移身
ecvtさん&Tira
(第6話)
「いくら入ってるかな?」
繁華街に向かいながら、京極先生はデジタルビデオカメラを入れたハンドバックから財布を取り出すと、物珍しそうに色々と物色し始めた。
「結構入ってるじゃん、これなら沢山飲めるな、ごちそうさまです、京極先生」
すると京極先生はさらに詳しく財布を調べだした。
「お、免許証に……名詞は写真入り……お、カードもあるじゃないか。へぇ〜、これも写真入りか。あの先生らしいな。これで他人にこのカードを使われる事もないって事なんだろうけど、身体ごと乗っ取られちゃ顔写真で本人かどうかの確認なんて意味無いのにな……ま、先生には気の毒だけど、今は逆にこれら三つの証明証は俺が[京極 美咲]本人だっていうことを認めるためのものになってるんだよな。俺の好きに使わせてもらうぜ、ニシシ……」
財布をハンドバッグに収めた京極先生。
しばらく繁華街を歩いた後、一軒の居酒屋の前で立ち止まった。
「へへ。俺って今なら堂々と酒が飲めるんだよな。この京極先生の体を使って!」
ニヤリと笑った京極先生が、居酒屋の扉を開く。
ざわざわとした雰囲気。
夜といってもまだ早い時間だが、すでに結構な客が入っていた。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
青い半纏を着たバイトの女の子が近づいてくると、勇樹はコホンと咳をして喉の調子を整えた。
「ええ、一人なの」
「ではカウンター席でもよろしいでしょうか」
「いいわよ。私ならどの席だって」
「かしこまりました。それではご案内します」
勇樹が未成年で、しかも男だとは全く気づかないバイトの女の子。
いや、気づくほうがおかしいだろう。
京極先生のフリをしながら女の子についてゆき、数人が座っているカウンター席に腰を下ろした。
「お飲み物はどうされますか?」
「……そうね。それじゃあ生中をもらおうかしら」
「はい」
女の子は伝票に記入すると、カウンター内にあるサーバーでグラスにビールを注ぎ始めた。
なかなか上手に作っている。
そして、泡が収まった頃、勇樹の前にグラスを運んできた。
「生中です」
「ありがとう」
「注文はお決まりでしょうか?」
「そうね、何がオススメなのかしら?」
「本日は新鮮な魚が入っていますので、お造りなどはいかがでしょうか?」
「じゃあそれにするわ」
「はい。他には?」
「う〜ん……」
メニューに手を伸ばして、料理の写真を見ながら女の子に注文する。
「かしこまりました。しばらくお待ちくださいませ」
そう言うと、女の子が笑顔で去っていった。
「へへ。京極先生。先生の身体で堂々と酒を飲ませてもらうよ」
勇樹は嬉しそうにグラスに口をつけ、コクコクとビールを飲み始めた。
「ぷはぁ……。ビールってもっと苦かったように思うけど、京極先生の身体だからかなぁ。そんなに苦くない……というか、むしろ美味しいぞ」
一旦置いたグラスを再度持ち上げ、今度はグビグビと飲む。
喉を通ってゆく炭酸。
それが何ともいい気持ちだ。
「ぷはぁ〜!美味いや。ビール最高!」
普段の京極先生にはありえない言葉だ。
ちょうど女の子がお造りを持ってきたので、刺身しょうゆに少しのわさびを混ぜて食べてみる。
家で食べる刺身とはまた違った美味しさだ。
新鮮であることも一つだが、この居酒屋と言う雰囲気の中で食べていること。
そして、京極先生の舌、口を使って食べていることが要因なのかもしれない。
「ビールがすすむよな。姉ちゃん、ビールおかわりっ!」
空いたグラスを高く持ち上げ、バイトの女の子にアピールする。
「ただいま!」
それに気づいた女の子が新しいグラスにビールを注ぎ、美味しそうに刺身を食べる京極先生の元に持ってきた。
「他に注文した料理はまだ?」
「もうすぐ出来ますので」
「早く持ってきてね」
「あ、はい」
ふわっと身体が浮くような感じ。
軽く酔っている京極先生の身体が気持ちがいい。
「ヒック。まだまだ飲めるぞ。京極先生の身体は」
少し大きな声になっている。
でも、全然顔には出ていなかった。
その後、注文した料理が勇樹の前に並び、更にビールを注文する。
勇樹はしばらく京極先生の身体で料理を食べ、浴びるようにビールを飲んだ。
京極先生は全然お酒飲めないって話だったけど、結構いける。
あの性格だから「飲めない」じゃなくて「飲まない」ってことだったようだ。
身体が熱くなってきたので胸をはだけると、スケベそうな男が近寄ってきて勇樹、いや、京極先生を口説いてきた。
それをいい事に色々おごらせた。写真入りの名刺を渡し、自分が高校教師で「京極 美咲」だと自己紹介までした。
「あんた、いい女だな、学校の先生させておくのもったいないな。そうだ、俺の働いてるストリップ劇場で踊ってみないか?稼げるぜ……」
せっかくの手に入れたこの自分の美貌をもっとみんなに見せびらかしたい。
そう思った勇樹は、二つ返事で男について行った――
「私、こういうものです」
アルコールの入っている勇樹は、嬉しそうにハンドバッグから財布を取り出すと、男が連れてきたマネージャーに写真入り名刺を手渡した。
「ホントにいいのかい?こっちとしては願ってもない事だけど、学校の先生が……大丈夫かい?」
「いいの、どうせ恥ずかしいのは自分じゃな……いえ、前から一度やってみたかったんですわ。だから……記念にこのビデオで私のストリップを撮影してくださらない?」
と言ってビデオカメラをさっきの男に渡すと、ストリップをノリノリで行ったのだ。
「次は飛び入り参加!なんと現職の高校教師、萩原智恵さんです!」
名前だけは隠しているのだろう。
ストリップ劇場の司会をしている男が架空の名前で紹介した。
その後、スーツ姿の京極先生が現れる。
ヒューヒュー!
えらいベッピンさんじゃねぇか。
ほんとに高校教師なのかよ!
20人くらいはいるだろうか?
そんな声が客席から聞こえてきた。
サーチライトに照らされる身体。
勇樹は男達の熱い視線を感じながら、ゆっくりとスーツを脱いでいった。
へへっ……この京極先生の美貌を皆に拝ませてやるぜ……
白いブラウスにタイトスカート。
ステージの前、客席に近づくと、一番前に座っている男達が身体を乗り出し、タイトスカートの中を覗き込もうとする。
すると勇樹は、わざと足を開いてタイトスカートの中を見やすくしてやるのだった。
肌色のパンストに包まれた艶かしい足がタイトスカートの中に消えている。
その薄暗い中には、京極先生の大切な股間をしっかりと包み込むパンティが薄っすらと見えていた。
姉ちゃん、最高だぜ!
早くスカートを脱げっ!
荒々しい言葉が飛び交う。
それだけ早く京極先生の身体を拝みたいのだ。
勇樹はゆっくりと焦らす様に、腰についているホックを外すと、ファスナーを下ろしていった。
腰を振りながら、じわじわとタイトスカートを下ろしてゆく。
そして、太もも半分まで下ろしたところで、パサッと足元に落としてしまった。
おお!
男達の歓声が聞こえる。
白いブラウスの裾からみえ隠れする股間。
見てる見てる。みんな京極先生の身体を見てるぞ!
見られる事で興奮する。
生徒会長の斉藤美保子を思い出す。
彼女もこんな感じで興奮していたのかなぁと。
下半身の火照り。
股間を擦り、わざとらしく切ない声を出す勇樹。
そんな京極先生の仕草に、男達はゴクンと唾を飲み込んだ。
プッ。プッ。
白いブラウスのボタンが一つずつ外されてゆく。
そして、すべてのボタンを外し終えると、観客席に背を向けてハラリとブラウスを脱いだ。
すべすべした白い背中。
腰をくねらせ、その女性特有の曲線を強調する。
「んふ……」
フロントホックを外し、ブラジャーを足元に落とした勇樹。
胸を抱きしめるように隠しながら前を向き、男達に近づく。
腕をどけろ〜っ!
早く見せてくれ〜!
へいへい。すぐに見せてやるから。ほらっ!
京極先生の腕が、胸の前から遠ざかってゆく。
すると、プルンと震えた二つの胸が男達に披露された。
まだそれほど黒くなっていない乳首。
その乳首がツンと勃って上を向いている。
おおお!
すげぇよ!
男達がやんやと騒ぐ。
パンストとパンティだけを身に纏った京極先生が、腰に手を当てたり頭の後ろに両手を回して悩殺ポーズを見せ付けた。
食い入るように見ている男達。
中にはズボンの中に手を突っ込んで、ムスコをしごいている奴もいる。
そんな男達に優越感を感じた勇樹は、更にサービスをと、パンストとパンティのゴムに指をかけた。
そして、後ろを向きお尻を突き出しながらゆっくりと下ろしていったのだ。
プリンとしたお尻。
そして、お尻の下、足の付け根から見える微かなアソコ。
男達は襲い掛かりそうな雰囲気でそのお尻を眺めていた。
へへ。極めつけは……
パンストとパンティを脱ぎ捨てた京極先生が前を向き、ステージギリギリのところまで歩いてゆく。
そして、その場に蟹股でしゃがみこむと、男達によく見えるように両手の指で割れ目を左右に開いたのだ。
男達に披露された京極先生のアソコ。
興奮した京極先生の入り口から愛液がにじみ出てきている。
さ、触らしてくれよっ!
ちょっと指を入れてもいいか!
一番前にいた男がおねだりをする。
すると、勇樹はニコリと笑い、頷いた。
男の太い指が、左右に開かれた割れ目にさしかかり、更には入り口からヌルッと入り込む。
「あんっ!」
切ない喘ぎ声。
男の指が、何度か出たり入ったりする。
や、やりてぇよ!
やらしてくれよっ!
男達がこぞって前に出てきた。
しかしそこまで。
劇場のスタッフ達が男達を静める。
「また今度ね!」
勇樹は京極先生の声を使って男達に囁くと、軽くウィンクをしてステージを降りた。
「しっかりとカメラに収めてくれた?」
「もちろん!ねえねえ、教師なんて辞めてこの世界に入っておいでよ。あんたなら絶対に売れるから!」
ステージの隅で様子を伺っていたマネージャーが誘いの言葉を投げかけてくる。
しかし、勇樹はイエスとは言わなかった。
ステージに散らかした服や下着を受け取った勇樹は、それらを手早く着ると
「楽しかったわ。また機会があれば来るから」
と言って、デジタルビデオカメラをハンドバッグに収めると、マネージャーの熱い視線を感じながら去っていった――
移身(第6話)……おわり
第七話へ
あとがき
勇樹、京極先生にストリップまでさせてしまいました(^^;
本当にやりたい放題です。
他人に見られることで興奮する。
そして優越感を覚える。
やっぱり歌手や俳優さんなどはそういうのを意識しているのでしょうか?
それでは最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
ecvtさん&Tiraでした。