カタ……カタ……
 俺は北都共に枕の魔法騎士昇進試験を兼ねた仕事を終えた次の日、枕が発見した鉱石を持って刑部省に出仕し、刑部省内にある分析室で成分を分析をしていた。
「洸琉。どーだ?」
 と俺が手馴れた手つきでキーボードを打ち、パソコン画面を見ていると、北都がひょこんと覗き込んできた。
 俺はキーボードを打ちながら呆れて言った。
「未知な分子構造だけで特にこれといった特徴は無いみたいだよ。これで一儲けできるかと思ったんだけど、とんだ思い違いだったみたい」
「ふぅん。じゃあこれを学会に出してもあんま効果はないか」
「うぅ〜ん。頼みの綱はこの紅さんが残したこのディスクだけか。かなり古いタイプだけど読み込めるかなぁ〜」
 とそう言いながら、俺はディスクをロムの中に挿入した。その途端、パソコン画面にノイズが走る。
「おやぁ〜。調整が必要かなぁ〜?」
 俺はそう言いながらキーボードを素早く打ち、調整する。それを見ながら北都は鉱石を見て言った。
「しっかし、あの鉱石綺麗な色をしているけど、不気味さも漂ってるよな。何か嫌な予感がするよ」
「んなもんどーでもいいから、調整するの手伝ってよ」
「そんなこと言ってもそれはおまえがすることだろ〜。おまえが何とかしろよ」
 と完全に人任せな北都。その北都に対して俺は呆れて何も言い返さなかった。
 確かに北都の言う通り嫌な予感はするよ。だけど、この調節この機種に手馴れてない分かなり難しいよ〜。
 そう思っていると、ノイズが消え、画面にはすぐそこにある鉱石が映し出された。
「おおっ!!やっと映ったな」
「みたいだね」
『……フキュラの森内に……あった竜神の遺跡B41Φポイントにて……鉱石を発見』
 とディスクは少々音が飛んでいるが、何とか聞き取ることができた。そのディスクのアナウンサー(?)は続けて言った。
『その……構造物は未知の鉱石だと……判明した。しかし……』
 ビーッビーッビーッ
『?!』
 と言いかけたそのとき部屋中に警告ランプと警告音が鳴り響く。俺たちははっとなり、席から立ち上がり鉱石のほうを見た。それと同時に安置されていた鉱石が急に変形したのである。
 変形した?!これ、ただの鉱石じゃない!!
 そう思った瞬間、傍にあったレーザー光線が勝手に動きだし、その鉱石目掛けてレーザーを発射してしまった。鉱石はそのレーザーを吸収し、更に形を変形させていく。そして、俺たちが息飲む暇がない内に、その鉱石は目の前から消えてしまったのである。
「消えた?!」
 と当然ながら驚く北都。俺は驚愕のあまり、その場に座り込んでしまった。
 あの鉱石は一体何なんだ?
 そう思ったとき、俺たちがいる部屋に瞳姐さんが入ってきた。
「何があったの?!」
「それが…この間見つけた鉱石が消えちゃって……」
 俺は呆然としつつも何とか瞳姐さんに状況を説明した。すると瞳姐さんは俺がさっきまで座っていた席に着き、表示された画面を見て驚愕の声をあげた。
「?!二人ともこの鉱石どこでみつけたの?!」
「え?!フキュラの森にあった竜神の遺跡で……」
「これ、ただの未知の鉱石じゃないわよ。これは列記とした竜神人の兵器なの」
『兵器?!』
 と俺たちは瞳姐さんの言葉に更に驚愕した。すると、瞳姐さんはキーボードで何かを打ち込み、一息ついてその鉱石について説明した。
「あの鉱石はね、未知の鉱物に擬態して船内や室内に侵入。そして、中をまるでパズルのように部屋の位置を変えていく……。
 いや〜んっ!!瞳怖〜〜いっ!!」
 といきなり表情を変えて俺に飛びつく瞳姐さん。俺は思わず叫んで言った。
「だぁ〜っ!!いきなり真剣になったと思ったら、急に何の前触れもなく元に戻らないでよ〜!!鬱陶しい!!」
「だぁってぇ〜、本当のことですものぉ〜。あは☆このままあたしを守ってぇ〜んっ!!」
「イ・ヤ・だ!!!」
 と俺はきっぱりと断ると、瞳姐さんはぷぅ〜っと頬を膨らませて言った。
「もぉ〜。洸琉ちゃんたら恥ずかしがりやさんなんだからぁ〜。あたし、この先どうなっても知らないからね〜」
「あっそ。そう言っといて、何度も俺に飛びついてたの誰だっけ?」
 と俺はジト目で言うと、瞳姐さんはうっと後ずさりした。
「う…っ。人が弱いところを……」
「はいはい。二人のじゃれ合いはそこまでにして、一体全体どーゆーことか詳しく教えてよ。さっきの説明じゃちんぷんかんぷんだよ」
 と俺と瞳姐さんの間に北都が手を叩きながら割って入ってくると、瞳姐さんはすくっと立ち上がり、俺たちに画面を見るように指を指した。そこには不明の部屋が沢山表示されていた。
「え〜省内に未確認物体発生?」
「言ったでしょ。あの鉱石は移動する際に部屋の位置をパズルのように変えていくって」
「それがさっぱりなんだよ」
「分かったわよ。つまりこーゆーこと」
 とそう言いながら瞳姐さんはドアに近づき、IDカードを通し、オープンボタンを押すと、目の前は通路があるはずなのに、そこには格納庫が出てきた。そして瞳姐さんは再度ドアを閉め、再び開けると、今度は男子ロッカー室が現れた。そして何度も開け閉めを繰り返すが、現れるのは全て違う部屋だった。それを見て俺は目が回りそうになった。
「お腹の中引っ掻き回されてものよ。気分最悪……」
「なるほど。だからあの遺跡の構造もあんなへんてこりんだったわけだ。北都の嫌な予感見事に的中したね」
「こんなところで誉められてもちっっとも嬉しくないぞ。とにかくあの鉱石を見つけて壊さないと俺たちがやられちまうよ」
「どうやって見つけるの?!アレは目に見えない速さで移動してるってさっき言ったでしょ!!あたし達は超空間の檻に閉じ込められたのと同じなのよ!!」
「うげ〜。これじゃあ三日で日干しになるかも〜。一応武器とかジャンクフード類は持ってるけど」
「洸琉。その前にむちゃくちゃ問題があるぞ」
 と真剣に言う北都。俺はその意味が分からず首を傾げると、北都は少し頬を赤くしながら言った。
「……トイレどうするんだよ」
「あ。忘れてた!!」
「あたしはさっき行ったからまだ大丈夫だよ」
「そーゆー問題じゃないでしょーが」
 と自身満々に言う瞳姐さんに対して俺はツッコミを入れた。
「とにかく。ここでぼーっとしているのもなんだし、紅さんが残した資料を見て作戦を立てよ」
 と俺が提案すると、それに合わせるかのように俺達が持つ端末手帳の着信音がいっせいに鳴り始めた。俺達が慌ててスイッチを入れると、画面には刑部卿が映し出されていた。
『これより省内にいる全職員に緊急指令を出す。現在竜神人の遺跡により発見された、未知の鉱石に擬態した兵器により、省内は無秩序ならぬパズルと化している。全職員はその鉱石を発見し、速やかに破壊せよ。繰り返す。これより省内にいる………』
 なんで刑部卿がこんなことを……。あ、そっか。さっき瞳姐さんが打っていたことは刑部卿に鉱石のことを伝えたんだ。
「とまあ緊急指令が出たところで作戦会議といきましょう。とりあえず電力はなんとか生きているみたいだけど、しばらくしたらライトはつかなくなるわね。予備電力が出てももって4時間が限度かしらね。
 う〜ん。超時空を飛ぶ物体を捕まえるなんて無理かしら」
「瞳姐さん。ふりだしに戻ってる……」
「とにかく手分けして探すのが第一ね」
 そう言って瞳姐さんは何も考えないで、部屋から飛び出してしまったのである。俺は慌ててディスクの資料を自分のノートパソコンに転送するように設定し、北都と共に瞳姐さんの後を追った。
 はぁ〜。なんでこんな面倒なのが俺の周辺起きるんだろぉ。

 

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