下肢切断の部位によって使用する道具や注意点の違いなどをまとめてみました。
  これからトライアスロンにチャレンジしようと考えている方には参考になると思います。
  ただし、これはあくまで一つの例です。障害には個人差がありますので、これらに
  拘らずに自分にベストな方法を見つけてください。

  これらの基準は、競技規則などに定められている訳ではありません。基準を設けよう
  にも完走された前例が少ないからです。今後多くの下肢切断アスリート達がトライアス
  ロンに参加する事で基準はできていくでしょう。
  よって、下記の説明はこのサイトの管理人の個人的な見解であることをおことわりして
  おきます。

  
※注・・・難易度の数字は、トライアスロンに参加するのに一番困難な「両大腿切断」を
       「5」としたときの各障害区分の目安です。
 


片下腿切断  タイプ 1
片足を膝の関節より下から切断。
片足のトライアスリートと言われる人達のほとんどがこの区分にあたる。
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難易度・・・1


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スタート前 スタート地点まで義足で行く。あとは外して誰かにスイムフィニッシュ地点まで
運んでもらう必要がある。同行者がいない場合は、大会本部に事前に言って
おけば運んでくれる。
スイム スイムは下半身はあまり使わないので問題ない。義足は外して泳ぐ。
トランジット スイムフィニッシュで義足を装着し、自分のバイクがある所定の位置まで行く。
海で泳ぐ大会は義足に砂が入らないよう注意。
バイク 義足を使用し両足で問題なく漕ぐことができる。立ち漕ぎも可能である。
義足はラン用・バイク用と使い分ける事が多い。
トランジット 義足側ペダルのビンディングの解放値は低めの方が外しやすい。
ラン 義足での交互走ができる。
近年の義足の進歩により、練習次第では健常者に近い走りが可能。




両下腿切断  タイプ 2
両足を膝の関節より下から切断。
両膝が残っているため義足でのバイク・ランが可能。
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難易度・・・2


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スタート前 スタート地点まで義足で行く。あとは外して誰かにスイムフィニッシュ地点まで
運んでもらう必要がある。同行者がいない場合は、大会本部に事前に言って
おけば運んでくれる。スイム用義足をつける場合はそのままスタート。
スイム スイムは下半身はあまり使わないので問題ない。義足は外して泳ぐ場合と
浮力のあるスイム用の義足をつける場合もあり。
トランジット 義足を外して泳いだ場合、スイムフィニッシュ地点に前もって義足を用意して
おかねばならない。スイム用義足の場合はバイク・ラン用義足に交換。
海で泳ぐ大会は義足に砂が入らないよう注意。
バイク 義足を使用し両足で問題なく漕ぐことができる。立ち漕ぎも可能である。
義足はラン用・バイク用と使い分ける事が多い。
トランジット ペダルのビンディングの解放値は低めの方が外しやすい。
ラン 義足での交互走ができる。
近年の義足の進歩と、両膝があるため比較的バランスの良い走りが可能。




片大腿切断  タイプ 3
片足を膝の関節より上から切断。
断端(切断した残りの部分)が長ければ、義足をつけてのバイクと
ランが可能。
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難易度・・・3


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スタート前 スタート地点まで義足で行く。あとは外して誰かにスイムフィニッシュ地点まで
運んでもらう必要がある。同行者がいない場合は、大会本部に事前に言って
おけば運んでくれる。
スイム スイムは下半身はあまり使わないので問題ない。義足は外して泳ぐ。
トランジット スイムフィニッシュからバイクラックまでは、義足で行くかクラッチで行くかは
その大会の地理によって使い分けた方が良いだろう。どちらにしろ
スイムフィニッシュ地点に前もって用意しておかねばならない。
大会によっては、バイクの乗車地点が決められていて、そこまでは押して
走らないといけない。
バイク 義足使用で両足で漕ぐことできる。立ち漕ぎも練習すれば可能である。
義足はラン用・バイク用と使い分ける事が多い。
トランジット 大会によっては、バイクの降車地点を手前で定めていて、そこで降りて
あとのバイクラックまでは自転車を押して走らなければならない。
バイク用とラン用の義足が別なら、ここで履き替える。
ラン 断端が長ければ義足での交互走が可能。短ければスキップ走になる。
クラッチで走る選択肢もあるが、体力の消耗を考えると義足で走る事を
お勧めする。




片大腿切断
(短断短)
 タイプ 4
片足を膝の関節から上、股下から切断。
片足でのバイク。クラッチを使用したランになる。
このサイトの管理人がここの区分。
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難易度・・・4


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スタート前 スタート地点までクラッチで行く。あとはクラッチを誰かにスイムフィニッシュ
地点まで運んでもらう必要がある。同行者がいない場合は、大会本部に
事前に言っておけば運んでくれる。
スイム スイムは下半身はあまり使わないので問題ない。義足は外して泳ぐ。
トランジット スイムフィニッシュからバイクラックまではクラッチで行く。
スイムフィニッシュ地点に前もって用意しておかねばならない。
大会によっては、バイクの乗車地点が決められていて、そこまでは押して
走らないといけない。
バイク 片足でペダルを漕ぐことになるため、立ち漕ぎはできない。
上り坂の多いコースは脚力勝負となる。
トランジット 大会によっては、バイクの降車地点を手前で定めていて、そこで降りて
あとのバイクラックまでは自転車を押して走らなければならない。
そこまではケンケンで走るしか方法はない。
ラン ランが5kmまでの短いスプリントレースなら義足をつけてのランも可能。
それ以上の長い距離になると、断短への負担や制限時間がクリアできなく
なるのでクラッチで走るしか方法はない。体力を削るランになる為、筋トレは
必須。




両大腿切断  タイプ 5
両足を膝の関節より上から切断。
この区分のトライアスリートは未だ聞いたことがない。
不可能ではないが、その努力と精神力は想像を絶する。
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難易度・・・5


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スタート前 スタート地点まで義足で行く。あとは外して誰かにスイムフィニッシュ地点まで
運んでもらう必要がある。同行者がいない場合は、大会本部に事前に言って
おけば運んでくれる。
スイム スイムは下半身はあまり使わないので問題ない。義足は外して泳ぐ。
トランジット 義足を外して泳いだ場合、スイムフィニッシュ地点に前もって義足を用意して
おかねばならない。海で泳ぐ大会は義足に砂が入らないよう注意。
足場が悪いので、義足とクラッチを併用した方が良いだろう。
大会によっては、バイクの乗車地点が決められていて、そこまでは押して
走らないといけない。
バイク 断端が短ければ普通のロードバイクは無理かもしれない。
ハンドサイクルなら問題なく乗れるが、大会本部への確認が必要。
トランジット 大会によっては、バイクの降車地点を手前で定めていて、そこで降りて
あとのバイクラックまでは自転車を押して走らなければならない。
ハンドサイクルから降りて義足を装着。補助にクラッチ。
ラン 義足のみでのランは難しいかもしれない。クラッチとの併用ならなんとか
いけるかも。




●基本として、トライアスロンは自分への挑戦であり、自分一人の力で制限時間内にゴールしなければ
 ならない。よって、競技中に他人の助けを借りた時点でその選手は失格である。これはルールブック
 にも記載されている。
 途中でパンクしたり、義足が壊れたりすることがあっても、自分で解決するのが基本だ。

 ランに車椅子ロードレーサーを使って走るという方法も考えたが、車椅子を使うことは他の選手より
 有利な条件になる。(車椅子のスピードは走るより速い)
 楽をするという事は、自分への挑戦ではない。不利な条件を承知でそれを背負い、それに打ち勝つ
 事で成長があると思う。

 これは個人的な意見だが、近年某TV番組で障害者をトライアスロンにチャレンジさせる企画を毎年
 やっているが、あれはトライアスロンではない。たった一人で参加して、過保護なまでのサポート
 体制、ルールや制限時間もなしというお涙頂戴の「筋書きのあるドラマ」に過ぎない。

 一般の大会のルールにのっとって障害者が自分に挑戦することに意味があるのだから・・・
 


これから挑戦する人達へ
あなたの選択した道は、困難な道かもしれない。でもやりたいと思うなら、ぜひ挑戦して下さい。
あなたが途中で諦めない限り、必ず達成できます。

なぜなら、世界にはたくさんの達成した人がいるし、これからも達成する人が出るからです。

あなたが最後まで頑張り通した時に・・・「情熱」と「時間」と「流した汗」の代償に・・・「鉄人」という
名の称号と、今まで経験した事の無い感動を味わうことができるはずです。

あなたのベストを尽くしてください。
                                                     〜サイト管理人