「扉の向こうの青い空」 〜プロローグ〜
「間に合うかなあ…。」
携帯の画面で時間を確認しつつ、溜め息を付いて足を止めた。
もう、見えているのに…。
大きな交差点の向こうにあるファミレス、そこが今の目的地。
バイト開始の時間まで後10分弱。
なかなか変わらない信号。走って着替えて、時間足りるだろうか?
信号無視出来るほど細い道路じゃない。
大きな幹線道路が交差するこの場所は車優先で作られており、歩行者に不便なことで有名だった。
『変われっ 変われっ! 変われっ!!』
やっと、信号が変わる。黄色…赤、そして目の前の信号が青に。
「よし。」
思わず声に出ていた。
今日の講義の教科書やノート。貴重品などが入った重いバッグに携帯を突っ込み、肩に掛けなおしてダッシュ。
『うん、大丈夫。間に合いそう。』
取り合えず時間までに店内に入っていれば、着替えまで終わらなくても何とかなるだろう。
中央分離帯を過ぎた時、突然大きなクラクションと車体が迫ってきた。
キキキキキキーーーーーーーーッ
鋭いブレーキ音。
え…?
ドン。と何かがぶつかった衝撃。
気持ちの悪い浮遊感。
ごつん。
何か、硬いものに打ち付けられた感触。
…何?
イタイ イタイ イタイ イタイ
涙が出ているのが分かった。
薄れる視界の隅で、自分から流れ出た血が不自然なほど丸く広がっていくのが見えた。
サムイヨ
『 もう 死… 』
「いや。 死にたくない!」
『 …代価 』
「 何 ?」
『 等価交換 … 』
「 等価…交換… ?」
『ああ、 …そうさ… 』
「………。」
『死にたく、ないんだろう?』
「……… うん 。」
大きな扉が開いて、中から無数の腕が伸びてきた。 飲み込まれる?
「……やめてっ。…気持ち悪い!……」
捕らえられ、引きずり込まれた。
「いやーーーーーーっ」
一気に物凄い量の情報が、頭に叩き込まれる。
やめてーーーーっ、頭が 割れる!
ふわり、と浮き上がる感覚。
そして、今度は下へ下へと下ろされる。そのスピードは段々速くなり…。
いや、…落ちるっ!
ふ と意識が途絶える、その時。
「うわっ。」
「わー、何だ何だ!」
「ど……どこからっ?」
がっしりと受け止められた感覚と、人の声。
そして、ふわりと香る煙草の匂いにほっと身体の力が抜けて、意識を手放した。
20050609UP
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異世界トリップです。エヘ。
この話は実に長く長〜くなりますので、よろしくお付き合い下さい。