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最終競技が終わり、そのまま閉会式に進んでいく。俺たち最終競技参加者は水着のまま参加させられることとなった。もちろん、上着を羽織っているが、この格好で参加するのというのはちと恥ずかしいものがある。
『最終競技は刑部省に軍配が上がり、最終結果の配点が判らなくなってきました。
勝利の女神が微笑むのはどのチームでしょうか?!
それでは、最終結果の発表です!!
五位は民部省、治部省、宮内省、式部省。四位は大蔵省、三位は兵部省、二位は刑部省。
そして、栄光の第一位はなんとか逃げ切りました!中務省です!!』
おおおおおおっ!!
アナウンサーに言われ、喜びの雄叫びをする中務省の職員たち。
負けた俺たちは、中務省にやる気のない拍手を贈った。
『それでは、優勝トロフィーと副賞の温泉付き豪華ホテルのマスターキーを天成帝自ら贈呈しますので、中務卿宮様、どうぞ壇上の方にお上がりください。』
と、アナウンサーに促されると、いつの間に着替えたのか、卿が着用する正装で壇上に上がる。
「ねえ、北都。宮様はいつ着替えたんだろうね?」
「さあ。大方宮様付きの着付け隊の皆様がやったんじゃないの?
噂では30秒で着付けをしちゃうって話らしいし。」
30秒で着付けしちゃうのか…。もしそうだったら、着替えるのは可能だな。
そう思っていると、壇上の上ではすでに贈呈が終わり、天成帝のお言葉を賜っているところになっていた。
「中務卿宮よ。よくぞ、刑部省を食い止め、優勝してくれた。
これで私もようやく我が息子から『父様』と呼んで貰うことができるぞ。」
そーゆーもんを普通こんな公の場言うか?!
俺は御所に戻っても、天成帝のことは『父様』なんて呼ぶつもりかかけらもない。せいぜい今のうちに喜んでろ。その喜びを一瞬で崩してやるわ。
「なんとも身に余るお言葉。やった甲斐がありましたよ。
なにせ、勝つために審判員と配点員を買収したんですから。」
『え?!』
宮様の言葉に職員全員の動きが止まり、宮様に冷たい視線が集まる。
買収…?
「おや?皆の者どうした?」
『みーやーさーまー!!!』
怒りが込み上げ、手をぽきぽき鳴らして宮様に迫る刑部省を先頭に他の省庁たちも宮様に迫る。
「え……?!ちょっと、王族に手を上げるつもりか?!そんなことをしたら懲戒免職だぞ!!」
『問答…無用!!』
こうして、宮様と巻き添えを食らう羽目になった天成帝は怒る職員たちにボコボコにされたことは言うまでもなかろう。
夕焼け空の中、宮様と天成帝の悲鳴が花開き、運動会の幕は閉じたのであった。
後日、勝敗の訂正があると思いきや、審判長曰く、「トロフィーが渡された時点でもう換えることができない」とのこと。
それを聞いた国民や他の省庁の職員の怒りの炎にさらに油を注いでしまい、怒りの矛先を中務省に向けられ、苦情の手紙や電話、メールなどが殺到して中務省の職員は休むヒマもないらしい。
俺は俺で賭けに負けということにされ、無理矢理刑部省の寮から東宮御所に移され、それでしばらくの間生活することになった。
あ〜いやだ、いやだ。 |