注:サスナルでBL有りです。苦手な方はUターンを。
さらに、設定かなりいい加減です。なんせ月子のナルトの知識は古本屋の立ち読み(!)とTVアニメだけですので。細かく覚えてません…。わお。
時期的には中忍試験前くらい。サスケは、ナルトがお腹の封印を気にしていて、どうやらそれが村の大人に嫌われている理由に関係しているらしいと、気付いています。
そんなんで良ければ…どうぞ、お楽しみ下さい。
手をつなごう。
それは、任務も終わり解散しようとした時に起こった。
あいも変わらず落ち着きの無いナルトが、前日の雨でぬかるんだ川岸から足を滑らせ川へ落ちたのだ。
彼がとっさに掴んだのはサスケの服で…。
「「うわっ。」」
二人は声を上げ、川に落ちだ。
普段は綺麗な川の水も、今日は茶色く濁っていた。
いつもより激しい水の流れに少しだけ流されて、やっとの思いで川岸へ這い上がる。
上がった岸もぬかるんでいたので、全身グチャグチャのドロドロになる。
「こん…の……。ウスラトンカチ!」
「そーよ、ナルト。サスケ君を道連れにしないで落ちるんなら一人で落ちなさいよ。」
「サクラちゃーん。酷いってばよ。」
「…いや〜、しかし見事な泥の塊だなあ。」
最後にのほほんとカカシが言う。
「はあ。」
思わずサスケの口から溜め息が漏れた。
この姿のまま、街中を通って家へ帰らなければならないんだろうか…。
そんなサスケにさすがに申し訳なく思ったのか、ナルトがにかっと笑った。
「ごめんってばよー。『危ない』って思ってつい手ぇ伸ばしたら、何かに触ってさ。とっさに掴んだらサスケの服だったんだ。」
あまりの悪気の無さに少し情けなくなる。
俺、どうしてこんな奴を好きなんだろう…。
その時、カカシがサスケの前に2枚の券を差し出した。
「しょーがない。これはお前らに譲ろう。」
「「?」」
ナルトとサスケが覗きこんだ。
「この森の先にある『大黒屋』って言う温泉旅館の宿泊券だ。」
「温泉!?」
ナルトが声を上げた。
「ここはな、上忍の福利厚生施設なんだよ。」
「はあ?」
「この券があれば、2名様1泊2食付無料だ。しかも、頼めば服のクリーニングもしてくれる。マッサージ、カラオケルームもある。部屋においてある飲み物はいくら飲んでも無料だ。」
「へえ〜すげ〜。」
ナルトが素直に感心する。
「でもさ、でもさあ。貰ってもいいの?俺らも使えんの?カカシ先生が行きたかったんじゃないの?」
「勿論お前ら下忍でも使えるぞ。まあ、行ければ自分で使うつもりだったんだが…。」
「あ、そうか。イルカ先生。今、風邪でダウンしてるもんな。」
「え、そうなの?」
サクラが声を上げた。
『成る程そういうことか。』とサスケは納得した。
現在カカシはイルカに猛アタック中らしいのだ。温泉に誘おうとしたのだろうが、うまくいかないうちにイルカが風邪をひいたのだろう。
それで、作戦変更。サスケに邪魔なナルトのお守を押し付け、自分はイルカの看病をして点数を稼ぐ気だ。…と言うことは。
「この券の期限は今日なんだな…。」
「そういうこと。」
カカシはにっこりと笑い返した。
「そのカッコで、二人で街中歩くのもどうかと思うよ。たまには上忍気分を味わっておいで。」
「…はあ…、分かったよ。ナルト、行くぞ。」
「えっ?サスケっ、待てってばよ。」
慌ててナルトがサスケを追う。
「あーん、ずるい。」
サクラも一緒に行きたかったと、膨れる。
「まあまあ、サクラ。あの二人。洗濯してくれる人、いないんだからさ。」
「あ……そ…か…。」
森の中を少し歩いて、程なく着いたその旅館は実に立派だった。
「ほえ〜〜〜〜〜。」
ナルトが情けない声を上げる。
サスケも声にこそ出さなかったが感心していた。
「さすがだな。…入るぞ。」
「う…ん…。」
ここへ来て、ナルトの歯切れが悪くなった。
「どうかしたか?」
「う…ん、…いや……。」
「?」
「サスケは行ってくれば良いよ。…俺、帰るから。」
「何でだ?」
逃げるかのように背を向けたナルトの腕をむんずと掴んだ。
「あの、……そ、そう。イルカ先生が心配だし。」
「カカシが付いてるだろう。」
「あ…の、そうだけど…。」
「とにかく入るぞ。」
ナルトをずるずると引き摺って中へと入った。
「いらっしゃいませ〜。」
出迎えの仲居に券を渡す。
「はい。カカシさんから連絡が入っております。服のクリーニングもですね。」
「ああ、頼む。」
「承知いたしました。ただ今、お部屋を用意しておりますので、先にお風呂の方をどうぞ。」
「分かった。」
示されたのは外から回るルートで、成る程この汚い格好で中へ入るなと言うことか。と言われたとおりに外から大浴場へと向かった。
「申し訳ありませんが、先によく体を洗ってから中に入ってくださいね。」
「ああ、」
指示されたクリーニングへ出す篭に汚れた服を脱ぎ入れ、仕込んでいた武器類は決められた鍵付きロッカーに入れる。
その頃には諦めたようにナルトも服を脱いでいた。
脱いだ服の下からはうっすらと渦巻き型の痕。
『ああ、そうか。』これを他人に見られたくなかったのだ。
「今なら貸切だ、早く入ろうぜ。」
「貸切?何でそんなこと分かるんだよ。」
「お前本当にバカだな。脱衣所に俺達以外の服がないだろ。風呂に入るときに服を着たまま入る奴なんていないだろうが。」
「あ、そっか。よし、入るぞ!!」
途端にスピードアップをして服を脱ぎ捨てる。
「先に汚れを落としてからだぞ!」
危うくどぼんと飛び込むところだったナルトを引き止め、体を洗わせる。
『俺は引率者かよ…。』
適当に済ませ、再び湯船に飛び込もうとするナルトをもう一度引き止め、泥の残る背中と髪を洗ってやる。
「も、もういいってばよぉ。……うわ、しみっ…しみるっ。」
「バカか、ちゃんと目を瞑っていろ。」
最後にザバーっと湯をかけた。
「良いぞ。」
「サンキュ、サスケ。」
金髪が目の前を横切る。
思ったよりもネコっ毛で柔らかかったその感触を思い浮かべつつ溜め息がこぼれる。
ナルトの面倒を見ていたので、自分の体は洗いかけだった。
椅子に座り、洗い始めると。すでに湯に浸かっていると思っていたナルトの声がすぐ後ろから聞こえてきた。
「俺も、洗ってやるってばよ。」
「…いい。」
「遠慮すんなって。」
無理やりタオルを取り上げると背中をゴシゴシと洗い出す。
仕方ないなと溜め息を付いて、自分は髪を洗う。
「流すぞ〜。」
「ああ。」
ぱりぱりと貼り付いていた汚れが落ち、やっとさっぱりとした。
「さー、入ろうぜ〜。お・ん・せ・ん・♪」
浮かれたナルトが今度こそ広い湯船にざっぱーんと飛び込んだ。
「やっぱいいよな〜、気持ちいい〜〜〜。」
もぐって頭まで浸かって温泉を堪能するナルトに苦笑しながらサスケも、『温泉なんてどれ位振りだろう』と。湯の中で手足をぎゅっと伸ばした。
「なーなー。サスケ〜。あっちのドアの向こう。露天風呂だってー、行こうってばよ〜。」
思いっきりおねだりの口調。
行きたければ一人で行けばいいのに、そうはせずに『一緒に』と考えるナルト。
先ほど、自分だけ先に湯船に浸からずサスケの背中を流したのだって同じ理由。
子供の一人暮らしという似たような生活をしているのに。自分とは違うそんな考え方が、大変な驚きで…そして好ましかったのだと思い出す。
二人で外に出ると、火照った体に吹き抜ける風が気持ちよかった。
「うっわ〜スゲエ。」
ナルトの声に視線を上げると、うっそうと茂る目の前の森。そして遠くの山々、そのふもとにある里。
それらが一望の下に見渡せた。
来る時に、なだらかな坂を随分登ったと思ったが。この旅館は随分と高台に建っているようだった。
20060806UP
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あの、本当に色々と適当なので。その場の雰囲気だけをお楽しみ下さい。