自分の後ろから感じる、突き刺さるような視線に、は苦笑を浮かべた。溜め息をつかなかったのは、その視線があからさまな負のものではなかったから。その視線に含まれているものが、不快だと感じるものではなかったからだ。だから、別にいいかと思った。後輩にあたる一回生の筆頭である『天才児日番谷』の名前は、大袈裟なまでに肉付けをされて骨が見えなくなったような、そんなものではないようだ。そう思って、は小さく笑顔を浮かべる。
「なに笑ってんの?」
その様子に、同じく六回生のが声をかける。その手には、がに声をかけた原因である番号の書かれた札が収まっている。一回生と六回生のペアを明確にさせるための、札だ。の手にも、一と書かれた札がある。その札をひらひらと揺らしながら、が笑った。
「私のペア、例の『天才児』君なんだよ」
揶揄するように言った『天才児』という単語に、すぐに思い当たったうようにはちらりと例の人物を見る。
真っ直ぐにに視線を向けている彼、日番谷冬獅郎は、今のこの学院ではの次に有名ではないかというような一回生の少年。まだまだ背格好は子供だけれど、それでも綺麗な銀髪と、強い目が印象的だと、誰かが ―― 確か、そう、一回生を見物しにいった同級生が ―― 言っていた気がするのだけど。
そしてそれは本当だなと本人を見ては思う。だからこそ、とペアだということが面白い、とも。学院で1・2を争う知名度の2人が、ペアを組んでいるのだ。彼らに視線を向けているのは、1人や2人ではなかった。
「張り合ったりしちゃダメよ?」
は飛び級で上がってきたために、六回生として過ごしている期間は他の同級生よりも少ない。それでも、その少ない期間で親しくなったは、表面には見えづらいが、が相当な負けず嫌いだということを知っていた。そんなの言葉には虚を突かれたようにひとつ大きく瞬きをいてから、ふわりと笑う。
「今日の私の役目は、あの子を守ることだよ。」
さすがにこんなところで競ったりしません、と面白そうに笑いながら、はいろいろな期待を込めた瞳を、ちらりと日番谷に向けた。
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