恋愛経験値 おまけ
愛しい身体を玄関から中へ押し込んだ。
ああ、もう。
大の大人がさ、3ヶ月だぜ。
付き合い始めてここで二人きりになれるようになるまで3ヶ月も掛かった。
まさか土方がこんなに純粋培養だとは思わなかったから…。
一緒にかぶき町の町中を歩けば、そこここから掛かる女の声。
そのあしらいだって慣れたもので…。だから、てっきり百戦錬磨の達人かと思えば。
キスをすれば、硬直し。
手を繋ごうとすれば、笑顔が引きつる。
やあ、マジ。嫌われてんのかと思ったぜ。
一人で空回りしてる気分なのが空しくて『別れよう』といった。
アレコレ言い訳がましく言葉を並べてふと気付いて土方の顔を見れば…。
今にも涙がこぼれそうだった。
俺が、泣かせてしまう?
慌てて前言を撤回し、ぎゅっと抱きしめた。
ちゃんと考えてみれば、俺らの間に遠慮なんか最初からなかった。
もしも土方が俺の事を嫌いならば嫌いと、言って不都合のある関係じゃなかった。
どうしても土方が俺の事を恋愛感情で好きにはなれなくても。俺の感情を拒絶したとしても、それで壊れてしまうような人間関係など築いては来なかった。
しばらくの間気まずくたって、すぐに以前の関係に戻れる。
その程度には、互いにその存在を受け入れていた。
そう、俺達の『腐れ縁』はそんじょそこらの腐れ縁とは訳が違うのだと。
だから、嫌々土方が俺の好意を受け入れる…なんてことがあるはずはなかったのだ。
けれど、俺の気持ちに引き摺られてOKしたのだと、そう思い込んでいた俺は。
土方の戸惑いや照れを、全て悪い方へ悪い方へと捉えてしまっていた。
俺は、多分臆病なのだ。
まともにぶつかり合うことよりも、逃げることを選ぶ。
ちゃんと喧嘩してぶつかり合えば。そりゃ、中にはそれっきりとなる相手もいるだろうけど。それまでよりずっと互いのことを理解できてずっと一緒にいられる存在になるかも知れないのに…。
きちんと向き合って付き合っていくことより、自分が傷つかない方を選んできた気がする。
けど、土方とは勝手が違った。
何せ、始まりが喧嘩だったのだから。
俺は、俺が他人とアレだけ喧嘩して、それでも一緒にいたいと思ったことなんざ今までなかったって事を、忘れちゃいけなかったんだ。
土方は大丈夫。
喧嘩したって、暫く会わなくたって。それで終りになんかならない。
そんな相手、きっと他にはいない。
だからこそ、大切にしなくちゃいけなかったのに…。
いつもののらりくらりでかわそうとして、危うく泣かせるところだった。
「………っ。」
小さく飲んだ息。
それを追いかけるように口付けた。
俺の万年床の上に座らせて、肩からするりと着流しを脱がす。
「っ、おい。」
「大丈夫。心配しなくても。」
「心配なんか、してねえ。……俺だけ脱がすな、お前も脱げ。」
「っ。」
ウブ何だか大胆なんだか。
着流しなんか、すぐに脱げてしまう。自分だけ裸になるのが恥ずかしいのは分かるけど、その際に出る言葉が『お前も脱げ』になるところが、想像の範囲を超えている。
外すのにコツのいるベルトを外していると、シャツのボタンに土方の手が伸びて一つ一つ外される。
素の表情であっけらかんとボタンを外す土方は、それが男を煽る動作なのだとは全く気付いていないのだろう。
ヤバイよ、こいつ。マジ天然だ。
最後まで俺の理性は持つのだろうか?
大急ぎで羽織っている着物を脱ぎ、ボタンの外されたシャツを脱いだ。
そのまま土方を抱き寄せて唇を合わせる。何度も何度も角度を変えて…。
キスをしながら、土方の背中や肩を撫でまわしていると。土方の腕がようやく俺の背中に回されてきた。
触れるのをためらうかの様に、指先で俺の背中にちょんと触れる。
少し強引に布団に押し倒せば、慌てたようにしがみ付いてきて…。そうそう、そうやって掴まっててね。
素肌同士が触れ合う感触が、気持ち良い。
「……や、……あ。」
耳元や首筋に唇を這わせれば、その極上の感触と甘い声に俺の方が先にいっちまいそうになる。
胸の突起を口に含めば、ぴくと体が震えた。
まさかこんなところで男である自分が感じるとは思わなかったのだろう。もう一つの方も指でいじれば、やめろ…と身をよじる。
やめるわけないじゃん。
思う存分指と舌で楽しんで、耳では掠れた甘い声を堪能する。
始めのうちは強張っていた身体が徐々に弛緩してきた。
そっと、唇を下の方へずらしていく。
女のものとは明らかに違うけれど、しなやかで滑らかな肌の感触を楽しむ。
「…っあっ。」
半ば立ち上がっていた土方のそれを、そっと手で擦りあげれば慌てたように視線が飛んでくる。
「や、何っ……して……。」
「ん〜〜、気持ち良いだろ?」
「やめっ。」
「もっと気持ちよくしてやっからな。」
そう言って俺は、土方のソレを口に含んだ。
「あああああっ。」
一掃高く上がる声。甘くかすれる声が俺を熱くする。
俺の髪に差し入れられた指。
始めのうちこそ、俺の口をソコから離そうとしていたけれど。徐々に指から力が抜けてゆき、むしろ強請るようにかき回される。
「あ……ん……。」
俺の舌や唇の動きに合わせるように、甘く上がる声。
即すように刺激を与えれば、ああっと高い声が上がって口の中に精が吐き出された。
「はあ……はあ……はあ……。」
荒い息を吐く土方を見る。
上記した頬が愛おしい。
そのまま、土方の両足を持ち上げて密部を露わにする。
「や……な…に……?」
土方が放ったモノを、舌でそこへゆっくりと塗りつけた。
再び甘い声が上がる。
「よろず…や……?な…に……?やめ……ああ……。」
この期に及んで屋号で呼ぶこいつに、ちょっと呆れるけど。
この行為を許してくれている…それこそが土方の気持ちの現れだと分かっているから。
丹念にそこをほぐしていく。
「ああ ん……ああ……。」
熱くなったそこに、指をそっと差し入れてみた。
ズブズブズブと難なく飲み込んでいく。
「や、あああっ。」
一層高く上がる声。
「気持ち良い?」
「そ……な…わけ……。」
「もう1本入りそうだよね。」
二本指を差し入れて、中でそっと動かせば。
全身がビクンと跳ねた。
感度良いね。
そんな姿見せられたら、俺だってそろそろ限界なんだけど…。
初めての体に無理はさせたくないけど、初めてだからこそ焦る気持ちもある。
早く繋がりたい…。
「体の力、抜いててね。」
「な……に?」
土方の足を抱えあげ、柔らかくほぐしたそこへすっかり準備万端だった俺の息子を挿し入れる。
「あああっ!」
途端に上がった悲鳴。今までの甘さを含んだ声とは違う。
「ご、めん。……ね、力、抜いて…。」
「あ……む…り……。」
奥へ奥へと挿入していた動きを一旦止める。
すると、はあ。と小さく溜め息を付いた。
「力、抜ける?」
「ん……。」
耳元で囁けば、ゆるりと土方の全身の力が抜けていく。
再び俺が腰を進めると、土方がしがみ付いてきた。
「全部入ったよ、分かる?」
「ん……。」
幾分ほっとしたように、小さく笑う。
ああ、もう。何て表情をするんだよ。
そんな幸せいっぱいの顔されたら、抑えられるものも抑えられなくなるんですけど…!
「そのまま背中にしがみ付いてて。」
「ん。」
ようよう土方の内壁がなれてきたところで、本格的に腰を振る。
俺の動きに合わせて、甘く土方の声が響く。
「ああっ、……あん……あ……ッ。」
いくら馴らしたって、慣れたって。受け入れる土方の方が体の負担もずっと大きい。
だから、背中に残された引っかき傷なんて、何でもない。
それだけ土方が夢中になったって事。
この行為が、互いに対等である証拠。
痛みと快感を分け合って。
熱と幸福感に包まれて。
俺達は、ほぼ同時に熱い精を吐き出した。
腕の中で眠る身体は、小さくも柔らかくもない。
それでも。
天然で、可愛くって、真直ぐに俺を見るその視線が潔い。
この世で一番愛しい俺の恋人。
20070804UP
エッチなシーンがエッチくさく書けないって重症じゃない?(後悔)
(07、08、06)