SRIシリーズ

新・怪奇大作戦

提供・よしおか薬局

 

第三話「オカワリナサイ」

 

 街が、一瞬の安らぎを得ようとする夜明け前、夜勤も後数時間で交代となった時、交番の表に、一人の少女が立ちすくんでいるのに、安東巡査は、気がついた。その若い女性は、男物の大き目のパジャマを着ていた。サイズが合わず、少し、白い肩の肌が見えていた。それには気づいているようだが、それよりもまだ、何か話さなければいけないことがあるのか。口の中でもごもごといいながら、安藤巡査のほうを見ていた。

 彼が、耳を澄ましてよく聞くと、それは、こういっていた。

 「死んでいる。死んでいる。死んでいる。死んで・・・」

 「誰が死んでいるのかね。」

 その言葉の重大性に気がついた安東巡査は、彼女の肩を掴んで、正気に戻そうと、その身体を揺さぶった。

 「死んでいる。死んでいる。死んでいる。俺が死んでいる。うわあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 そう叫ぶと若い女性は、恐ろしいほど大きな悲鳴をあげて気を失ってしまった。

 安東巡査の耳には、彼女が、気を失う前に叫んだ言葉が、強く残っていた。

 「自分が死んでいる?」

 

 

 「そう言って、その女性は、気を失ったのですか。」

 ミンレイが入れてくれたコーヒーをすすりながら、虎野は、警部に聞いた。

 「そうだ。それ以来、彼女は、意識不明のままなのだ。」

 「それじゃあ、身元を示すものは何も・・・」

 「そのとき着ていただぶだぶのメンズパジャマ以外にはなにも身元をはっきりさせるものはなかった。そのうえ、彼女は、裸足だ。」

 それを聞きながら、ソファの背もたれに腰掛けていた、高は、少しいやらしげに言った。

 「下着も男性物だったりして。」

 「やだ、高くんたら。」

 ミンレイが、高の言葉に冷たい視線を送った。だが、警部の反応は違っていた。

 「おう、よくわかったな。高君。彼女は、男物の下着を着ていたんだ。」

 今まで黙って会話を聞いていた藤崎が、口を開いた。

 「男物の下着を着た若い女性。これは何かありますね。警部。」

 「そうだろう。だから、君達に調べて欲しいのだ。」

 いつもなら、ここで、かならず口をはさむ所長の久遠寺嬢は、今日はいなかった。所長のデスクには、あるじの姿はなくがらんとしていた。

 「そういえば、所長は?」

 「学会で、ニュー・ヨークに行っています。来週には帰るでしょう。」

 「そうか。ところで、さっきの件だが、藤崎君。」

 「ええ、私も気にはなりますが、私と、祐さんは、あの、TS蛾の後始末がありますので動けません。タカ、おまえやってみるか。」

 「え、ぼくがですか。」

 いきなり言われて、高は、どぎまぎした。事件を持たされるということは、一人前と認められたことになるからだ。

 「もちろん、タカひとりじゃない。ミンレイちゃんといっしょにだ。」

 虎野は、藤崎の言葉にそう付け加えた。それは、高にとって屈辱だった。

 「先輩。僕が信じられないのですか。」

 いつになく真剣な高だった。

 「そうだ。おまえは、若い女性が事件に絡むとすぐ脱線してしまうからな。」

 あっさりとそう言われては、高は反論の余地がなかった。

 

一時間後、高とミンレイは、サイドカーに乗り込むと昏睡状態で眠りこむ女性が入院している警察病院へと向かった。ゆれるサイドカーの中で、ミンレイは、徳田警部から借りた調書を読みふけっていた。そして、ときどきなにかおもいふけったように唸ったりしていた。

 二人が問題の警察病院に着いたときには、ミンレイは、ぐったりと疲れきっていた。高のサイドカーは思っていた以上に振動があり、調書を読みながら舌をかまずに放り出されないようにするのに神経を使い果たしたのだった。

 何とか病院にたどり着いた二人は、病院の玄関で言い合いになった。

 「ミンレイ、先に彼女に会おうよ。」

 「昏睡状態の人にあってどうするのよ。それより、彼女の状態を知るのが先でしょう。もう、私に黙ってついていらっしゃい。」

 そんな二人を患者や看護婦達が遠巻きに見つめていた。それに気づいたミンレイは、そう言うとさっさと先に歩き出した。高はそんなミンレイの後を慌てて追い掛けた。受付でSRIであることと、訪問目的を告げると応接間に通された。そして、十分ほどすると流れるような黒髪と、端整な顔立ちのうら若い白衣の女性が現れた。ミンレイが立ち上がり挨拶をしようとした瞬間、何かがはじかれ、床を叩きつける音がした。それは、高が、女医に迫って、頬をはじき飛ばされ、床に叩きつけられた音だった。

 「なにすんだ。このどすけべが。」

 その容貌に似合わない田舎言葉がその美女の口から出ていた。

 「だって、久遠寺所長にそっくりなんだもん。くおんじしょちょう〜〜〜〜。」

 高は、1日足りとも所長の顔を見てないといられない身体だった。それが、ここ一週間ほど所長を見ていなかったものだから禁断症状が出たのだろう。確かにその女医は、髪の色の違いはあるが、所長にそっくりだった。

 「そのゴミはほっといて、彼女の様態は、どうですか?」

 「ああ、そのことだが・・・この男、本当にSRIの人間か?」

 「ハイ、残念ながら。」

 その女医の足元に絡みつきながら、高はニヤついていた。

 「まったく、SRIも質が落ちたのう。ところで、藤崎様は御元気でしょうか。」

 そのぞんざいな態度から一変して、女医は、目を潤ませながら聞いてきた。

 「ええ、御元気ですけど。どういう関係?ミンレイ聞きたいにゃ〜。」

 「え、いや〜〜ん。誰にも話しちゃダメよ。じつは、わたくし・・・。」

 「先生、彼女の様態は!」

 いつの間にか、女医のそばに立った高が、いつになくまじめな調子で聞いてきた。あまりの豹変に女医は戸惑ったが、ミンレイはすぐに気づいた。所長に似た女医が、藤崎の話をするのが面白くないのだ。ミンレイは先を聞きたいのを抑えて女医に言った。

 「先生、その続きはまた。それよりも、あの患者の話を。」

 「ああ、そうだったな。あの患者だが・・・」

 そう言い淀むと、女医の顔は曇ってきた。高とミンレイは言い知れぬ悪い予感を感じた。

 「なんとか様態はもちなおしたのだが・・・」

 「まだ昏睡状態が・・・」

 「いや、意識は回復した。回復はしたのだが・・・」

 さらに言い淀む女医に、高は痺れを切らした。

 「じゃあ、会ってもいいのですね。」

 「ああ、少しの間ならな。でも・・・」

 まだ言い淀む女医を後に高は、応接間を飛び出した。

 「先生、どうしたというのですか。」

 ミンレイの問いに、女医はやっとその重い口を開いた。

 「実はなぁ・・・・」

 

 高は、問題の女性が入院している個室の前に立った。

 軽くドアをノックすると中からかわいらしい声で返事が返ってきた。

 「どうぞ。」

 高は、ドアのノブを回した。病室の中に入るとベッドの上に体を起こした長い黒髪の少女が座っていた。窓から吹き込む風が、彼女の長い髪をそよがせていた。

 

 「じゃあ、彼女は記憶が、まったく無いと?」

 「そうだ。正確に言うと、今の肉体年齢までの記憶はあるのだが後はすっかりなくなっているんだ。」

 「いまの肉体年齢?。」

 ミンレイは、女医の話が信じられなかった。女医の話では、彼女の意識が戻ったところでその変化は止まったらしいがそれまでは、彼女は、若返っていったというのだ。

 「信じてはおらんだろう。」

 「いえそんなことは・・」

 「嘘をいわんでもわかる。わたしも自分が担当でなければ信じられんのだからな。だが、これは事実だ。」

 交番に現れた当時は、24・5だった彼女の年齢が、14・5歳に若返るなんて、それも、外見ばかりではなくて、肉体にも精神的にも若返ってしまったのだ。このことに、ミンレイは、言葉を失ってしまった。そんなことが本当にあるのだろうか。

 「誰にも話してはいないが、実は、彼女が運び込まれた時、精密検査をしたのだが、ある数値が異常な値を出していたのだ。しかし、今ではそれも正常な範囲にもどってしまっている。」

 「その異常な数値を示したものは、なんだったのですか。」

 女医は、言葉に詰まってしまった。それは、あまりにも異常なことだからだ。だが、ミンレイが女医に話すように何度も頼み込むと、決心したように力強く確信をこめて話し始めた。

 「それは、男性ホルモンだ。」

 「男性ホルモン?それじゃあ、彼女はニューハーフ?」

 「そうじゃない。彼女は、れっきとした女性だ。だが、そのときは、彼女の体内の男性ホルモンは異常に高かった。それが、今では正常値になっている。」

 「ホルモン注射をしたのですか?」

 「ちがう。彼女の体内で、男性ホルモンが女性ホルモンに変化していたのだ。」

 「きゃはははは、そんなばかな。」

 ミンレイは、女医の悪い冗談を笑った。だが、それが冗談ではない事は、女医の目が真剣な事からもうかがえた。

 「それでは、本当にホルモンの変化が・・・」

 「そうだ。こんな事を言っても信じてもらえないだろうが、彼女は、元・男性だ。」

 ミンレイもSRIにはいって結構いろんな怪現象に遭遇して来ていた。だが、こんな事はそう体験した事はなかった。TSに関係する事件は、この間のあのTS(テエス)蛾の事件と数えるぐらいしか実例を聞いた事が無かった。それに実際に性転換がらみの事件を実際に遭遇したのは、あの事件ぐらいだった。

 「先生。TS(テエス)菌の可能性は?」

 「おお、この間のTS(テエス)蛾の事件だな。ホルモンの異常が発見されたときに調べたが、TS(テエス)菌は発見できなかった。これだけの変化だ、発見されないはずが無いのだがなあ。」

 「TS(テエス)菌以外での可能性は?」

 「わからん。それが、こんな事は事例がないのでな。」

 ミンレイと女医が、あまりの異常な出来事に黙ってしまった頃、高は、彼女の病室の中にいた。

 「あの、どなたですか?」

 「あ、ぼ、ぼくは、SRIの高といいますです。はい。」

 「SRIの方?どんな御用でしょう。」

 『きゃわいいなぁ、ミンレイや、所長にない魅力がある。そう清純さかな。穢れなき乙女。うう、心が洗われる。』

 ミンレイや所長が聞いたら絶対怒り出しそうな事を心に思う高であった。

 「あなたが、交番に現れる前のことをお聞きしたいのですが。」

 「わたし、交番なんかには行きませんけど。気分が悪くなって学校の医務室で寝ていたはずなのに、気がついたらここにいて。どうして、わたしは、ここにいるのでしょう。わからないわ。何もかも。」

 両手で顔を覆い、泣き出しそうになる彼女のそばに座ると、優しく肩に手をまわし、高は、全神経を顔に回し、優しく彼女に声を掛けた。

 「大丈夫だよ。僕がついているからね。」

 「うわ〜〜〜〜ん。」

 今まで保っていた緊張の糸が切れたのだろう。少女は、高の胸に顔を埋め泣き出してしまった。彼女から、かすかなシャンプーの匂いがした。

 『ん〜〜、トニックシャンプーのにおいか。』

 人一倍鼻のいい高は、そう呟いた。

 と、そのとき、高に破滅の時が訪れた。バチン、バチバチブチ〜〜〜ン。という音が、高の顔からした。その音に少女が顔を上げると、そこには、鼻の下を伸ばしきったスケベ丸出しの五分刈り男がいた。

 「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」

 病院中に響き渡る悲鳴が上がった。このとき、この声で早産した者が4名、リハビリ中でこけて、入院がのびた者が6名、手術中の患者は運良くいなかったが、蘇生中の2名の患者が、電気ショックの手元が狂い、別のところに電極パットをあてられ、そのお陰で蘇生に成功した。それとこれとで相殺されて、30分のお小言で高は開放された。

 

 「もう、目を離すとすぐにこれなのだから。」

 「俺のせいじゃないよ。彼女が勝手に。」

 「誰だってその顔を見たら驚くわよ。」

 高の顔はまだ伸びきったままだった。高の顔は整形外科の医師の手にもあまり、顔を包帯でぐるぐる巻きにされていた。顔に包帯を巻いた男と、赤いチャイナを着た美少女のサイドカーは、ただでさえ目立つこの車をより一層目立たせていた。

 「ところで、どこにいくのだい。」

 「専門家のところよ。」

 「専門家?」

 「そう、東和大学人文学部民俗学科の風祭 舞(mai・kazamaturi)先生のところよ。」

 「舞先生。きれいな人かな。」

 「さあ、寺野先生の紹介だから、わたしも会ったことはないわ。」

 「寺野先生って?」

「ほら、『魂抜け男』事件のときにお会いした、わたしのお爺さまの教え子よ。」

 「ああ、あの、なんたらいう薬を作った。」

 「そう、PPZ−4086をね。ただし、作ったのは甥御さんの方だけどね」

 「ふ〜ん、あの先生の紹介か。どんな女性だろう?」

 そんな事ばかり考える高のことはほっといて、ミンレイは、さっきの女医の言葉が気になって仕方がなかった。

 『彼女は、元・男性だ。』このことはなにを意味するのだろう。TS(テラス)菌は、彼女の身体からは発見されなかった。そして、薬物や、機能疾患、外部からの刺激を受けた形跡もなかった。だが、彼女は、性転換をしている。それも、年齢逆行を起こして。ミンレイはいつになく真剣に考え込んでいたがこう呟いた。

 「わたしのキャラじゃないわ。考えるのや〜〜んピ。きゃははははは。」

 二人を乗せたサイドカーは、東和大学へとついた。この大学は、妖怪学の学問的開祖 井上円了の弟子の学者を学長として招いて創立された大学で、民話や伝説なども科学的に調査して、不可思議な現象を解明している学術調査機関でもあり虎野の母校でもあった。

 教務課で寺野教授の紹介と、訪問の主旨を告げると、風祭助教授の研究室に連絡を取ってくれて、そこまで案内してくれた。案内者が、ボブヘヤーの若くてきれいな女性だったから、高はほくほくしていたが盛んにモーションをかけても一向に相手にされず、高はショボンとしてしまった。

 風祭助教授の研究室は、4階の奥にあった。どれも同じようなスチールのドアの壁を通り抜け、一番奥の部屋までくると案内の女性が、中へ声を掛けた。

 「舞さん、お客様をお連れしたわよ。」

 そう告げると、ドアを開け、高たちをなかへと招いた。

 研究室の中は、6畳くらいの広さがあり、窓際に、窓を背にして机が置いてあった。その机に座って、なにか懸命にラップトップのパソコンを打っていた人物が、スクリーンから顔を上げた。

 「はじめまして、風祭です。お話は、寺野教授に御伺いしております。」

 その顔は、幼さが残る童顔で、女性というよりも女の子といった感じのかわいらしい顔立ちをしていた。髪型は7・3で、声は、女性にしては心持ち低いような気がした。どちらかというとその髪型と声で少年のような印象を与えていた。

 「どうぞお座りください。御二人何か、お飲み物をお出しして。何になさいます。」

「わたしは、コーヒーを。」

「それじゃあ、僕は、焼酎を。」

これは高が必ず言うジョークだった。

「それでは、こちらの方には、コーヒーを。そして、そちらの方にはその棚の上に焼酎がありますから。なんになさいます。麦、そば、芋、人参、ジャガイモ、米、何でもありますよ。」

「それじゃあ、米を。」

自分の冗談の上を行くことを言われて、高は、毒気を抜かれてしまった。

「麦は、そうその横のです。しのぶさん、わたしにはココアを入れてもらえますか。」

 飲み物を頼み終るとパソコンの影から姿をあらわした。

 160ちょいの身長と、スリムな身体。胸もお世辞にもあるとはいえなかったが、肌は色白できめ細かく、10代のようだった。そして、その白い首筋には、ちょこんと突起物が、・・・・?突起物?そう、彼女の首には突起物があった。

それは間違いなく『アダムの林檎』だった。このことに気がついたとき、高は気を失いそうになった。彼が驚愕する事実がこの後続くのだが、それはまた、後の話。

 「それでは、改めまして、わたくし東和大学人文学部国文学科民俗学研究室第5分室の風祭 舞です。」

 「わたしは、SRIの明 眠鈴です。」

 「僕は、高 慎二です。」

 「そして、こちらは、わたしの婚約者の妙 しのぶ(sinobu・tae)さんです。」

 そう言って案内してくれた女性を紹介した。高は、それを聞いて、さらに落ち込んだ。

 「寺野先生には詳しい事は聞いていないのですが、どのようなご用件なのでしょうか。」

 「実は・・・・」

 ミンレイは、あの不思議な少女の話をできるだけ詳しく話した。ミンレイが、彼女の正体と、その状況を助教授に話したとき、高は最後のメガトン級のストレートパンチを喰った。そして、彼は燃え尽きた。立ち直れないほどに・・・

 「おとこ、おとこ。あのこが、お・と・こ。」

 この瞬間、高の精神は完全に崩壊した。

 「大体の事はわかりました。寺野先生がわたしを紹介されたわけも。ところで、変身はどのようにして起こるかご存知ですか。」

 「え、変身ですか。」

 急にそんな事を聞かれミンレイは返答に困った。

 「変わりたいからだよ。」

 壊れた高が、いつになく無表情な声で答えた。

 「そう、確かに変わりたいからですが、強制的に変身する場合もあります。この場合、外部的要因変身と呼んでいます。」

 「変身にそんな要因があるのですか。」

 「あるといっても、大きく分けて二つです。外部的要因と内的要因です。」

 「それがどうしたんだよ。」

 「高ちゃん、少し変よ。」

 「いいですよ。お気になさらずに。外部的要因には、機械、薬などがあり、内的要因には、自分の願望によるものがあります。今お話に聞いた変身は、第3の要因のような気がします。」

 「おかしいじゃないか。さっきは、要因は2つと言ったのに、第三の要因なんて。」

 「そうです。これは、実は、第一と第二の要因が混ざり合ったものなのです。」

 「第一と第二の要因の混載?」

 「そうです。」

 「どうしてそんな事がいえるのだよ。」

 「それはですね。」

 そう言いかけたとき、しのぶが、3人の前に飲み物を置いた。風祭助教授の前にはミルクたっぷりのココア、ミンレイの前には、コーヒーとシュガーステックとミルクポット。高の前には、本当に麦焼酎『吉四六』とお湯の入ったポット、一個の耐熱グラスが置かれた。

 「氷のほうでよろしかったかしら。」

 しのぶの問いに高は、横に首を振るとコップにお湯を注ぎ、焼酎を入れた。こうすると、熱いお湯に、冷たい焼酎が自然と混ざるのだ。それをあきれながらも、ミンレイは何も言わなかった。

 「まず、第一に場合、外的要因によるものですから何らかの残留物が残ります。彼女の場合(あえて、彼女と言わせていただきますが)異常な状態で発見されていますので、徹底的な精密検査を行われたはずですから、その変身誘導の残留物、もしくは痕跡が発見できないとは考え辛いです。次の第二の場合ですが、この場合も何かの痕跡は残ります。なぜならば、本人の深層意識が引き金となるので、精神科医に精密に診察されたら必ず何か異常が見つかります。ただ本人が意識していないだけですから、この点も検査されているのでしょう。」

 「らしいです。本人が、保護された時、男性だといっていましたのでその点も調べたらしいのですが、同一性症候群の片鱗も見つからなかったそうです。」

 「そうでしょうね。そしてこれが第三の可能性を言った理由です。第三の外的内的要因の場合は、何の痕跡も残らないのです。」

 「そんなばかなことがあるものか。」

 少し酔いが回りかけてきた高が、風祭助教授に食って掛かった。

 「外部的要因も内的要因の場合も何かの痕跡が残るといったじゃないか。」

 「そうです。しかし、それが残らない例が、これなのです。それは、これが呪いによるものの場合です。」

 「呪い?」

 ミンレイと高は声を合わせて叫んだ。

 「まじめに聞いていれば呪い。ふざけるにもほどがあるぜ。」

 「高ちゃん。でも、先生。わたしも、高ちゃんの意見に賛成ですよ。いくらなんでも呪いだなんて。」

 そんな言葉はとっくに予測していたのだろう。微笑んでふたりの顔を見て微笑んだ。

 「明さん。あなたは、呪いを掛けられたらどうします。」

 「それは、道志さまに頼んで呪い返しをします。」

 「ふむ。じゃあ、高さんは?」

 「呪いなんかあるわけないじゃないか。」

 「それじゃあ、ここにあなたの身体の一部を入れた呪いの藁人形があります。これに針を刺してもいいのですね。」

 そう言うと、風祭助教授はいつの間にか左手に藁人形を、右手に太い針を持っていた。

 「身体の一部ってそんなもの入れる暇などなかったはずだ。」

 「しのぶさんに入れてもらったのですよ。さあ刺しますよ。」

 そう言うと、風祭助教授は、藁人形の左腕の付け根を太い針で刺した。

 「痛い。」

 そう言って、高は、左肩を抑えた。

 「先生。それはあまりにひどいですよ。」

 ミンレイが、助教授を睨みつけた。

 「高さんは、呪いを信じないのではなかったですか。それなのに、藁を刺しただけで痛いなんておかしいですよ。」

 「だって、それは呪いの藁人形を刺したから・・・」

 「え、私は、ただの藁人形を刺しただけですよ。」

 「それには、おれ、いや、僕の身体に一部が・・・」

 「入っていません。それに、これはうちの学生に勉強のために作らせた藁人形で、呪いなんて掛かりませんよ。」

 「え、そんな。」

 「まだ肩が痛いですか。」

 「いや、そういえばなんともないや。」

 「そうでしょう。これが、証拠が残らない方法です。抵抗できないものに逆らわずにしたがう事が、心的に何の疲労も与えずに変身する方法なのです。なぜなら、呪いは逆らってもどうしようもないからです。」

 「それじゃあ、彼女の変身は?」

 「そう呪いによるものでしょうね。ただ、今の日本にはそれだけの呪いを掛けられる人はいませんが・・・」

 「先生。呪いとはなんですか。さっきのことと関係があるのですか。」

 先ほどのことで酔いが覚めた高が、いつになく真剣な顔で助教授に尋ねた。

 「ほう、さすがSRIの方ですね。よくお気づきになりましたね。そうです。さっきのことが、呪いに対する答えです。呪いは、誰も逆らう事のできない暗示なのです。そして、それは肉体ばかりか精神にも影響を与えます。」

 「でも、そんな馬鹿な事が起こるなんて。」

 「馬鹿な事というのは肉体的変化の事ですか。」

 「それもですが、精神的な変化もです。信じられない。」

 「そう、まるでファンタジー作家の吹雪 桜花先生の変身(メタモルフォーゼ)シリーズみたいですね。」

 「ほう、明さんは、吹雪 桜花がお好きなのですか。」

 「ええ、大好きです。特にマサイシリーズが大好きです。」

 「それはそれは、ありがとう。あの話が実は、実際に起こったことを元にしているといったら信じますか。」

 「それは。だってあれは、ファンタジーですよ。それに、風祭先生は、吹雪先生をご存知なのですか。」

 「それは・・・」

 そう言って、風祭としのぶは、顔を見合わせたて笑った。

 「吹雪 桜花は、わたしが舞さんの名前からイメージして作ったペンネームなのです。」

 「すると、吹雪先生は?」

 「そう、風祭 舞こそ、吹雪 桜花です。あのシリーズは100%そのままではありませんが、あれに近い出来事は、世界中で起こっているのです。ただ、そこまでできる呪術師は、世界中でも、数えるほどしか残っていませんがね。でも、今の日本にはいません。」

 「それではこの事件は、今の日本では起こりえないと。」

 「そう、普通では考えられません。」

 「じゃあ、どう考えればいいのだ。」

 起こりえないことが起こっている事をどう考えればいいのか、高は頭を抱え込んでしまった。ミンレイも訳がわからなくなってしまった。

 「そう焦らずに、普通で考えればといったはずです。無防備のときにかなり強力な暗示を掛ければ、あるいは可能なのです。」

 「無防備なとき?」

 「そう、たとえば寝ているときなどです。その時に強力な暗示を掛けられれば可能です。」

 「たとえば、寝ているときに気づかれないように暗示を相手に掛けるとか。」

 「そうです。以前、催眠学習というのがありましたがそれに近い事ができれば可能です。」

 ミンレイは、なにか思いついたように目を輝かせるとまだ、理解できずにいる高の手を取って立ち上がらせた。そして、風祭助教授と妙しのぶに礼を言うと研究室を飛び出していった。

 「これでよかったの。舞さん。」

 「バッチリだよ。しのぶさん。」

 しのぶは、風祭に笑いかけながら答えた。

 「でも、私たちいつになったら戻れるの。」

 「あの、呪術師を探し出さないとダメだな。あいつが、僕に惚れていて、僕を君に、君を僕の姿に変えるなんて思いもしなかったよ。女になれば僕が君をあきらめて自分のものになると考えたようだ。」

 「でも、呪いの専門家が呪いをかけられるなんて。」

 「油断していたのだよ。でも、僕は、どんな姿になっても君が好きだよ。」

 「わたしもよ。」

 ふたりは、静かに、唇を重ねた。窓の外では、小鳥が、そんな二人を興味深げに眺めていた。

 

研究棟を飛び出したミンレイは、サイドカーに飛び乗るともたもたしている高を急かした。

「どうしたんだよ。ミンレイ。」

「もう時間がないのよ。彼女が保護されて4日立っているのよ。犯人に証拠を消されているかもしれないわ。」

「証拠って?」

「もう鈍いなあ。彼女に強力な暗示を掛けるための道具よ。」

「そんなものがあるとは考えられないなあ。」

「きっとあるわ。いえ、まだあることを祈るわ。」

「でも、ミンレイ。どこを探すんだ。彼女、いや彼は、記憶喪失で身元不明なんだぞ。」

「それには心当たりがあるの。徳田警部に調べてもらっていた件でそろそろ連絡があるはずだわ。」

ミンレイが、そう言った時、携帯の呼び出しが鳴った。

「あ、徳田警部ですか。どうでした。エ、昨日それらしき報告があった。それで、一般人の立ち入りは?ない。それはどこですか。わかりましたすぐ行ってみます。高くん、T−町四丁目のテクラマンションよ。急いで。」

高は、その声とともにマシーンをUターンさせて目的地へと飛ばしていった。

テクラマンションは、買取方のマンションで、入り口は、住人が開けるガードシステムだった。訪問先には誰もいないので(警備はいず、部屋は封鎖されていた)管理人に要件を告げてあけてもらおうとしたが、管理人は留守だった。

と、そこに出かける住人が中から開けたので、その隙に二人は中に入った。このタイプの欠点だ。外には強くても中には無防備だった。

ミンレイは、高を連れて問題の部屋に行った。そこは、昨日、人が死んでいるのが発見されたのだ。そして、その部屋の住人は行方不明。行方を眩ましたのは30代の夫婦で、子供はいなかった。そこに、身元不明の死体が一つ。そんな事件があったら連絡をくれるようにミンレイは、警部に頼んでいたのだ。

ミンレイと高は、問題の部屋の前に立っていた。ミンレイが、誰もいないはずの部屋のドアノブに手を掛けて回してみると、ドアは何の問題もなく開いた。

「なんだ。現場保護って言ってもこんなんじゃ何にもならないじゃないか。こんど、徳田警部に言ってやろう。」

「高くん気をつけて、誰かいるわ。」

ミンレイは、真剣な表情でいった。こんなときのミンレイの言葉はいやになるほど当たった。ミンレイは、気をつけながら中に入っていった。その後を、高はついていった。

ミンレイは、何かを探すように一部屋ずつ中を覗いていった。そんな時、奥の部屋から物音がした。ミンレイは、高に静かにするように小声で言うと奥の部屋へと向かった。

ドアの影から覗くと、部屋の中に人影があった。何かを探すようにあちらこちらをひっくり返したり、引出しを引っ張り出して、中を空けたりしていた。

「キャハハハハ、なにをお探しかしら。探しものは、とっくのむかしに警察が持って行ってますわよ。」

入り口に立つとミンレイは言った。所長の口調を真似たつもりだろうが、迫力はなかった。

人影はミンレイに気づくと彼女に、体当たりして外に飛び出してきた。ミンレイの後ろに立っていた高も油断していたために弾き飛ばされてしまった。

「高くん、なにをぼんやりしているの。早く追っかけてよ。」

「でも、ミンレイ。」

高が、そう言いかけて言葉が止まった。そして、ミンレイの顔を指差した。

ぶつかった時に切ったのだろう。少し、血が流れていた。

「ぶつかった時に切ったのね。こんなのはたいした事ないわ。」

そう言ってミンレイが高の顔を見た時、そこには、今まで見たこともないような恐ろしい目をした高が、立っていた。

「ミンレイの顔を、女の命をよくも、よくも。」

高に巻かれていた包帯は、高の怒りではじけとんだ。高は、スケベだが、究極のフェミニストでもあった。女性を傷つけるところを見たりすると、その怒りで彼はわれを忘れ、相手を半殺しにする事さえあるのだ。

「ミンレイ待っていろよ。」

そう言うと高は、脱兎のごとく外に飛び出していった。ミンレイは、何がなんだかわからずにただ高の後姿を呆然と見送るだけだった。

高は、その怒りのパワーで、あの人影を8メートルの差でエレベーター前まで追い詰めた。しかし、運悪くそこにエレベーターが来てしまった。室内犬を抱いて降りかかった太った中年女性を引きずりだすとエレベーターに乗り込んだ。そして、エレベーターのドアは、静かに閉まり出した。エレベーターには中年の男が一人だけ乗っていた。中の男は、逃亡成功を確信したのか、高を馬鹿にしたような笑いを浮かべ、手を振っていた。高が、階段のほうに行きかけたそのとき、中年女性が、エレベーターのドアをこじ開け、中の男を引っ張り出した。

「ちょっと、なんてことをするの。あぶないじゃないの管理人さん。」

そう、その人物は管理人だったのだ。

「ちょっと急いでいたもので、申し訳ございませんでした。」

「謝ればすむということではありませんわ。わたくしは、もう少しで怪我をするところでしたのよ。」

「本当にもうしわけございません。ですが、木村さん、このマンションは、ペット禁止ですよ。」

「まあ、わたくしのべべちゃんをペットだなんて。それに、自分の悪い事を誤魔化そうとなさるのね。もう、許せませんわ。」

管理人は、完全にこの中年女性に捕まってしまった。口は災いの元である。管理人は、高に助けを求めるような視線を送った。高は、少しかわいそうになって二人の間に入った。

「まあ、おばさん。そうむきにならなくても。」

「おばさんですって、わたくし、あなたのおばさまじゃございませんわ。最近の若い人は・・・」

そのすきに逃げだそうとした管理人は、その女性に首根っこを抑えられた。そして、二人は、その女性のお小言を延々3時間聞かされる羽目になった。その女性が、自分の好きな番組が始まるのを思い出すまでである。

 

「それで、高は、そのおばさんの小言をずっと聞いていたのか。」

「それは災難だったな。その犯人も、大変な人を引きずり出したものだな。」

「もう、藤崎さんも先輩も笑い事じゃないですよ。まったくえらい目にあったよ。」

笑う二人に、高は膨れて、背を向けてしまった。

「あっはははは、ごめんごめん。ところで警部。犯人は、自供したのですか。」

「ああ、あの夫婦に懸想して行った犯行みたいだ。二人の仲を裂くためにな。」

「でも、どうやったのですか。」

「うむ、あの管理人。住人の部屋にちょくちょく忍び込んでいたみたいで、今回の犯行に使った睡眠学習器だが、ある電器メーカーの開発部員の部屋から盗んだようだ。盗まれた開発部員は、大事なテスト品だったので会社にも言えずにいたのだが、今回の事がばれて、解雇されたそうだよ。」

「そうですか。でも、睡眠学習器で、普通、変身なんか考えつきますかね。」

「それが恐ろしいところで、奴は、元・呪術師で、昔はかなり、強い力があったらしいのだが、ある男に力を封じ込められたらしい。」

「それで、睡眠学習器を使って、衰えた力をカバーした。ということですか。その封じ込めた男とは?」

「風祭 舞。」

コーヒーを運んできたミンレイが答えた。

「そう、かなりあくどい事をやっていたようで、風祭助教授のフィアンセにもちょっかいを出そうとしたらしい。それもあって、力が使えないようにされたようだ。」

「でもなぜ、変身なんかさせようとしたのかな。相手の旦那を女の子にしてまでも、奥さんをものにしたかったのかな。」

「いや好きだったのは旦那のほうで、奥さんが邪魔だったみたいだ。それで、旦那を女にすれば、家庭崩壊すると考えた。」

「そこで奥さんを消し、旦那を女にして奥さんをあきらめさせた。でも、その奥さんはどこに?」

「それは、あの部屋で見つかった死体でしょ。」

「お、ミンレイちゃん冴えているね。そのとおりだ。奥さんの遺体も変身途中だった。」

「何に変身させていたのですか。」

「それが、出腹の禿た中年オヤジだというのだ。」

「それじゃあ、奥さんは・・・」

「そんな姿に変身したくないという無意識が、変身を躊躇させて死に至らしめたのだろう。」

「わかるわ。その気持ち。」

ミンレイの言葉に誰もが黙った。

「それで、警部。管理人の罪はどうなるのですか。」

「不法侵入と、窃盗だな。」

「殺人は?人を殺しているのに殺人は問われないのですか。」

「殺人は立証できない。変身で殺しましたって、誰が信じる。」

「そんな馬鹿な事があるかよ。自分の姿を、自分を奪われた奥さんはどうなるんだよ。俺達は、何をしてるんだよ。」

高は、そう怒鳴り出した。それは、この場にいる皆に気持ちでもあった。

「高、これからはもっと複雑な犯罪が起きてくるぞ。それに巻き込まれた人たちを一人でも助けるのが私たちの仕事だ。」

これは、言い訳に過ぎない。それは、藤崎にもわかっていた。だが、そうでも思わなくてはこのような異常な犯罪に立ち向かう事はできなかった。そして、それは、高にも痛いほどわかっていた。だが、今の高には、ただぶつける先のない怒りを声にしてだすことしかできなかった。

「ところで、警部。あのご主人はどうなるのですか。」

「ご主人のほうの親族は全て亡くなっているので、奥さんのほうのご両親が引き取るそうだ。そして、役所のほうも特例を認めてくれて、特別に戸籍を作ってもらえることになった。」

「そう、それはよかった。でも、もう2度と男性には戻れないのね。」

妻を失い、自分の人生を失い、記憶さえも失った彼に、それでよかったのかどうか誰にもわからなかった。

「でもどうして、ご主人は自然に変身できたのでしょうね。先輩。」

「それはね。ご主人の心の中に女になりたいという願望があったからよ。」

「あ、所長。」

そこにはたくさんの荷物に埋まった久遠寺若菜が立っていた。

「所長。おかえりなさい。」

「所長。お帰りなさい。学会はいかがでした。」

「退屈だったわ。それより、ミンレイちゃん、大変だったわね。はい、おみやげ。」

「所長ちゃま。」

ミンレイは、久遠寺所長のふくよかな胸に顔を埋めて泣いた。これまで張り詰めていた気持ちが所長の顔を見て、緩んでしまったのだろう。ひとしきり泣くとミンレイはいつもの調子に戻った。そして、藤崎の耳元でささやいた。

「ところで、藤崎さん。警察病院の精神科の皇女野サクラ(sakura・mikono)先生とはどういうご関係かしら。藤崎さんのこと、さま付けで呼んでいたけど。」

「お、女嫌いと思っていた藤崎君にもそんな人がいたのか。」

「ミンちゃん、その先生は美人かい。」

「そりゃもう美人よ。ねえ、高くん。」

「あら、私も知りたいわ。藤崎君どうなの。」

「藤崎さん。あの先生とそんな仲だったのですか。」

地の底から響くような声で、高が言った。

「おい、高。おまえ泣いていたのじゃないのか。」

「それとこれは別です。藤崎さん。」

下から睨みつける高の視線に藤崎は、席を立った。

「あ、まだ、実験の途中だったから失礼するよ。」

「あ、にげるな。」

事務所を逃げるように出て行く藤崎を、高が、豹のように追っかけていった。

残った4人は、いつもは冷静な藤崎の慌てぶりを腹の底から笑った。

それは、つかの間の戦士達の休息だった。

 

 

 

次回予告 今の自分に満足ですか。別の人間になりたくはありませんか。甘い言葉に誘われて中年サラリーマンは、

いつ終わるともしれない処刑台にかけられたのです。

次回の「転身の処刑台」をおたのしみに

 

 

あとがき

ついつい、書いてしまうようになってしまいましたあとがきです。

今回は、風祭(正しくは、kazematuriです)さんにゲスト出演していただきました。それと、風祭さんの作品「マサイシリーズ」を参考にさせていただきました。ありがとうございました。 

実は前回から、第一話で登場人物を出しすぎてまとまりがなくなったので、整理しようと、一話一人をメインの書くことにしたのです。そして、あまりにキャラクターの個性が強すぎる所長(歴代所長の中で一番の行動派)には、学会に行ってもらったのですが、やはり、ラストは、所長に締めてもらわないと考え(ラストがうまく締まりませんでした)、急遽ショッピングを切り上げて帰国してもらいました。さすが、所長だ。でも、彼女ならきっとこう言うでしょうね。

「あたりまえですわ。お〜ほほほほ。」とね。

それではまた、次回お会いしましょう。