「・・・・・オ、イ」
いったい、なにが おきている?
目の前に、いや、この場合は俺の腕の中に、とでも言うのだろうか。そこに、女がいる。血で ――― そう、血で、濡れた女が。それは、今日ペアで実習をした、六回生の。有名で、さっき初めて言葉を交わした女で。
わけもわからず混乱する頭の中でただ理解できるのは、だんだんと広まっていく紅の 水と、それから、こいつの荒い息。耐えるように寄せられた眉。頭は回っていないのに、何故か心臓だけがイヤに脈打っている自分。そして、
「日番谷君!」
――― いや、この声を聞いたのは、少し前だ。
そう、実習中に、いきなり巨大虚が飛び出してきて。予想もしていなかった事態に、生徒が、特に一回生が逃げ惑う中で何とか応戦していた俺は、けれど余裕なんて少しもなかったために後ろの気配に気づくのが遅れて。
はっと気づいて振り返ったときには、既に斬魄刀で貫かれた巨大虚と、そして、ちょうど俺の前に立つようにして、 まるで俺をかばうみたいに 何かに体を貫かれていた、
「 ―――― ッ!!」
できるだけ体に負荷をかけないように、衝撃を与えないようにしながら、日番谷はの体をしっかりと支えて、名前を呼ぶ。けれど、その目は閉じられたままで、少しでも出血を抑えようと傷に当てた布はすぐに紅に染まっていく。
そうだ、それでそのまま、巨大虚は消えて、それと同時に、の体が後ろに倒れてきて、俺がそれを受け止めた。
血に濡れた、こいつの、体 を。 紅に濡れていて、その紅 だけが妙に 鮮やか で。
「早く四番隊に!」
いつの間にか駆けつけていたらしい死神が叫ぶ。その言葉に、日番谷はどくどくと血を溢れさせる傷から、の顔へと視線を向けた。これだけの出血のためか、健康的な色をしていた顔は白くなっていて。荒かった息は、だんだんと、けれど確実に小さくなっていて。死という文字が、初めてこんなにありありと頭に浮かぶ。
「・・死ぬな・・・・!!」
あぁ、そうか。
こいつは、俺をかばったんだ。
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