湯けむりビンビン物語

「やっと予約が取れたぞっ!」

「うっそ〜っ、ほんとに取れたの!」

「ああ、うまい具合にキャンセルがあったのさ。」

「やった〜っ!わたし、あそこの旅館泊まりたかったんだぁ」

「だろー。麻奈がどうしても泊まりたいって行ってたからね。和夫と伊代の部屋も とってやったぞ。」

「ほんとに〜。絶対喜ぶよ。あの二人も。」

「おお。おまえ、すぐに携帯で教えてやれよ。あさってだからな。急がないとあいつら予定入れてるかもしれないから。」

「うん、分かったよ一樹。すぐに連絡しとくね。」

「それじゃあ明後日の午前10時に新宿駅で待ち合わせしようか。」

「ええ、分かったわ。午前10時ね。あ〜、何か今からドキドキするね。」

「すごいうれしそうだな。」

「うん、だって・・・ほんとにうれしいんだもん。」

「そっか。良かったよ。苦労した甲斐があったってもんさ。」

「ありがとね。一樹。わたし、一樹の事とっても好きっ。」

「俺もさ、麻奈・・・」
 

麻奈は、19歳の大学生。そして彼女の彼氏は同い年の一樹。
二人は、バイトでお金を稼いで、年に5回は国内の色々なところに泊りがけで旅行に行っている。特に冬は、有名な温泉のある旅館に泊まって、ゆっくりとお湯に浸かりながらおいしい物を頂くというのが定番。
今回も、信州の有名な旅館を予約しようとしてたが、1年前から予約している人たちばかりで、今から予約なんて到底無理な話であきらめてた。でも、一樹が何度も旅館に電話したおかげで、キャンセルされた部屋を2つとる事が出来た。
せっかくだから、前から一緒に旅行に行こうって言っていた親友の和夫と伊代を誘って、4人で行く事に。
和夫と伊代も、同じ大学で、19歳。サークル仲間で気心の知れた二人。
二人は、きっと楽しい旅行になると思っているのだが、思わぬ事態が二人に起こってしまった。
 

2日後、午後10時30分。新宿駅前。

伊代:「ごめ〜ん。待った〜っ。」

麻奈:「ううん。わたし達も今来たとこだから。」

和夫:「ごめんな、一樹。途中まで伊代と車で来てたんだけど、渋滞しちゃってさ。30分も送れちまったよ。」

一樹:「1分遅刻につき500円徴収するからな。30分で15000円。 二人ともちゃんと払ってくれよ。」

和夫:「そ、そんな冷たいこというなよ。俺達が金ないの、分かってるだろ。」

伊代:「そうそう。貧乏学生からお金巻き上げたら罰当たるよ。」

一樹:「へっ、冗談だよ。実は俺達もほんとにさっきついたばかりだったんだよ。麻奈が携帯電話忘れたから途中で取りに帰ってたんだ。」

伊代:「そっか。それで全然つながらなかったんだ。何度も電話したんだけどずっと留守録になってたから。」

麻奈:「そうなの。後で見たら何回も伊代から伝言が入ってたから事情は分かってたわ。」

伊代:「そう。良かった。」

一樹:「おい、そろそろ電車が来る時間だぜ。早いとこ切符を買ってホームへ上がろうぜ。」

麻奈:「あ、ほんとだ。早く行こうよ。」

和夫:「よし、4人で旅行するのは初めてだからな。張り切っていこうぜ。」

伊代:「うんっ!早く行こっ。」

4人は切符を買い、早速電車に乗り込んだ。
そして約3時間、電車に揺られながら楽しいときをすごしたあと、バスに乗って更に1時間、山奥の綺麗な旅館にたどり着く。
4階建ての旅館は、木造と大理石を使っていて、とても豪華に見える。
旅館の前にある駐車場には、予約をしていた客の車が何十台も駐車していた。

4人はそれらの車を横目に見ながら、大きな玄関をくぐった。
玄関には、床や柱に大理石が使われていて、鏡のように光っている。

「ようこそいらっしゃいました。」

背広を着たチーフマネージャーらしき男性が、4人を出迎えてくれた。

一樹:「今日予約していた中田一樹ですけど。」

「はい、承っております。ささ、中にお入りください。」

男性はそう言うと、カウンターに置いてあるベルを

リンリンリン・・・

と鳴らした。すると、2人の着物を着た仲居さんが現れた。

「この二人がお部屋にご案内しますので、荷物をお預けください。」

4人は、仲居さんにカバンを渡しました。

「それでは中田様。お部屋にご案内します。」

一人の仲居さんは笑顔でそう言い、歩き出した。

一樹:「さあ、行こうぜ。」

麻奈:「うん。和夫も伊代も早く行こうよ。」

和夫:「ああ。」

4人は、仲居さんの後ろに並んでついてく。
エレベータで2階に上がり、少し進んだところにある部屋の前で立ち止まった。

「こちらの2つのお部屋になっております。」

仲居さんは、部屋の扉を開けて中に入った。

「こちらのお部屋にお二人様、隣のお部屋にお二人様お泊りになってください。お食事はお部屋で取られますか?それとも 1階の食堂で取られますか?」

一樹:「えーと、そうだなあ。やっぱり部屋がいいよな。」

麻奈:「うん。その方がいいよ。でも部屋が分かれてるんだったら別々に食べないといけないのかな。」

一樹:「ねえ、仲居さん。こっちの部屋に4人分の食事を用意してもらえないかな。」

「ええ、結構ですよ。お食事は4人分、こちらのお部屋に運びます。」

和夫:「よっしゃ、これで4人で食べれるよな。」

伊代:「そうね。せっかくだもん。4人で食べたいよね。」

「はい、かしこまりました。お食事は7時からにご用意しますので、それまでに温泉に入られてはいかがでしょうか。」

麻奈:「ねえ、一樹。そうしようよ。まだ2時間以上もあるし。少し休憩してからみんなで温泉に行こうよ。」

和夫:「そうだな。ここって混浴なの?」

「すいません。この旅館では男女別々になっております。」

和夫:「ちぇ、そっか。じゃあ仕方ないな。」

伊代:「もう、何考えてるのよ。私以外の若い女の子が見たいんでしょ。」

和夫:「あ、いや。そう言う意味じゃなくて・・・」

麻奈:「和夫はほんとにエッチなんだから。」

「それでは失礼します。ごゆっくり、おくつろぎ下さいませ。」

仲居さんは、部屋にカバンを置いた後、部屋を離れました。

一樹:「さて、それじゃあ少し休憩してから温泉に行こうか。」

和夫:「そうだな。ちょっと疲れたから30分くらいしてから行こう。」

伊代:「じゃ、わたし達はこっちの部屋にいるから30分したら 呼びに来てくれる?」

麻奈:「いいよ。じゃあ30分後ね。」

そう言って、和夫と伊代は、隣の部屋に入っていった。
一樹と麻奈も部屋に入り、荷物を整理したあと、テーブルを囲んで座椅子に座った。

麻奈:「広いよね。この部屋。10畳はあるよ。」

一樹:「そうだなあ。畳もまだ青くていい香りがするし、窓の外にみえる山には雪が積もって綺麗だ。」

麻奈:「ね〜っ。だからわたしが言ったでしょう。この旅館は一押しだって。」

一樹:「ああ、そうだな。あのさ、それよりちょっと変わった事してみないか?」

麻奈:「んっ、何?変わった事って。」

一樹:「おまえさ、男湯の中って興味あるか?」

麻奈:「ええっ、な、何よ、急にそんな事言い出してさ。」

一樹:「だからさ、俺以外の男の体に興味があるかって聞いてるんだよ。」

麻奈:「興味があるかって・・・どうしてそんな事聞くのよ。」

一樹:「実はさ、この前、本屋で立ち読みしてたんだけど、人格を入れ替える方法っていうのが あったんだ。なんか道具も使わなくて、すごく簡単に出来るみたいなんだよ。」

麻奈:「それって、もしかしてわたしと一樹が入れ替わるってこと?」

一樹:「そう言うこと。和夫と伊代には絶対内緒でさ。絶対面白いと思うぜ。」

麻奈:「そんなのウソに決まってるよ。それに、わたしは別に入れ替わって男湯覗きたいなんて思わないもん。一樹が女湯覗きたいんじゃないの?」

一樹:「その気持ちもある。でもさ、一度試してみたいんだよ。もし出来たらすごい事じゃないか。」

麻奈:「それはそうだけど・・・」

一樹:「な、女湯なんて男のままでもこそっと覗けばいいだけだしさ。失敗したらそれまでってことで。」

麻奈:「女湯なんか覗かないでよ。追い出されたらせっかくの旅行が台無しなんだから。」

一樹:「だろっ!やってみようぜ。」

麻奈:「・・・・もう、一樹ったら。まあいいわ。どっちみち失敗すると思うから。」

麻奈はそう思い、一樹の話を受け入れる事にした。

一樹:「それじゃあさ、こっちに来てくれ。」

麻奈:「うん。それでどうするの。」

一樹:「まず、俺の耳とおまえの耳をくっつけるんだ。」

麻奈は、一樹の横に並び、耳が重なるように顔を一樹の顔にぴったりとくっつけた。

一樹:「うん、これでいい。そしたら、もう片方の耳は手で塞ぐんだよ。」

麻奈:「こうかな?」

一樹:「俺の声がこもって聞こえるだろ。それにゴーッって血液が流れる音も聞こえるよな。」

麻奈:「うん、聞こえるよ。」

一樹:「よし、そしたら目を瞑って、血液の音に意識を集中するんだ。」

麻奈:「うん、分かった。」

一樹:「後は俺がいいって言うまでその音を聞いていてくれ。」

麻奈:「うん。」

麻奈は一樹の言うとおり、目を瞑って血液の流れる音に集中する。
始めは一樹の耳から伝わる暖かさを感じていたんだけど、だんだんその感覚が薄れ始めた。
体の感覚が無くなり、血液が流れる音だけが聞こえている。
どのくらいの時間が立ったかわからないが、誰かが麻奈を呼ぶ声がした。

「麻奈。おい、麻奈。目を開けてもいいぜ。」

「んん。もういいの?」

返事をした自分の声に、ハッとして目を開ける。
自分の口から出た声は、いつもの声ではない。
麻奈はふと、横にいる一樹を見て、言葉を失ってしまった。

「・・・わ・・・わたし?」

目の前にいるのは、一樹ではなく、麻奈の姿であった。

「どうやら成功したようだな。分かるか?俺は一樹だ。おまえも自分の姿を見てみろよ。」

麻奈の姿をした一樹にそう言われて、麻奈は目線を下に降ろした。
そこには、トレーナーにジーパン姿の、さっきまで見ていた一樹の体がある。

「う、うそ。ほんとにわたし達、入れ替わっちゃったの?」

自分の口からは一樹の声が出ている。

「ああ、本当さ。やっぱり出来るんだ。こんな不思議な事が。」

今までわたしが話していた声・・・
わたしの姿・・・

麻奈は一樹と入れ替わった事を認めざるをえなかった・・・



ここからは、
麻奈の体に入っている一樹を「麻奈」
一樹の体に入っている麻奈を「一樹」
と表現します。



麻奈:「簡単だっただろ。痛くも痒くもなかったし。」

一樹:「それはそうだけど、もとに戻れるの?」

麻奈:「ああ、同じことをもう一度すればいいだけさ。」

一樹:「うーん、なんか自分が目の前にいるのって変な感じね。」

麻奈:「そうだな。俺も目の前に自分がいるんだから不思議な感覚だよ。でも、せっかくのチャンスじゃないか。旅が終わるまでこのままでいようぜ。」

一樹:「なっ、そんなぁ。温泉に行く間だけじゃなかったの〜っ!」

麻奈:「いいじゃないか。温泉に入って夕食を食べて、夜だってさ・・・」

一樹:「ば、ばかなこと言わないでよ。すぐに伊代たちにバレるわよ。」

麻奈:「大丈夫だって。俺達、お互いの口調やしぐさ分かってるじゃないか。お互いのフリをしていれば分からないって。」

一樹:「・・・そんな事言ったって。」

麻奈:「まあ、心配するなって。それにもう和夫達を呼びに行く時間だろ。早く浴衣に着替えようぜ。」

一樹:「もう、一樹ったら。」

麻奈:「一樹って言うなよ。俺、今は麻奈なんだから。それから、言葉遣いも気をつけろよ。くれぐれも女言葉なんか話すんじゃないぞ。」

一樹:「わ、分かったわよ。」

麻奈:「それじゃあ、今からお互いのフリをして会話をしようか。 ねえ、一樹。わたし、浴衣に着替えるね。」

一樹は麻奈の口調を真似しながら、セーターを脱ぎ始めた。
その姿を見ると、本当に自分がもう一人いるような気がしてならない。

一樹:「そ、それじゃあ、お・俺もきがえようかな・・・」

麻奈:「ねえ、もう少しはきはきとしゃべれないの?おかしいよ、その話し方。わたしなんかこんなにすらすらと話せるのに。」

一樹はそう言いながらスカートを脱ぎ、下着姿になった。

麻奈:「どう一樹。わたしのか・ら・だ。いつも水泳してるからスタイルいいでしょ。」

一樹は麻奈の体で腰に手を当て、セクシーなポーズをとった。

一樹:「もうっ!わたしの体でそんな事しないでよっ。はずかしいじゃないの!」

麻奈:「ふふっ、そんなに怒らなくったっていいじゃない。一樹ったら女言葉になってるよ。男の体なのにおかし〜っ。」

一樹はニヤニヤしながらそう言うと、浴衣を羽織り、麻奈のカバンを勝手に開けて、新しい下着を取り出した。

麻奈:「わたしったら、こんなにセクシーな下着を持ってきたのかしら。いやらしいわぁ。」

旅行用に持ってきた黒いブラジャーとパンティを眺めながら、一樹は喜んでいる。

一樹:「いいかげんにしないと怒るわよ。」

麻奈:「まあまあ、そんなに怒らないでよ。早く浴衣に着替えてね。もう30分立ったわ。」

麻奈は仕方なく服を脱ぎ、浴衣に着替えた。
トランクスの中に、いつも付いていないものが付いている。
それを見て思わず赤面してしまった。

麻奈:「それは今、あなたの物だから好きに使っていいよ。何なら今夜、わたしがくわえてあげるから。」

一樹:「い、いいからさっさと和夫達を呼んで来なさいっ。」

麻奈:「はぁい。それじゃあ呼んで来るから、一樹らしい言葉使いを忘れないようにね。」

一樹:「わ、分かってるさ。」

麻奈:「そうそう、その調子よ。」

そう言うと、一樹は隣の部屋に消えた。麻奈はいつまで一樹のフリが出来るか不安でいっぱいだった。
しばらくして、一樹が扉からひょっこりと顔を出した。

麻奈:「それじゃ、行きましょうか。一樹!」

普段の麻奈なら絶対にしない、いやらしい笑顔でこっちを見た一樹が手招きしている。

一樹:「・・・ああ、行こうか。」

麻奈は一樹の口調を真似して、部屋を出た・・・

つづく