つくばさんもハウスのほとんどが整形花。 整形花コレクターにとっては1日いても時間が足りない温室の大きさ、そしてパフィオの数です。ちょ〜っと残念だったのは株のほとんどが番号のみのラベルだった事。 お尋ねしましたが、特にカタログやリスト類は作成していません。 社長さんが蘭園にいる時や時間に余裕のある時にしか個々の品種を確認することが出来ないのが少し辛い。 右の画像は入り口すぐ傍の2連棟のハウス。 切花用のカトレアがこの時期に開花していました。品種名は覚えていませんが限定メリクロン苗だそうです。確かに少々狂い咲きとはおっしゃっていましたが、冬にも咲く年に2回咲きのカトレア品種ということです。こちらでの購入株は
U/R (Lebeau 'Gouma' SM/JOGA x malipoense) 1株のみですが、とにかく整形花コレクターの方は一度訪れるべき蘭園さんですよ。
さて・・・、今年の蘭園巡りの旅も無事に終了しました。購入したパフィオは
20系統 23株。 4つの蘭園さんに御邪魔して
20株と言うのは少し物足りませんが、トランスバール交配を始めとした予期せぬ株に出会えるのが直接蘭園さんを訪ねる事の楽しさですね。 特に今回は「Snowman
x Transvaal」という思いがけない品種を購入することができました。そして
Dragontale の花芽付き。 それ以外もほとんどが今回初めて購入する品種。 やはり蘭園さんのバックヤードを見るのは面白いと感じた旅でした。
昨年末は蘭友と2人での蘭園巡りでしたが、今回は一人。 一人だからこそ出来る「行き当たりばったり」の旅でした。性格的にはむしろきっちりスケジュールを組む方が性に合っています。まぁ、今回のような旅もそれはそれで。 さて、来年は・・・?
蘭園訪問記その1 <望月蘭園>
2004年3月、格安チケットを利用して楽しみにしていた望月蘭園さんを訪問いたしました。上野駅から30分おきに出る特急に乗って三戸駅まで1時間強。
午前9時前に到着したのですが二代目社長さんが駅まで迎えに来てくれました。小春日和で3月にしては暖かかったのを覚えています。三戸市は道路が広く、しかも道路並木が凄い!
早速、1つ目の温室へ。 親株ハウスでしょうか、いろんな系統のパフィオ大株やオリジナル実生のトップ苗が、ぎゅうぎゅう詰めではなくゆったりとした間隔で栽培されており、株元までしっかり光が当たっているなぁと感じました。訪問する前に既に望月蘭園さんの苗を購入していてその株作りに感嘆していたのですが、1つ1つの株に十分光が当たっているからだと実感しました。望月蘭園さんを知るきっかけとなった
Wellesleyanum 'Chocodust' SM/JOGA も早速見ることができて感激し、その他にも、ポリアンサ系やブラキ系の大株、さまざまな実生苗が栽培されており興奮気味にハウスの中を見ていました。このハウスで、ホームページで公開している
Concon Bell、Rofei、Abebe Bikila、Lebeau x adductum、Mazinger、Star Chaser、 Warden x Macabre を購入いたしました。いくつかはホームページでも販売されています。
2つ目の温室はシグマト系がハウスいっぱいに栽培されている物凄いハウスでした。ちなみにここのハウスも1株1株がゆったりとした間隔で栽培されていました。サクハクリ、トーティペタラムの選抜株や交配種のセレクト株がハウスのあちこちで開花しています。ここで見た
Red Glory 'Crimson Halo' は強烈だったなぁ。 それをきっかけとして、その実生苗を購入しました。初めて見たトーティペタラムはステムが針金のように細く、しかも優に
50cm を超える長さなのに支柱で誘引していないんですよ。 聞くと、叢地内に自生するため必然的にステムが伸びるということでした。またサクハクリ(全て元山です)の中でひときわ目を引く大輪個体があったのですが、何人も予約が入っているとのこと。 こういうのを聞くと地元の利を感じます。仕方ないことですが。 他にも
Macabre、Ruby Mist、Saiun (sukhakulii x wardii)
など数え切れないほどの交配種が開花していました。社長さん曰く、Ruby
Mist は花が小さくてとあまりお勧めしないのですが、シグマト系を見慣れない私にとってはお気に入りの品種のひとつです。片隅にはパービ系が栽培されており、デレナティーや
Lynleigh Koopowitz、Fanaticum などが開花していました。ここで
Ruby Mist 'Jass In Salinus'、delenatii x sib.、Fanaticum を購入いたしました。
その後、飛行機の時間上、第三温室は見学せずに売店のほうへ。 そこで初代社長さん、奥さんと御挨拶をし、手作りのいなりずしを御馳走になりました。実は温室を回りながら帰りの飛行機の時間が心配になっていて、売店を拝見するのは全くできませんでした。残念です。駅まで送っていただく途中で寒梅祭りのための交通渋滞にぶつかり、予定よりも1本(つまり30分)遅れの特急に乗りました。社長さんは「1本遅れても大丈夫だよ」とおっしゃっていたし、実際に間に合いました。御心配おかけいたしました。3時間弱で2つの温室しか拝見できず、第三温室、売店を全く見ることができませんでしたので望月蘭園さんを見学するには十分に時間に余裕を持ったほうがいいです。
余談になりますが、帰りの車中でその頃は全く更新されていなかったホームページの話をしました。私のホームページでも書いていますが沖縄はパフィオを扱っている業者がほとんど無いので、リスト形式でも構わないので情報発信をして欲しいとお願い(というか懇願)いたしました。そのかいあって最近はどんどん更新をしてくれます。ありがたいことです。
望月蘭園さんに御邪魔した時にはデジカメを持っていなかったのが残念です。温室を回りながら本当にいろいろな話を聞かせていただいたのですが、それもあまりに多すぎて・・・。10年間栽培しても咲かないデルロシーやロス・アルバの各蘭園での開花状況、化学肥料内に含まれるホルモンの作用、サンデリアナムの栽培のこつ、などなど・・・。うろ覚えの事を書いて蘭園さんに御迷惑がかかってしまってはいけませんので、ここで書くことは控えます。
東京からはやや距離があり、余裕を持ってハウスを見学するには1日十分に時間を空ける必要がありますが、その価値のある蘭園さんです。シグマト系に興味のある方はもちろん、パフィオに興味のある方は是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。
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