rhapsodie -- scherzo
ふわりと、体が軽くなった気がした。
視界はぼやけて、狭まってきて。なのに、軽い気がする。違う、意識だけが。体はまるで鉛のように重い。指先も ――― あぁ、やっぱり、動かすことはできない。体中が痛くて、そのくせ心臓の動悸だけが激しくて。
――― 死ぬのかな。
そう思っても、正直、恐怖なんてなかった。だって、この世に置き忘れたものはない。やり損ねたこともない。唯一あるとすれば、永倉さんに貸したままの本が返ってきてないことくらいだろう。
「いいか、。・・お前は生きろ」
さっき、俺が最後を見届けた、土方さん。あなたの最後の言葉に沿うことができなくて、ごめんなさい。一番隊隊長として戦いきれないままに、逝ってしまった総司さん。あなたに教えてもらったこと、上手く使えなくてごめんなさい。武士として切腹さえさせてあげられなかった、近藤さん。慕ったあなたの遺志を継ぐことができなくて、ごめんなさい。
それでも、自分だけ残ることがなくてよかった、なんていったら、土方さんも、総司さんも、近藤さんも。山南さんも平助も山崎さんも源さんも、みんな、怒りますか?それとも 馬鹿野郎って言いながら、それでも、笑ってくれるかな。口元が緩む。頬を温かいものが伝った。あぁ、俺、やっと ――― やっと、みんなに、あえますね。