T S 病 院 物 語

 「お。おまえは・・・氷室玲二。」

 僕は、思わずそいつを指差した。そのさきには、黒のワンピースの上に白衣を羽織った巨乳の女医がいた。そいつは、僕に気づくと高らかに笑いだした。

 「ホホホホホ。お久しぶりね。戸田先生。」

 「おまえなぜここにいるのだ。アメリカに渡ったのではなかったのか。」

 「いやねえ。愛する戸田先生が日本にいるのに、なぜアメリカまで行かなければならないの。わたしはいやよ。愛する人のそばにいつも居たいわ。」

 「僕はおまえのそばなどには居たくない。あっちへいけ。」

 「まあ、愛していると言ってくださったのにつれないお方。」

 「止めろ、そんな言い方は。それに、おまえは男じゃないか。」

 「まあ、そんなことよりもまずは、ようこそ

第三話「おいでませ 泌尿器科へ」後編

                                 お待ちしていましたわ。」

 僕には奴との忌まわしい過去の思い出があった。あれは、2年前、僕がまだインターンだった頃の事だ。研修で、泌尿器科へ行ったとき、こいつは、僕の指導医師だった。まさかこいつにそんな趣味があるとは知らない僕は、こんな美人が指導医師になった事を素直に喜んだ。そのうち、いろいろと指導を受けているうちに二人の仲は接近していった。そして、クリスマス・イブの夜、シティー・ホテルのベッドのうえで二人は、結ばれるはずだった。明かりを消してと言う彼女の希望で、暗くした部屋から眺める夜景は美しかった。

 その夜景を眺めながら、僕は彼女の肩に手を回し、優しく抱き寄せ、その柔らかな唇に口づけをした。そして、彼女を強く抱きしめた。背が高い彼女は、僕と同じくらいの高さなので、彼女の胸のふくらみが僕の胸にあたり、彼女の乳首が僕の性欲のつぼを刺激した。そして、彼女の下のふくらみが、僕の息子を力強く押して、彼女の鼓動までも感じるほどだった。ん?下のふくらみ?え?

 僕は、反射的に彼女を引き離すと部屋の明かりをつけた。彼女は突然の事に驚き、身体に巻いたバスタオルを両手で胸のところでおさえて立ちすくんだ。僕は彼女に近づき、そのバスタオルを引っ剥がした。するとなんとその下から乳首まで本物そっくりに再現したリアルパットを胸にしっかりと固定し、息子をギンギンにいきり立たせた男の身体が現れた。

 「お、お、お前は、オトコ?」

 「そうよ。」

 「騙したな。このオカマヤロ〜〜。」

 「失礼ね。おかまじゃないわ。女装は趣味よ。でも安心して、バイセクシャルだからあなたの事も好きよ。」

 奴は、僕の腕を掴むとその細身の外見からは信じられないような力で、うつ伏せに押し倒した。

 「食べず嫌いはダメよ。でも、一度味わうと、病み付きになっちゃうかもね。」

 そう言いながら、奴は、僕の尻を両手で掴んだ。

 「やめろ〜〜。いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」

 その夜、イブの夜に轟いた悲壮な叫び声はやかましいほどのジングルベルの音楽にかき消され、その声は夜の闇に消えた。

 

 「お前はあれから、アメリカの医科大学に客員として呼ばれて行ったはずだろう。変態だが医師としては優秀だったからな。」

 「もう、ダ〜〜リンのいないアメリカなんて行く訳ないでしょう。蹴ったわ。そして、この病院に来たの。ダ〜リンをこの病院に呼んだのもわたしよ。ダ〜リンL・O・V・Eよ〜ん。」

 「僕を呼んだのは、猫野先輩だ。今はいないけど。」

 「猫野君。元気にしているわよねえ。」

 ドアが開き、一人のナースが入ってきた。奴は、ナースの方を見るとそう言った。そのナースはここに来る途中、精神科の前でトレイを落っことしていたドジなナースだった。彼女は、奴の言葉に耳まで真っ赤にしてうつむいた。

 「とにかく、変態の元では働きたくないから、院長に言って変えてもらう。いいですね、事務長。」

 そう言って診察室をでかかった僕の背中から、笑い声が襲い掛かってきた。

 「いや〜ははははは。戸田先生って素直ね。こんなことに引っかかるなんて。」

 振り向くと奴は、腹を抑えて笑っていた。

 「いやねえ。わたしは、玲二の姉の玲子よ。あなたが、わたしを弟と間違えるからイタズラしただけよ。あなたの事は、弟からよく聞かされていたわ。ごめんなさいね。あらまだ疑っているの。それでは、これでどう?」

 そう言うと彼女は、僕の右手を掴むとスカートのなかに突っ込み、パンティの中へと差し込んだ。あまりの事に僕は驚き、思わず触ってしまった。そこには、あれはなく、茂みに隠れた谷間があった。

 「あ、あん。ダメよそんなに触ったら。」

 彼女はくねくねと身体をよじらせ、そばに立つナースは軽蔑したような鋭い視線で僕を睨んだ。まだ僕の手を離さない彼女の手を何とか振り解くと、彼女から離れた。

 「もう、いいトコだったのに。つづきはア・ト・デね。それでは、お仕事お仕事。患者さんを中に入れて、戸田先生はわたしの後ろに立っていて、いいわね。」

 さっきと別人のような顔つきになると彼女はてきぱきと指示を出し動きはじめた。

 「それでは、戸田先生の事、お願いします。氷室先生。」

 事務長はそう言うと診察室を出て行った。彼女は、事務長に片手を上げて答えると、机の上のカルテを見入った。

 ドアが開き、入ってきたのは、二人の美少女だった。一人は青っぽい長い黒髪でブルーのブラウスを、もう一人は茶色っぽいショートカットでイエローのブラウスを着ていた。ブルーのブラウスを着たの少女の方が胸も大きく大人っぽくイエローのブラウスを着た少女の方が幼い感じがした。そして、ブルーの少女は、イエローの少女を患者用の丸椅子に座らせた。

 「え〜と、麻生まことくんだったわね。あなたはたしか?」

 「ハイ、姉のあきらです。まことったら、この身体になってからもなかなかトイレに行かないもので、それが心配で・・・。」

 とはいいながら、彼女は妹の右の胸を後から触っていた。まことちゃんは、感じながらも振り返り、後から胸を触る姉をにらんだ。

 「お、おにいちゃん。」

 「お姉さまでしょう。いまは。」

 玲子さんは、二人の会話など気にせずに、まことちゃんのお腹を触った。

 「まあ、膀胱がぱんぱんじゃないの。いつから行ってないの。」

 「あの〜、今朝から。」

 「あなたねえ、もうこの身体になって1週間たつのよ。いいかげんになれなさい。いわみちゃん、尿を吸い出す準備をして。あなた、尿毒症で死ぬわよ。」

 「こんな身体のままなら死にたいです。」

 「またぁ、リハビリも必要なようね。お姉さんはもうすっかり成れているようなのに。一週間ほど入院してもらいます。」

 ナースが準備をしている間に、玲子さんは、事務局に電話して、まことちゃんの入院準備を整えていた。

 「あきらちゃんは、まことちゃんの着替えを持ってきてね。それでは、まことちゃん。ベッドの上に横になって。」

 これから先の描写は控えさせていただく。若い女性の恥ずかしい姿を実況する趣味はないからだ。ただ、読者の諸君が想像をたくましくするのはかまわないがね。

 30分後、まことちゃんは、ナースに案内されて病室へと連れて行かれた。姉のあきらちゃんは、入院の準備に家へと帰っていった。

 「氷室先生。彼女は入院が必要だったのですか。僕にはそうは思えないけど。」

 「突然の変化に対応しきれないでいるのよ。あなたにも今にわかるわ。うちにはその手のスタッフは優秀なのがそろっているから一週間もリハビリしたらばっちりよ。」

 僕には彼女が言っている意味がよくわからなかったが、次の患者が入ってきたので、この会話は中断された。

 それから午前中は、さっきみたいな患者はなく、穏やかに過ぎていった。だが、午後一番に大変な患者がやって来た。

 それは、ダルマがらくだのシャツに毛糸の腹巻、ニッカポッカを穿いて、頭にタオルを巻いたようなおっさんだった。

 その、ブタマン(関東では肉まんというらしい)を踏み潰し、にんにく鼻に瓶底めがねをかけ、たらこ唇をくっ付けたような顔のおっさんだった。(ぽちさん。ひどい表現でゴメン)

 「え〜、社外岐路エ悶(しゃがいきろえもん)さんですね。どうしました。」

 「ワシもて〜えすというものがしたいです。先生よろしくお願いいたします。」

 「それは個人の自由ですからいいですが、後悔しませんか。」

 「はい。」

 「それでは、この書類にサインを。後で変な申し立てやこの病院に迷惑をかけないという誓約書です。よく読んで・・て、もうサインしたのですか。」

 「こちとら江戸っ子でぃ。さっさとやっておくんなさいな。」

 「そう、それじゃあいくわよ。下を脱いでベッドに横になって。いえ、パンツも脱ぐの。」

 おっさんは、下半身裸になるとベッドの上に仰向けになった。おっさんは、玲子さんの胸を見つめ、息子は元気よく立たっていた。

 玲子さんは、そのおっさんの息子を掴むと草を抜くように袋ごとすっぽんと引っこ抜いた。するとおっさんに変化が起こり出した。一本しか生えていなかった頭に毛が生え出し、胸が膨らんできた。だが、その体形はあまり変わらなかった。10分後、おっさんは、パーマをかけたおばさんに変わった。(うえ〜〜。)

 「おわったわよ。はい、鏡。」

 鏡を見たとたんおっさん(いや、今は、おばさんか)は気絶した。しばらくして、気がつくと、おっさんは玲子さんに食って掛かった。

 「かわいこちゃんになってねえじゃねえか。これじゃさぎでぇ。」

 「誰も、かわいこチャンになれるとはいってないわよ。それはあなたの思い込みよ。元を考えなさい。もとを。あれからどんな変化をしたらかわいこチャンになれるの。」

 「そりゃあそうだが、じゃあ元にもどせ。」

 「できないといったでしょう。それに、それでもかまわないって書類にあなたはサインしているわ。」

 「そんな〜〜、わしは、27でこんな化け八にならなきゃいけねえのかよ。」

 「27?」

 「そうでい。今年で、27でい。文句あるか。」

 「ないけど。そうね、ここを頼ってきたのにこのまま帰すのはかわいそうね。ちょっと待ってなさい。形成に頼んであげるから。もしもし、玲子だけど、羽扶先生いる。京子、玲子だけどクランケ一人お願いしたいの。そう、それはすんでいるの。うん、そういわないでお願い。今度のは棄権するからね。おねがい。え、本当、ありがとう。それでは、すぐに連れて行くわ。よろしくね。」

 電話を置くと、さっきまでおっさんのものだったものを片付けているナースを呼んだ。

 「いわみちゃん、この人を形成外科の羽扶先生のところへ連れて行って、先生には話してあるからお願いね。」

おばさんになったおっさんは、ナースに連れられてでていった。

 「いろいろと聞きたい事がありそうだけど後でね。今はまだ患者さんがまだ待っているから。」

 それから午後は、めまぐるしく過ぎていった。

 一日の診察が終わったときには、僕はくたくたになっていた。だが、玲子さんが朝のお詫びにといって、食事誘ってくれたので僕は、疲れた顔などせずに、病院の玄関に彼女の車が来るのを待っていた。

ふと見ると、誰もいなくなったバス停にセーラー服の女の子が立っていた。ショートカットのちょっとボーイッシュな女の子だった。そのとき、一陣の風を伴い玲子さんの車が彼女の前を通り過ぎた。走り去る車の起した風に彼女のスカートがめくれて赤いパンツが見えた。思わず僕は神に感謝した。

『風の神さんありがとう。』

玲子さんの車は僕の横に止まり、ドアが開いた。僕は、助手席に乗り、ドアを閉め、シートベルトを止めた。車は静かに走り出し、また、バス停の彼女の前を通った。

「社外さん。望みどおりになったようね。」

バス停に立つ少女を見つめながらそう呟く玲子さんの声は、車の風切る音にかき消され僕にはよく聞こえなかった。

玲子さんの車は、あるシティー・ホテルの前に止まった。車を止め、ドアを開けるとすんなりとした足をだし、降り立った。そして、ドアボーイにキーを預けると、僕について来るように合図した。僕は慌てて彼女の後を追った。

彼女はフロントでキーを貰うと、僕とエレベーターに乗り客室のある階を、ボーイに指示した。

「二人だけで食事をしたいの。だから、お部屋を借りたのよ。」

彼女に誘われるままについていくとそこはあの部屋だった。あの忌まわしいクリスマス・イブの夜に泊まった部屋だ。

「あなたと玲二の忌まわしい過去を忘れさせたくて、あえて同じ部屋にしたの。」

彼女との楽しい時間で、弟の罪を和らげようと言う彼女の気持ちを、僕はうける事にした。その部屋での食事も夜景もすばらしかったが、それにもまして彼女と過ごす時間は楽しかった。いろいろ聞きたい事はあったが、この時間を少しでも長く楽しみたくてそのことについては何も聞かなかった。聞きたい事は、明日にでもまた聞けるからだ。だが、この時間は今しかない。

しかし、シンデレラの時間は無情にも過ぎてしまった。そろそろ11時半を回ろうとした時、彼女は囁いた。

「この部屋は、一日借りているの。だから、ベッドで待っていて。」

僕は、彼女の言葉がすぐには理解できなかった。だが、彼女が席を立ち、バスルームに向かうのを見るとその言葉の真実性を確信した。そわそわとベッドルームに行くとそこには、ダブルベッドがあった。僕は、着ているものをすべて脱ぎベッドの中に入って彼女を待った。彼女は身体のバスタオルを巻いて、濡れた髪をタオルで拭きながら部屋に入ってきた。そして、バスタオルを取ると、僕の隣にそっと身体を忍ばせた。

「明かり消そうか。」

「いいえ、このままでいいわ。」

「それじゃあ、君の身体を見せてくれるかい。」

彼女は恥ずかしそうに小さく頷いた。

僕は、シーツをはがし、彼女の身体をあらわにした。

「綺麗だ。」

「やん。」

彼女は両手で顔を隠した。

玲二の時と違い、そのふくよかなバスト、引き締まった腰、丸みを帯びたヒップ、そして、禁断の花園。それはまさしく女性のものだった。僕はその美しさに理性を失った。僕たちは、明るい部屋の中で愛し合った。

何度か愛し合った後、僕は彼女の耳元でそっと囁いた。

「綺麗だよ。玲子。好きだ。誰よりも好きだよ。始めてあったのにこんな気持ちになるなんて。これは僕の偽りない、君への気持ちだよ。」

「うれしいわ。わたしも好きよ。昔からずっと。そして、今度はわたしが、あなたを愛してあげるわ。」

そう言うと、彼女は僕の身体の上に跨った。さっきまで愛し合っていたためか、僕の身体には力が入らず、身動きできなかった。

「そう、2年前のように愛してあげる。恵一。」

「え、でも君は・・・」

「うふ、忘れたの。2年前に言ったはずよ。わたしは一人っ子だって。それにわたしの今の身体は生物学的にも女なのは本当よ。でも、オトコでもあるの。」

そう言うと、玲子は花園のなかから何かを取り出した。どろっとした液体とともにでてきたのは、男性自身だった。

「わたしの身体はリバーシブルなの。でも、女の姿が好きだからこの格好をしているけど、こんな姿にもなれるのよ。どうだいイカスだろう。」

彼女の身体から丸みが消え、その細い腕は筋肉質のたくましい腕に変わり、バストもしぼみ、暑い胸板になった。そればかりではなく、彼女の声も途中から野太いものに変わった。そして、顔以外は、マッチョな男の身体に変わってしまった。

「さあ、恵一。二人の2年間の深い時間の溝を取り戻そう。」

そう言うと、玲子いや、玲二は女のような綺麗な顔の愛らしい唇で、僕の唇を塞いだ。

僕は、声にならない叫び声をあげたが、眠らない街の騒音はその声を掻き消してしまった。

 

合掌

 

 

四話

 

あとがき

 ふう、やっと第三話書き上げました。恵一君にはもうひと踏ん張りしてもらって、次回で、「TS病院物語」第一部は終了です。第二部はあなた次第。見たい科や、知りたい病気など(病院の中の事や、個人情報でもいいですよ)ありましたら、掲示板のほうへどうぞ。わたしの知る限りの事はお教えしますので、よろしくお願いします。

それでは、第四話でまたお会いしましょう。サイチェイ。