EE MORGAN / INTRODUCING

SONNY ROLLINS/ WAY OUT WEST
SONNY ROLLINS-ts
RAY BROWN-b
SHELLY MANNE-ds
March 7 1957
CONTEMPORARY
SIDE 1
1I'M AN OLD COWHAND
2.SOLTUDE
3.COME,GONE
SIDE 2
4.WAGON WHEEL
5.THERE IS NO GREATER LOVE
6.WAY OUT WEST
      -------------------------------------------------
 ジャズは直感のアートである。直感が分析を超え、オリジナルな”歌”を読み砕いて飛翔始めると自ずと新たな”歌”を産み始める。そして自らがオリジナルになろうとすることであろう。このことを僕らは直感をもって感じると、「ジャズっていいな」と感嘆の声で賞賛することになる。
 名盤とはだから、このアルバム、あのアルバムのことではなく、「ジャズっていいな」を感じさせるものの総称だろう。
 
 いきなり途轍もなくいい加減なことを結論めいて頭にもってきてしまったが、S.ロリンズは最も「計算」や「分析」を感じさせずに、天衣無縫に飛翔していながら、実は高いところから演奏全体を俯瞰していたかのように、一幅の絵巻物のように絶妙な配置にフレーズを按配する天才だ。だからこそ、彼は多くの名盤に値する演奏を残してきたと言われる。そういうことが出来るのを「神業」と良く言うが、カミとは「迦微」ということで、いろいろな社に鎮座する「みたま」(御霊)であるらしい。
 それはきっと「かしこきもの」と言われてきたもので、尊いものや優れたものだけをあらわしているのではなく、悪しきものや奇しきものもふくんでいる。ようするに「すぐれてあやしきもの」、それがすべてカミなのだと、いつも愛読している松岡正剛の千夜千冊の小林秀雄の『本居宣長』のところに書いてあってほほーっと思った。
 人間の仕業がカミの域に入ってくると、人は恍惚として畏れ入る。これだなっと思った。何だかわからないが、とにかくスゲーっとなる境地だ。

 それを実感する1枚にこのWAY OUT WESTを今回あげた。
 S.ロリンズお得意のピアノレス・ワンホーンだ。ロリンズはオリジナル・フレーズから離れなくて、所謂意味不明の「空フレーズ」がないと良く言われるが、そのことは重要かも知れないが、オリジナルから飛び立って、止めどなく吹きながら新たなロリンズ節というオリジナルを創造するのに、基もとのフレーズが欠かせなかったからに違いないと思う。基を生かしながらもそこから飛翔する業が長けている。そこに何か訳もわからず畏れ入るわけで、それらをひっくるめて直感的に「スゲー」となるから名盤になった・・・というわけだろう。

 このアルバムの多分最も度肝を抜くのは、3曲目のロリンズのオリジナルであるCOME,GONEの演奏だろう。でも、この演奏があったから「名盤」となったわけではないだろう。そこがポイントだ。じゃあ、何だって答えを言っちゃったらジ・エンドになってしまう。アルバム全部を聴いて、フーッと溜息が出て、何だか言葉に出来ないけど、いいなって・・・。「すぐれてあやしきもの」ですよ。聴く側はノホホンとして直感で聴いていれば良いのだろう。分析してしまったら、ジ・エンドになる。というより、それで全てがわかったような気になるなるのは、ちと早い・・・というところではないだろうか。「一に多を見る」か「多に一を見る」か・・・そこが問題だ・・・てね。(*松岡正剛「千夜千冊」三浦梅園参照)
「美は見、魂は聞き、不徳は語る」青山二郎
続く)
 戻る