『さあ!!皆様いよいよ最終競技となりました!!これが最後のポイント獲得の競技です!!
 最終競技は天成帝のご希望で温泉我慢対決です!!』
 おおおおおおっ!!
 ぴゅーぴゅーっ!!
 アナウンサーが叫ぶと、観客も盛り上がって歓声を上げる。
 っていうか、運動会なのに……
『なーんで温泉なワケ?』
 俺も含めて参加者全員がそう呟いた。
『なお、今回は中務省と刑部省以外の省庁は事前のリタイアしてしまったので最初から中務省と刑部省の一騎討ちとなります。
 それでは参加メンバーの紹介です!!
 刑部省は、瞳=仁和選手、北都=大邑寺選手、朧=中澤選手、洸琉=新羅選手です!
 それに対して中務省は由紀=松下選手、沙羅=更級選手、彰=周防選手、そして今回は中務卿宮様が直々に参加します!!』
 おおおおおっ!!
 中務卿宮様という名が出たとたん、更に歓声の音量が上がる。
『では次にルールの説明します。
 全員既に着用していますが、水着を着用して入ってもらいます。
 勝負は温泉にいつまで入っていられるかを争います。お湯から出た時点で失格です。
 なお、今回皆様に入ってもらう温泉は、灼熱の都・フェルバーでは知らない人は誰もいない、あの“地獄温泉郷”から直輸入した水温50℃の温泉です。
 この温泉に一分以上入った人は誰もいません!!
 さあ、この中に記録を更新させる選手はいるのでしょうか?!』
 こ…この温泉に本気で入る気?
 俺はぼこぼこと泡が吹いている温泉に目をやった。
 見るからにすっごく熱そうなんですけど……。
『それでは皆さん入浴してください!!』
 ――――ちゃぷっ
「あ゛う゛…っ」
「あ…熱い…」
 温泉に足を入れるなり皆呻き声をあげた。
 しゃ…シャレにならんわコレ……。
「私がここで頑張らないと……私がお役に立てるのはこれだけです…から……」
 ごぽごぽぽ……
 自分に言い聞かせるように頑張っていた褐色の肌、尖った耳、薄ピンクの長い髪の沙羅=更科さんがのぼせて目を回し、お湯の中に沈んでいく。
「あ――っ!!沙羅―――っ!!」
「早く助けないと!!」
 と、瞳姐さんと由紀=松下さんがお湯から出てしまった。
 なので―
 ブッブーッ!!
 と失格のブザーが鳴った。
『のぼせた沙羅=更級選手を助けようとして、由紀=松下と瞳=仁和選手がお湯から出てしまいました。よって、沙羅=更科選手、瞳=仁和選手、由紀=松下選手は失格です。』
 ぶきゅっぶーぶーっ
「彰兄貴……そのアヒルのおもちゃと浮き輪は何さ……」
 俺は宮様の隣で浮き輪とアヒルのおもちゃを持って入浴している肩ぐらいまである金髪の白人の彰=周防に向かってジト目で声をかけた。
「あはははははっ!!」
と笑いながら暴れる彰兄貴。
「あちちちっ!!お湯を揺らさないでよ…熱いじゃないか……!!」
「あは…あははは……熱い…熱い……もうでますぅ〜!!」
 と散々暴れて湯船から飛び出てしまった。
「がくっ。我が部下ながら情けないぃ……。」
「よくできている部下じゃない。もう宮様一人だけじゃん。」
「うるさいな。おまえたちもさっさと出ちゃったら?じゃじゃ馬東宮にゆでタコさん。」
「なんだって?!」
「誰がゆでタコですか?!」
「でも朧、おでこまで真っ赤だよ。」
「う……うるさいなぁっ!!」
 と怒りのあまりにお湯から飛び出す朧。飛び出すもんだから水しぶきは俺と宮様にかかったものだから――
『うぁっちぃぃぃぃぃぃぃっ!!』
 お互い朧の水を浴びてしまい、熱さのあまり俺と宮様も湯船から一目散に出てしまった。
『お〜っと。最後まで頑張っていた中務卿宮様、朧=中澤選手、洸琉=新羅選手がお湯から出てしまいました。タイムの方は…おしいっ!!54秒です!!」
「今回のは引き分けですね。おや?そーいえば北都はどこに行ったんでしょうかね?」
「そういえば、いないね。
 も…もしかして…まだ湯船に残ってるんじゃ……北都っ!!北都っ!!」
「ん〜?ナニぃ〜?」
『はぁっ?!』
 まだ湯船につかり、平然としている北都に俺たちは目を丸くして驚いた。
「ほ…北都……熱くないの?」
「え?!ちょうどいいお湯加減じゃないの?」
「あ……あ…っそ……。」
『全員リタイアかと思いきや、刑部省の北都=大邑寺選手がまだ湯船に残っていました。気になるタイムの方はな…なんと、一分を越えています!!よって今回の温泉我慢対決は刑部省の勝ちです!!』
「だってさ。北都、もう出ていいんだよ。」
「ふ〜ん。それじゃあ失礼して…。」
 と何事もなかったように北都は湯船から上がった。
「北都…。本っ当に大丈夫なのぉ?」
 瞳姐さんは不思議そうに北都に尋ねると、北都は自分の体をタオルで拭きながら答えた。
「別に熱くないよ。沸騰したお湯に入っているわけじゃないんだから」
「そりゃ…まあ…沸騰はしてないけど……」
「ふぁ〜…あの温泉もうちょっと入っていたかったなぁ〜…。」
「だったら、フェルバーに行けばいいじゃない。」
「あ、そうか。瞳姐さんたまにはいいことを言うな〜。」
「『たまには』てナニ?!」
 北都が強調した言葉に怒りを隠しながら反応する瞳姐さん。
 それに気づいた北都以外の俺たちはそろりと後ろに退いていく。
 しかし、それに気づかない北都は余計なことをペラペラと喋り始めた。
「だって、いつもなら口からショタコンモードを大放出してるじゃないか。それが今日となってナイスアイデアなことしか言わないなんて、明日はきっと天変地異になるよ!!」
「な…なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ?!」
 我慢していた瞳姐さんがついに切れ、どこに隠し持っていたのか、鞭を北都に向かって振り回す。
「え?!ちょ…?!なんで怒るのさ?!」
 そりゃ、そこまで言われたら誰だって怒るって。
 北都は水着のまま、逃げ出しそれをハイエナのように追う瞳姐さん。
 あーあ。何やっているんだか……。
 俺たちは呆れながら二人の光景を見ていた。

 

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