「」
後ろからかかった声に、が振り返る。声の主は、日番谷にとっては初めてみる六回生の女子だった。そうしては彼女の名前を呼んで、彼女に向かって納得したように頷いて。
「ちょっとごめんね」
「・・・いえ」
穏やかな笑顔で一言断って、が声をかけた少女のもとへと足を向ける。そのためにふっと離された手を体の横に戻して、日番谷はの後ろ姿を目で追った。そうして、大きく眉を寄せた。馬鹿か、俺は と。
見入ってしまった。彼女の容姿だとか、声だとか、そういう表面的なものにではない。そうではなくて、それ以前の、もっともっと、大きなものに。彼女の持つ雰囲気に。オーラに。霊圧に。
見入らされてしまった。飲み込まれてしまった。
チッと小さく舌打ちをする。相手は、いくら飛び級ばかりの天才だとしたって、自分と同じ、この真央霊術院の生徒であることは違いがないのに。いくら、六回生の筆頭とは言えど、それでもまだ見習いの死神であるのに。それなのに。
それ以上の差を突きつけられたような気が、して。
目線の先のこの女 ――― が有名な理由を、日番谷はたった今、自分の五感でもって確認していた。そうして思う。グッと拳を握って。
(こんだけの女、噂になんねぇほうがおかしいな)
この気持ちは嫉妬なのか羨望なのか、それとも対抗心なのか。ただ、その気持ちのままに向けた視線が睨んだようなものになっていることくらいは、わかっていた。
→→next