Keith Jarrett"Still Live"
Still Live

1.My Funny Valentine
2.Autumn Leaves
3.When I fall in love
4.The song is you
5.Come rain or come shine
6.Late Lament
7.You and the night and the music
8.Someday my prince will come
9.I remember Clifford











Keith Jarrett"Body and Soul"
Body and Soul

1.Bemsha Swing
2.Old Folks
3.Wooody'n you
4.Blame it on my youth
5.Gorden Earrings
6.Body and Soul
7.The Cure
8.Things ain't what they used to be



Tokyo '96 ECM

1.It could happen to you
2.Never let me go
3.Billie's Bounce
4.Summer Night
5.I'll remember April
6.Mona Lisa
7.Autumn Leaves
8.Last night when we were young .Caribbean Sky
9.John's Abbey
10.My funny Valentine Song












Keith Jarrett"Inside out"
Inside Out

1.From the Body
2.Inside Out
3.341 Free Fade
4.Riot
5.When I fall in love

        Keith Jarrett



Still Live ECM

Keith Jarrett (p) Gary Peacock (b) Jack DeJohnett (ds) July.13.1986

 長いイントロから入る"My funny Valentine"。美麗な旋律のテーマからインプロバイズに入って高揚する気持ちをぶつけた旋律が展開していきます。ピーコックのソロを挟んで再びテーマに戻りますが、後奏を取り入れて終わります。エヴァンスを意識しながらも自己の世界を展開する"Autumn Leaves"。テーマとインプロバイズが交錯する独自の手法。チャールス・ロイドとの時には見せなかったこのトリオならではの展開に唸ります。ここでも後奏が入って終わります。しっとりとしたテーマを奏でる"When I fall in love"。長い旋律を一気に弾くインプロバイズ。この曲はテーマだけに一気入魂すべしとでも言うかのような演奏です。さてこの盤最大に山場であろう"The song is you"の演奏です。実に17分弱の長尺演奏。演奏の善し悪しは長さではないというけれど、17分間緊張の糸は三者の間で切れずに展開します。もの凄い集中力に圧倒されます。ケルン・コンサートでのソロ・ピアノが1曲26分というのもあったぐらいですから、お手の物と言えばそれまでですが。聴く方も旋律をなぞっていく醍醐味を覚えます。ともすれば凡庸になる"Come rain or come shine"ですが、高級料理のごとく味付けされた演奏です。馴染みやすい旋律の展開をみせるアドリブ・ソロ。ジャズなんて別に難しく考える必要はないよと言わんばかりです。少し暗めの音階が並ぶ"Late Lament"。しかしサビにはいって希望が見えてくるようなメロディ。ピーコックも馴染みやすい美旋律を弾いています。エヴァンスを意識したであろう選曲の"You and the night and the music"。しかしここでもキースは独自の世界を展開しています。エヴァンスなんて眼中にないとでもいわんばかりです。これでこそジャズ・ジャイアントたるべき姿です。お世辞抜きに最大級の賛辞を送るべき盤です。


Body and Soul ECM

Keith Jarrett (p) Gary Peacock (b) Jack DeJohnett (ds) April.21.1990

 モンクの"Bemsha Swing"から始まる本盤。個人的には聴き所満載です。"Old Folks""Blame it on my youth""Golden earrings"といったところに注目したい盤です。さすが期待に違わぬ"Old Foks"。と出だしを聴いただけで賛辞を送ってしまいますが、しっとりとしたテーマ演奏です。"Woody'n you"の軽快な演奏に意外に刺激的な感動を覚えます。ヴォーカル盤とは違った味わいを持つ"Blame it on my youth"に更に感動します。ブラッド・メルドーもこの曲を"The art of Trio"シリーズでやっています。メルドー盤も秀逸な演奏でした。キースのここでの演奏は非常に輝きを持つ演奏です。殆どテーマだけの演奏ですが素晴らしい。さてレイ・ブライアントの演奏で超有名な"Golden Earrings"ですが、聴く者によっては50年代のブライアントの方が馴染みがあって好きだという方もおれますが、時を経てキースの手法を得た演奏もかなりのものです。この盤の山場"Body and Soul"。イントロに時間を取ってじっくり弾きこんでいます。こういう荘厳さをもったイントロの妙はキース独特なものです。約3分半をこれに費やしています。テーマに入っても軽くなることなくじっくりメロディをなぞっています。テーマを引き継いでピーコックがインプロバイズするベース、そしてキースのアドリブ・ソロ。変奏的なテーマ演奏と後奏ともいうべき荘厳な演奏にため息が出ます。7曲目のみキースのオリジナル。キースお得意のゴスペル・タッチ(?)な演奏です。これももうひとつの山場でしょう。オリジナル・タイトルはこちらの"The Cure"ですから。デジョネットがこういう時には本領を発揮します。いつもよりやや控えめですが、なかなかのドラミングです。そして最後はオールドなエリントンの曲「昔は良かったね」です。少し遊びが入って観客も粋な演奏に歓声を上げます。長いブルージーな旋律を一気に弾くあたりはさすがという感じです。

Tokyo '96 ECM
Keith Jarrett (p) Gary Peacock (b) Jack DeJonette (ds) Mar.30.1996


「慢性疲労症候群」という奇病に見舞われる直前の東京でのライヴです。ライナーによると皇太子夫妻が観にきていたとか。それはともかく10年前いやそれ以前のスタンダーズのトリオ盤の曲目の多くが再演されているわけですが、聴き様によっては新鮮さを持っている、あるいは全然変わってないと不満を持つ方もおられましょう。私も半々な感じです。奇跡のトリオと持ち上げていましたが、同じものを繰り返されるのでは少々物足りない気もします。ですから特に主立って変化が感じられるものに絞っていきたいと思います。5ではDejonetteのドラムが先行してパーカッシブな演奏となっています。Keithもリズミックな演奏に徹しています。カリプソ系というところでしょうか。6は始めて聴きました。しんみりという感じです。7は多少変化があって寧ろテーマをシンプルにしている感じです。テーマをシンプルにするとアドリブに力をいれるのだろうという予測がたちますが、それほど変化は感じられません。最後に"Speak Low"を差し込んだぐらいでしょうか。8は全く始めてです。データ的に調べればきっとこれも再演なのでしょうが。9はPowellの曲でビーバップ調の演奏です。10はイントロとテーマに変化を持たせています。

Inside Out ECM

Keith Jarrett (p) Gary Peacock (b) Jack DeJohnett (ds)July.26,28,2000

 さてこの特集最後の盤になりました。途中抜けているものについては随時追加ということで。この盤を聴くのはしんどい。はたと気がついたらまだ1曲が終わっていなかった・・・なんてことの連続です。ですから未だに未聴というトラックがあります。
 短いリフの繰り返しからブルージーな演奏が展開されます。「制約からの解放」というスタンダード演奏にはなかった逆の足かせが成功するのか・・・これが課題のようです。聴く方も真剣に旋律を追っていくと意外なところで新展開が起こるわけです。この醍醐味がなんとも言えない。いわばアドベンチャラスな気分です。1,2曲ともそういう演奏です。特に2曲目の後半部は荘厳なソナタを聴いているような感さえあります。しかし次第に天からリズムの神が舞い降りて旋律は躍動感を持ち始めます。まるで旧約聖書の創世記のようです。奇跡のピアノ・トリオが踊り始めます。そしてそれは歓喜の歌声と変わっていきます。実にドラマチックな展開です。3,4曲目は極めてフリー・フォームな演奏ですが、4曲目は印象的です。3者がリズムの権化と化します。最後はこのトリオのお馴染みの演奏です。