HIV(ヒト免疫不全ウイルス)について
ウイルスは、直径が約 100ナノメートル(一ミリの一万分の一)の球状粒子で、レトロウイルス科に属するRNAウイルスです。ウイルスの粒子はエンベロープと呼ばれる脂肪からなる二重の外皮膜に包まれています。この外皮膜はウイルスが感染した細胞(CD4陽性細胞)の細胞膜であり、ウイルスが感染細胞から放出されるときにくるまって出てきたものです。表面の外側に突きだしているのがgp120(gは糖、pはタンパク質の略で、分子量十二万の糖タンパクを意味する)です。gp120に結合して膜を貫通しているのがgp41です。ウイルスが細胞に感染するときは、外皮のgp120がまずはじめに細胞側のレセプターと特異的に結合(融合)します。
外皮膜の内側にgag遺伝子から作られるp71とp24のタンパク質がウイルス粒子の骨組みの役割をしています。中央には二本鎖のRANがあり、その鎖にpo1遺伝子から作られた逆転写酵素がくっついています。
一般的に細胞はDNAが持つ遺伝情報を転写酵素によりRNAに転写します。HIVの特徴はDNAの代わりにRNAを遺伝子としていて、逆転写酵素のはたらきでRNAの情報をDNAに転写します。すなわち、HIVの遺伝子RNAは宿主細胞に細胞膜と融合して、コア粒子だけが細胞質内に入ります。細胞質内で逆転写酵素のはたらきにより二本鎖のDNAに変換された後、細胞の染色体DNAの中にすまして入り込みその一部として組み込まれます。細胞に組み込まれたウイルスDNAのことを組み込まれるまでのウイルスDNAと区別してプロウイルスと呼びます。プロウイルスは転写と翻訳により、ウイルスのタンパク質の合成、ウイルスの粒子の形成、発芽のステップを経て細胞の外に出て、ウイルスが複製されます。この再生ウイルスは新しい細胞に感染していきます。
HIV粒子の構造