とっておきの時間


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 レッド・ガーランドがプレスティッジに残した最後のアルバムWHEN THERE ARE GRAY SKIESにはSONNY BOYとかセント・ジェームズ病院などの楚々と弾くガーランドのバラードが入っていて大好きなアルバムなのだが、そんなものが全編占められていたとしたら、泣いて喜ぶか、逆に退屈で眠ってしまうかのどっちかだろう。
 バラードは感情過多になると恥ずかしい。ところが、ガーランドのように肩の力を抜くところは抜いてしなやかに弾き、ブロック・コードやシングル・トーンの硬質な音質で締めるところはカチッと締めて弾くと、これは極上なのだ。スピーカーから流れる音量というのは、必ずしもデカくなくてよいのだとこれを聴いて思った。寧ろ囁くような音のほうが楚々とした感じが増して良いのかも知れない。一音一音噛みしめて弾くガーランド。それと決して出しゃばらないベースとドラム。この組み合わせが成功したバラード集なのだと納得する。
 ハラハラと散る桜の木立の下にいるような、いや今は紅葉の季節だから銀杏や楓の枯葉がハラハラと散るといった方が良いのか、そんな風情で恍惚となる。そんな気持ちを起こさせるWHY WAS I BORN ?。いやもう全てこんな具合なのだから堪らない。
 とっておきの盤として、僕がジャズ喫茶の店主なら、たった一人のとっておきの人の為に鳴らそうと。自分とその客の呼吸だけが息づいている空間で、耳を澄ましているというような、そんなとっておきの時間を共有したいと夢想する。
 

RED GARLAND / THE NEARNESS OF YOU

RED GARLAND:p
LARRY RIDLEY;b
FRANK GANT:ds
Nov 30.1961
JAZZLAND
1.WHY WAS I BORN ?
2.THE NEARNESS OF YOU
3.WHERE OR WHEN
4.LONG AGO AND FAR AWAY
5.I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD
6.DON'T WORRY ABOUT ME
7.LUSH LIFE
8.ALL ALONE