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七 |
| 「はっ!!」 紫さんの意味深な笑みから3日経ち、俺たちは何の変わりもなく、奄師匠から出された修行に明け暮れていた。ただし、それはレスカだけであって、俺には両手首、両足首に魔力制御装置が備えられたブレスレットがはめられていた。 紫さん曰く、召喚士は魔力で全てを操るものではなく、自然の力を汲み得て成るものだと言うこと。なので、自然の力を理解するまで、魔法使用禁止令が出ちゃったわけである。 奄師匠ははじめは物凄い反対していた。魔力で統べるはずの魔法を封じては修行に支障をきたすと。だが、結局は紫さんの迫力に負けてしぶしぶ承諾した。 「よっと」 ちりん…っ 俺が逆立ちをすると、俺につけていた魔力制御装置のブレスレットが鈴のように鳴った。袿姿の紫さんは俺が逆立ちするのを見ると、すっと人差し指を動かした。すると――― びびびびびっ 「んぎぎぎぎぎぎ〜〜〜〜〜?!」 いきなりブレスレットから低圧電流が流れてきて、俺は声にならない声をあげながらも、必死になって逆立ちを崩さないようにした。つーか崩したらペナルティを課せられて更にキツイことになるのだ。 「ほぉ…。これでも耐えられるか……ならば……」 ずぅんっ!! 『?!』 突然地響きが俺たちを襲い、俺たちははっと今までの動きをやめた。 「なんだ?!」 「俺は何もしてないぞ?!」 と俺が驚いているだけなのに、紫さんはいきなり潔白を主張し始めた。 別にあなたを責めてるわけじゃ…。 「長!!奥方様!!」 と焦った声で、黄金竜一族の一人の女官らしき女性が人間の姿で、十二単姿で入ってきて、一礼した。 「おう。藍(あい)か。どうした?」 「申し上げます。先ほど古の都東側より原因不明の爆発があり、青書殿が炎上、倒壊しました!!」 「なんだと?!被害の状況は?!」 「はい!!死者はなく、負傷者が女官10名、武官3名のみとなっております。幸い、あちらには警備の配置があまりされていなかったため、甚大な被害にはならなかったと…」 「そのようなことはどうでもよい!!犯人はどうした?!」 「それが犯人は…見当たらないのでございます…っ」 「なんだと?!」 藍の言葉に驚愕する奄師匠。その場の雰囲気が一気に緊迫する。 もしかして…っ!! 俺は考えるよりも早く、動き出した。 「洸流!!」 「たぶん、竣だ!!あいつは残りの災いを持ってきたんだ!!」 走り出す俺に、奄師匠とレスカも走り出して追いかけてきた。 どぉんっ!! 俺たちが屋敷の廊下を走って外に出ようとしている間に、またしても爆発が遠くから起きる。 竣っ!!絶対おまえの野望を消してやる!! 「洸流!!竣というのが災いの元凶か?!」 「うんっ!!竣が災いの元凶!!浮かべ!!」 ふわっ 俺たちは廊下から浮揚呪文を唱え、爆発音がする方向へ向かった。現場は建物が崩壊し、燃えていた。そして、燃え盛る炎から見覚えがある影が浮かび上がった。 「竣!!」 そう。俺たちを以前の事件で災いを生んだ元凶の竣。以前の姿のまま、そして、ベールをかぶっていた。 やっぱり…。竣が!! |
| 続く→ |