ネオ・バンパイア
インタビュアー・よしおか
わたしが、彼の存在を知ったのは、誰もがそうだったように手塚治虫氏の「バンパイア」からだった。そしてあの出来事は、手塚氏のアイデアで、架空の事と思っていた。しかし、ある出来事で、わたしは、ロックのモデルとなった人物の存在を知ることとなった。その出来事については、その人物との約束で話すことはできないが、あの、30数年前のマンガの中での出来事は、実際の事件をモデルにしていたのだった。
わたしは、その切っ掛けを元に、ロックのモデルとなった人物に会う事ができた。ただそのときの姿は、われわれが知るロックのスタイルではなく、美しい女性の姿だった。
「あの、あなたが・・・」
「そうよ。でも、この姿だと、信じられないでしょう。だから、あえて、この姿でお会いしたの。」
その声も、女性の声で、彼女が、ロックのモデルとなった男性とはどうしても思え
なかった。
「わたしが、女性だからでしょう。でも、女性だとどうして断言できるのだい。」
彼女は、女性に声から男性の声へと素早く、しかし完璧に変えて見せた。そのうえ、一言しかしゃべっていないわたしの声すら完璧に真似て見せたのだ。
「あの、そのお顔は・・・」
「あら、これ、これは、あなたもよくご存知のものよ。治虫さんたら、これまで、作品のなかにつかってしまうのですもの。」
「え?」
「まだわからないの。地球を呑むの・・・」
「で、デルモイドZ!」
「そう、あれは、本当は、ナチが、連合軍の上層部を暗殺するために開発したものなのよ。でも完璧ではなかった。だから、わたしが、完璧な物を作ったの。治虫ちゃんにもあげたけど、かれったら、自分の作品のなかに出すんですもの。お陰で、これの存在を信じる人はいなくなったけどね。」
なんと、人類の文明を破壊したものの一つが本当に存在するなんて、わたしは、信じられなかった。
「その顔だと信じてないわね。後で見せてあげるわ。でもここではだめ。ひとめがありすぎるから。」
そう言うと、彼女は、イタズラっぽく笑った。
「あの、失礼ですがあなたの年齢は・・かなりのお年ではないかと・・・・」
「ほんと、失礼ね。レディに年を聞くなんて。でも、教えてあげるわ。『バンパイア』の最後のほう覚えている。」
「ええ。」
「最後に、トッペイたちの台詞の中にこんなのがあったわね。ロックは死なない バンパイアじゃないだろうか。というのが・・・」
「ええ、ありました。ロックが死んだとは思えないとか言う台詞のあとに。」
「あれは、半分あってて、半分間違っているの。生き物は、いつかは死ぬわ。わたしもそう。でも、わたしは、不老なのよ。」
「不老?と、年をとらないのですか。」
「そう、だから若いままなのよ。」
信じがたい話だが、わたしは、最後に、信じざるを得ない証拠を見せられた。ロックは、不老のバンパイアだったのだ。わたしは、あの、バンパイア革命として描かれた事件の真相を知りたかった。だが、彼女はいじわるく笑いながら、こういった。
「あなたは、もう知れ渡った事件を知りたいの。それとも、その後の事を知りたいの。」
その言葉に、わたしの心は揺れ動いた。確かに、バンパイア革命の真相も知りたいが、あの事件の後、どういう事件が、語られずにいるのか知りたい気もする。
あのロックの事だ。かなりの事件に関わっているに違いない。
わたしは、彼の、いや、彼女の機嫌を損なわないように注意しながら彼女に話を促した。
「うふ、わたしのその後が知りたいようね。いいわ、話してあげる。でも、そのかわり。あなたが、この話を他の人に話したらどうなるかは、わかっているわね。」
そう、「バンパイア」のなかで、手塚氏は、彼に殺されそうになった。つまり、わたしにもその危険が・・・
わたしは、命がある限り、ここに、彼とのインタビューを書き記しるすことにします。突然これが終わったら、わたしの、冥福を祈ってください。それでは、また
第二回へ